ナンバーガールのころから数えれば向井秀徳のファンやってきて25年。とにかく感慨深いと言うしかない。なにしろZAZEN BOYSが武道館でライブだなんて想像すらしていなかったからだ。
もちろん、邦楽のロックをしっかり追っている人で、ZAZEN BOYSや向井秀徳を知らないという人間を探すほうが難しいだろう。ただ、それはあくまでもある程度の音楽マニア限定の話で、と言ったらいいのかよくわからんが、とにかく日本中の誰もが1度は耳にしたことがあるような所謂「ヒット曲」があるようなバンドではないし、実際、Xにポストしていた方によれば、この日の開演前、マ・ドンソク、もといブ・ドーカンへ向かう行列とライブのポスターを横目に「えっ、坊さんの集会にこんなに人集まってるの? すげーなあ」とかなんとか呟いている人がいたらしい。
なにはともあれ、チャン・ドンゴン、ではなくブ・ドーカンでZAZEN BOYSなんて、今後またあるのかないのかわからない。滅多にあることじゃないのは間違いない。これはなにがなんでも観ないわけにはいかない。
しかし、そうは言っても埋まるのだろうか。と、心配してたらふつうに埋まった。立ち見席も含め完売したとのこと。いやあ、めでたい。
開演。ZAZEN BOYS登場。すると向井が立ち上がった観客に「まあまあ、座りなはれ」みたく手でジェスチャーをする。なんだなんだ、この状況で座れってのか。ちょっとそれは酷じゃないか。まあ、今夜は長いだろうからな。どうせそのうち嫌でも立ち上がらざるを得ない状況になるだろう。
オープニングナンバーは「You make me feel so bad」。いかにも幕開けっぽい「Fender Telecaster」か新作『らんど』の収録曲あたりでくるのではと睨んでいたのでいきなりムーディーなこの曲とは意外だ。「まあまあ、まずはとりあえず落ち着きなはれ」ということなのだろうか。
と思ったら、その後は「SUGAR MAN」「MABOROSHI IN MY BLOOD」「IKASAMA LOVE」といった調子でアゲアゲな曲を立て続けに披露。俄然盛り上がる。周りに立ち上がっている人がおらずひとりだけ立つのもアレなので座った状態で身体を揺らして盛り上がる。
「ポテトサラダ」。カメラで撮影されている生の映像がステージ後方のヴィジョンに映し出される。指揮者のようにアクションする向井と、それにばっちりタイミングを合わせた演奏を繰り出すカシオマン、MIYA、柔道二段。さらにナンバーガールのラストライブでも「大活躍させられていた」ゴム人形(通称:ビロリンマン)を向井がおもむろに取り出すと、もげそうなくらいの勢いで首や手やらを伸び縮みさせる。ちなみに特別な演出らしい演出はこの場面だけだった。笑った。
ひさしぶりに聴けた「Sabaku」で第一部終了。10分ほどの休憩後、第二部がスタート。
いやあしかし、おひさしぶりの曲もいいけど、『らんど』の曲がめちゃくちゃいいわ。最高傑作だとあらためて確信した。つーかやっぱり歌うまくなったなあ向井。
「HENTAI TERMINATED」「HARD LIQUOR」「6本の狂ったハガネの振動」。ここいらへんの曲は相当ひさかたぶりのお披露目だったんじゃなかろうか。
「半透明少女関係」、さらに続く「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」でこの日いちばんと言っていいくらいに館内が沸く。ただ、立ち上がってる客はアリーナ後方にぽつぽついる程度だろうか。べつにいま立っても向井が怒り出すなんてことはないだろうが、ほとんどの人間が相変わらず座って観ている。いかんせん我々日本人は指示や同調圧力に弱い。ああ立ちたい。立って思う存分に身体揺らしたい。というか尻が痛い。
「胸焼けうどんの作り方」演奏後、一旦締め。そしてアンコールで「KIMOCHI」。向井をはじめ他のメンバーが煽り、我々も「K・I・M・O・C・H・I〜」のコールアンドレスポンスで答える。いやあ、壮観な光景だ。
「今日はお集まりいただいたみなさん、本当にありがとうございました」
と向井が言って、ステージからメンバーがはけて行く。このときばかりは立ち上がって拍手した。もういいだろ、たぶんこれで終わりなんだから。
で、終わった。3時間越えのまさに集大成と言えるライブだった。と同時にこれからもワクワクさせてくれるに違いないと確信させられたライブだった。
しかし、ZAZEN BOYSのライブはやっぱ座って観るもんじゃねえな。次は来月か再来月か、それとも来年の頭あたりに観に行くか。もちろん、オールスタンディングのライブハウスでな。