映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』ーずるい終わり方だがおもしろかったから許すー

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』を観てきた。音を立てると全力でぶっ殺しにやってくるモンスターによって地球がほぼ壊滅状態の中、生き残った一組の家族の様子を描いた『クワイエット・プレイス』、その続編にあたる作品である。

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前作では末っ子と親父がぶっ殺されてしまったわけだが、代わりに親父の忘れ形見となってしまった赤ん坊がこの世に生を受けた。さらに聴覚障碍者の長女が所有していた補聴器が発するハウリング音がモンスターの弱点だともわかった。はたして生き残った母と長女とその弟、さらに赤ん坊の4者はどうなってしまうのか?……というお話である。

で、とにかくこのモンスター、毎日バイトだかなんかしててお忙しい日々を過ごしているのか、あるいは出来うるかぎり寝ていたいだけの単なる怠け者なのか、知らないが、とにかく毎日ひどく眠くてしかたがないご様子。なので、ちょっとした物音に対しても敏感で「うるせーぞ! 寝れねーじゃねーかコノヤロー!」とばかりに襲いかかってくる。ようするに、文字どおりの騒音モンスタークレーマーなのである、というのは前作の感想で書いた。

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もちろん、前作同様、突っ込みどころは多々ある。

たとえば、テキトーな場所に爆弾とナパーム・デスかなんかのCDをセットしたオーディオ機器を置いてわざと音楽かけてモンスターをおびき寄せたところでスイッチ押してボン、みたいなゴキブリホイホイ的な作戦で退治すれば良いのでは、とか、あるいは退治するのが困難ならノイズキャンセリング機能付きのヘッドフォンかイヤフォンなりをまあどういう方法がいいのか知らんがとにかくうまいこと装着させればモンスターもいちいちぶっ殺しにやってこなくなるだろうし、人間も足音や会話や屁だってぶっこき放題でwin-winなのでは、とか、いろいろと思うところはあるっちゃあったが、にしても今作は楽しかった。

思えば前作は公開からだいぶ経ったあとにアマプラで観たが、今作は映画館での鑑賞だった。

たぶん、これが良かったのだと思う。

なにしろ、音を立てられないという極限状態の緊迫感がハンパない。とくに聴覚障碍をもっている長女の立場とシンクロするように、劇中無音になる瞬間が幾度か発生するのだが、この場面においては場内にピンと張り詰めたような空気が流れた。じっさい、ポップコーンぽりぽり食いながら観てた数名の客どももこの時ばかりは手を止めていた。なんだろう、この場面で音を立てた奴は負け、みたいな、鑑賞者ひとりひとりにも疑似体験的な無音状態を強いられるというか、とにかくだらだらしながら観ることができる家よりか劇場で観たほうがより楽しめる作品であることは間違いない。

で、親父の友達が登場してアレしたりだとか、さらに生き残りの人間がそこそこいることがわかりアレしたりだとか、リアル騒音モンスタークレーマー君がじつはアレだったりだとか、「おお、こりゃ俄然楽しくなってきたぞ」となるのだが……。

ずるいと思った。

まあ、まんまとしてやられた。

ええ、観ますとも。次も観るよそりゃ。もちろん、映画館でな。

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