映画『ライド・オン』-俺はジャッキー映画を観ると童心に帰ってしまう-

ジャッキー・チェン主演の『ライド・オン』を観た。

 

まあ、泣けた。

いや、私にとって映画はあくまでも「劇」であり「作り物」、みたいな、一歩引いた姿勢で観てしまう癖があるので、映画観て泣いたなんて経験は少なくとも物心ついてからは記憶にないし、実際本作鑑賞中も泣いてはいない。涙を流してない。ただ、かなりのウルウル状態にはなった。

当日おなじ劇場に芸能スカウトの人間が近くの席に座っていたら「君は見どころがある。私が磨けばいい泣き芸が出来るようになるだろう。どうかね。徳光和夫の後釜を狙ってみないか」と誘われただろう。

まあ徳光はどうでもよろしい。

なにしろジャッキーといや、私が映画を見始めたガキのころまさにアクションスターとして全盛期を迎えていたわけで、そして私はプロレスも好きなガキだったので、ジャンボ鶴田とか天龍とか武藤に近しい存在というか、やっぱり強い人に憧れちゃうよねー男の子だもの、みたいな人だったのである。

そんな強くて憧れの存在だったジャッキーが本作では年老いた姿を惜しげもなく晒している。

髪の毛はすっかり薄くなってる。ボロボロ泣いてばかりいる。アクションなんて全盛期と比べるべくもないほどトロい。

さらにこの作品のために限定復活したという石丸博也の吹き替えがまた泣かせる。昨年引退を発表した石丸氏は現在83歳。御年齢を考えれば当たり前といえば当たり前だが、「おじいちゃんになったジャッキーの声」だった。

もちろんジャッキーだっておじいちゃんだ。70歳。いつまでも激しいアクションは出来ない、という当たり前もまたエンドロール中に流れるお馴染みのNGシーンと合わせてこれでもかと曝け出している。

『プロジェクトA』や『ポリス・ストーリー』など数多の名作の名アクションをメタ的に組み込み実際のジャッキーの俳優人生をオーバーラップさせるような仕掛けになっていたり、疎遠状態だった娘との親子関係の修復やら、しかも超絶健気で超可愛らしいお馬さんまで出てくるわ、バリバリお涙頂戴のお話であり、ずるいといえばずるい。

私がジャッキーになんの思い入れもない人間なら

「ケッ。ベッタベタなもんつくりやがって」

とかなんとか、あまりの感動の押し売りに敗戦濃厚の巨人戦を見つめる徳光和夫のように終始ぐったりとしながらスクリーンを眺めていただろう。

でもな、ジャッキーだからな。なんかこういうベタなところもまたジャッキーの魅力なんだよな、とフツーに感動してしまった。これが本当に本当の最後のアクション作になるっぽいな、という感慨にも耽ってしまった。石丸さんも今回で本当に最後か。あーあ。

ああ、でもまたやりたくなったらいつでもアクションやってくれてかまわないんですよ。なんなら、サモ・ハン・キンポーとユン・ピョウとまた一緒にやってみたらいいんじゃないでしょうか。いずれにせよ、次回作も楽しみに待ってます。

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