2024年3月の消化物(映画)

3月にもぐもぐした新作映画の感想文です。

 

『ARGYLLE/アーガイル』

角刈りのスパイのおっさんを主人公にした小説がバカウケしてる人気女流作家の前につまみ枝豆似のマジモンのスパイが突然現れてあーだこーだするお話です。角刈りの出番が思ってたよりも少なめでちょっとガッカリしましたが、クドくない程度に洒落てて、ビックリ展開があって、その上アクションもがんばってるわのオモシロスパイ活劇でした。本作の監督さんが劇中での使用許可をポール・マッカートニーに直談判したというエピソードも頷けるほどビートルズの「Now And Then」もじつにいい塩梅に活用していて、個人的にとくに好きじゃなかった同楽曲の印象も様変わりしました。あと猫がカワイイ。これはかなり好きなやつでした。

 

『ゴールド・ボーイ』

海岸に遊びに来ていた男女3人のキッズが撮影していた動画にイケメンがジジイとババアを崖から突き落としてぶっ殺している様子がたまたま映り込んでて、そんでイケメンが金持ちであることを知ったキッズが動画を餌に「警察には黙っててやるからそのかわり金をよこせ」と要求するが……みたいなことになってくお話です。なにしろ先読み不能な展開でハラハラドキドキしっぱなし。おまけにぶっ殺しも超気合い入ってる。そんでオチでまた痺れた。個人的には近年観た邦画のなかでも断トツの1等賞でした。おもしれー。

 

『12日の殺人』

女子大生が焼殺された未解決事件を追う刑事たちに焦点を当てた実録モノです。こういう作品を否定する気持ちはさらさらありませんが、こう言っちゃアレですがとくにビックリするような展開もなく「ああ、そうですか」で終わっちゃいました。同じ未解決事件をテーマにした作品でもすこぶるハラハラドキドキされてくれた『ゾディアック』や『殺人の追憶』ってやっぱりすごかったんだなー、とあらためて思い知らされました。

 

『ビニールハウス』

目が不自由なジジイと認知症のババアを介護する仕事をしながら近々ムショから出所してくる予定の息子との生活を楽しみに生活しているおばさんだったが、ある日うっかり認知症のババアをぶっ殺してしまい……みたいなお話です。私は根性が腐り切っている人間なので不幸なお話は大好きなのですが、この映画に関しては不幸があまりにも都合良く重なりすぎな感がありなんだか出来の悪いコントのように思えてしまいました。それこそコントとして楽しめるような突き抜けた部分があれば良かったのですがそれもなし。「半地下はまだマシ」だったかもしれませんが、個人的には半地下のアレのほうが全然おもしろかったです。

 

『変な家』

映画なんてファンタジーなんだから、しょせん絵空事なんだから楽しませてくれりゃ正義をモットーにしている私ですが、これはあまりにも話が破綻しすぎだったかなあ。一風、いや五風くらい変わったトンデモホラーミステリーというか、嫌いではありませんでしたが。ただ佐藤二郎がとてもいいキャラしてました。彼が演じるキャラクターがもっとフィーチャーされているような内容だったら次作も観てみたいという気持ちがないではないです。べつにつくらなくてもいいやという気持ちもあるっちゃあったりします。

 

『流転の地球-太陽系脱出計画-』

「太陽が膨張してヤベー感じになるから地球にミサイル取り付けて宇宙の彼方に吹っ飛ばそうぜ!」というぶっ飛んだ設定には笑わせてもらいましたが、全体的にはこういう地球ヤベー系映画にありがちな家族愛に終始した既視感アリアリのお話でまったく燃えませんでした。中途半端なコメディ感もマイナス。周りにたくさんいらした中国人らしきお客さんらがチャイニーズジョークみたいなのかましてる場面で大爆笑しておりましたが、日本人の私にはあいにくなにがおもしろいんだかよくわかりませんでした。

 

『ペナルティループ』

恋人をぶっ殺されたあんちゃんが犯人のおっさんをぶっ殺して戻ってまたぶっ殺してまた戻ってを繰り返すループものです。ぶっ殺された記憶がどんどん蓄積されていくという設定が新機軸感があって見応えがありましたし、あんちゃんとおっさんが謎に仲良くなっていくという展開もわりとリアリティがあって良かったです。ただ、説明過多を避けたつもりなのか、よくわからないまま終わってしまいモヤモヤが残ってしまったのが個人的にはマイナスでした。

 

『デストラップ/狼狩り』

森で狼狩りして暮らしている3人一家だったが、ある日、父が惨たらしい姿でぶっ殺されてる登山者たちを発見して……みたいなお話です。とにかくオチが良い。超気合い入ってました。前フリも効いてるし、ロケーションを生かした静謐な恐怖演出も良し。思ってたよりも狼してるようでしてなかったですが、というか狼してるってなんだって話ですが、とにかくわりと良質なB級ホラーサスペンスでした。

 

『オッペンハイマー』

べつに日本で公開延期するような問題作ではなかったです。原爆投下を賞揚するようなお話ではなかったですし、派手なシーンもあんまりない、どちらと言うと地味な会話劇でした。それでいて、しっかり見応えもあります。ただオッペンハイマーが不倫してどうのとか誰が知りたいのでしょうか。つーか、どうでもいいわ、やっぱなげーよ、と思ってしまいました。

 

以上。疲れた。おしまい。