誰かがニューアルバムをリリースして
「ま、なかなかという感じかな」
ってなって、で、その「なかなかのアルバム」のリリースツアーが開催されて、ライブを観に行ったら思いのほか素晴らしくて、「なかなかのアルバム」をあらためて聴き直してみたら、
「いや、これはとても良い……というか傑作じゃないか!」
みたく手のひらを返すことが私には往々にしてある。私が鈍感なアホだからである。
先日の2月15日、EXシアター六本木にライブを観に行ったときも同様のことが起きた。その日、件の会場で開催されたのは、新作『Natural Magick」のリリースツアーのためにやってきたクーラ・シェイカーのライブだった。
まあ、良かった。なにしろ新作からの楽曲が全盛期の、具体的に言えば1stアルバムの『K』や2ndの『Plesants, Pigs & Astronauts』に収録されている数々の名曲と比べても全然負けてねえ。そのことに万感の思いのようなものが込み上げてきたというか、とにかくめちゃくちゃ感動した。
なんといってもどの曲もポップで瑞々しいエネルギーが満ち溢れている。さらにクーラ・シェイカーといえば、あの腰にグッとくるグルーヴィなバンドアンサンブルだ。これも完全に復活しているじゃないか。
この日、新曲を生で聴いた客の反応もすこぶる良く、大いに盛り上がっていた。私自身、「まあ、「Hey Dude」や「Shower Your Love」に比べたら…」みたいになるかと思ったら全然そんなふうにはならなくて、なんならもっと新作からの曲が聴きてえよってなってしまったぐらいだ。というか、リズムセクションの緻密度や楽曲のバラエティという意味では『K』よりも上ではという気がするし、なんなら最高傑作と言っても言い過ぎではないのかもしれない。
最高傑作の1stのリリースからおよそ30年後にそれを更新するアルバムをつくりあげたバンドなんて例がないんじゃないか。
まあ、私は古今東西の音楽家の物語をすべて把握しているわけではないのでよくわかりませんが、なんにせよ、再結成したもののその後はパッとしない作品ばかりで、もはやファンからも「そういやいたよねー」みたいな感じにどん底まで落ちていた姿を見てきた者として、これはもう、感無量と言うしかない仕上がりのアルバムになっている。
というわけで、完全復活を祝して「クーラ・シェイカー『Natural Magick』収録曲、ベスト5」を発表したい。収録楽曲は以下のとおりである。
- Gaslighting
- Waves
- Natural Magick
- Indian Record Player
- CHUYA LIYA - You Stole My Heart
- Something Dangerous
- Stay With Me Tonight
- Happy Birthday
- Idon'twannapaymytaxes
- F-Bombs
- Whistle and I Will Come
- Karifornia Blues
- Give Me Tomorrow
この13曲のなかからベスト5にランクインする曲ははたしてどれか。
それでは早速行ってみよう。
5位「Indian Record Player」
今作でバンドに復帰したジェイ・ダーリントンのオルガンがなにしろ良い。カッチョいいリフ満載のエレキギター、タイトに突き進むリズム隊との絡みが絶妙。クーラ・シェイカーならではのうねるようなバンドアンサンブルが光るロックチューンだ。
4位「CHUYA LIYA - You Stole My Heart」
こちらは古いインド映画に使われていた曲のカバーらしく、つまり、インド音楽とロックの融合というクーラ・シェイカーの真骨頂が遺憾なく発揮されたナンバーになっている。クリスピアンとインド人女性によるツインヴォーカルがなんだかムーディな味わいがあるし、途中マカロニウエスタン風の展開になるのもおもしろい。「Hush」に引けを取らない名カバーである。
3位「Waves」
こちらはイントロのシタールとギターリフを聴いた瞬間、「来た来たー!」と一気に持っていかれること必至のナンバーだ。キャッチーなメロディもいいし、縦横無尽に躍動するリズムセクションも、クリスピアンの気合い満々なヴォーカルも、なにもかもがカッチョよくて嬉しくなってしまう。アルバムからの先行配信1発目に選ばれたのも納得の出来。
2位「Natural Magick」
横ノリのグルーヴィなバンドアンサンブルが最高に気持ちよすぎる。もちろん、聴き馴染みの良いポップ性も抜群だ。そしてワウギター! いやあ、いいねえ。クーラ・シェイカーといえばやっぱりこういう曲だよなあ。
1位「Give Me Tomorrow」
そして1位はアルバムのラストを飾るこちらの曲、「Give Me Tomorrow」だ。バンドの完全復活を高らかに宣言するような祝祭感溢れるバンドサウンドがもうとにかく良い。素晴らしい。グっとくる。泣ける。文句なしの一等賞だ!
以上。疲れた。おしまい。