中村佳穂『NIA』ー若干苦手なノリがあるが傑作と言ってよろしいのではないかとー

中村佳穂の前作『AINOU』は音楽マニアはもとより評論家界隈からも絶賛されたアルバムである。私自身もけっこう好きなアルバムでもある。

一度だけだがライブも観に行ったことがある。そのときの詳しい感想は下のクソ記事に書いてあるので便所でクソするついでにでもまあ読んでほしい。

gu-tara-tonchi.hatenablog.com

 

で、だ。2年ちょい前くらいにいまは亡き新木場スタジオコーストで行われたライブを観に行ったわけだが途中で私は帰ってしまった。

べつにその後なにがしかの用事があったわけではない。急にプーさんとハチミツ探しの冒険に行きたくなりディズニーランドへ向かった、とか、そういうわけでもない。ただ「なんか……もういいや……」と思って帰ってしまった。

理由は自分でもなんかよくわからん。

「まあ、あの日は肩と腰がやたらと痛くて体調悪かったからかな……」

などとぼんやり思った。

あと、

「ちょっと冗長だったかな」

などともなんとなく思った。

しかし本作『NIA』を再生しオープニングトラックの「KAPO」を一聴した途端、その理由がはっきりわかった。

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うまく説明できる自信がないので歌詞の一部を引用する。私は本来あまり歌詞を気にしない人間なのだが一聴して耳が「釘付け」になってしまった。こんな感じだ。

「Hi My name is Kaho!(中略)Thank you my my friends 褒めてくれてどうもありがとう うっふっふっふっふ~♪」(※「うっふっふっふっふ~」の部分は歌詞に表記されてないが、こういうふうに「歌っている」)

まあ、終始こんなような調子の曲であり、なんというかドリカムのヴォーカルを彷彿とさせるような「ノリノリな感じ」というか「汲めども尽きぬイケイケドンドン感」というか、つーかなにかの間違いでこのクソ記事を読んでしまったドリカムや中村佳穂のファンの方々から非難もしくは誹謗中傷に類するコメントが寄せられてしまいそうだが、とにかくそんなような雰囲気をいまにして思えばあの日のライブ中にも私は感じていたように思う。そして私はこういうノリがすこぶる苦手だったりする。

だから途中で帰ってしまったのだ。

と思う。

たぶん。

とはいえ、このニューアルバム『NIA』は良い。『AINOU』と同じくらい、いやそれ以上に好きかもしれない。

『AINOU』と同様、今風のトレンドを取り入れながらも随所に尖った部分も感じられるのがまず良い。

さらに見逃せないのがヴォーカルの表現力がさらに向上しているところだ。

もともと歌がたいへんお上手な人だが、曲によってはかなり大胆な感じというか、ラップっぽかったりポエトリーリーディングっぽかったりするがよく聴くとそれらとはどこか違うフリーキーなフォームによる変幻自在な歌い方をしている。これがとてもおもしろい。個人的にはちょっとUAっぽいなーと思ったりなんかもした。

リズム面の構築具合も創意工夫に溢れていてこれも単純におもしろいし、生楽器や電子楽器、いろいろな音が聴こえてくるが、音の配置具合が絶妙で終始風通しの良いドライブ感があり痛快な気分になる。それでいて全体的にキャッチーかつポップな魅力に溢れている作品でもある。もちろん、中村佳穂の十八番と言っていいだろう、⑩「Hank」のようなバラードナンバーも相変わらず美しくて絶品だ。

傑作と言っていいと思う。一曲目のノリはやっぱり苦手ですが。ライブは……うーん、どうだろうな。タイミングが合えばまた観に行ってみようかしら。

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