プロレスラーと俳優は「演じる」という意味では同じジャンルに属する職種である。フツーに考えれば親和性が高そうでもある。だが実際は似て非なるものと言ってよろしい。
大仁田厚、ダンプ松本、初代タイガーマスクこと佐山サトル……かつて私は上記3者の主演作品を観たことがあるが、もちろん全員役者としては成功を収めることは出来なかった。
答えは単純明快だ。
「絶望的に演技がヘタクソ」
だったからである。
3者の演技を簡潔に寸評するとこうだ。
・大仁田→「オイ真鍋ぇ……オレはなあ、オレはなあ……一生懸命やってるんじゃ!」みたいな自分に酔ってる感がプンプン臭ってくる演技がどうにも暑苦しい&鼻につく。
・ダンプ→とにかく棒読みっぷりが酷い。単刀直入に言うと「大根」。
・佐山→終始モゴモゴフガフガとした口調で、なに喋ってんだかほぼ解読不能。挙げ句の果てには、登場人物のひとりが非業の死を遂げ無言で悲しみに暮れる佐山、みたいな場面があるのだが、どう見てもその表情は「うんこを我慢している」ようにしか見えなかった。
ちなみに大仁田と佐山の主演作に関しては随分前に詳細な感想文を書いたので一応下部にリンクを貼っておく。まあ、うんこを我慢するついでにでもぜひ一読していただきたい。
プロレスの本場アメリカでも俳優業への進出を目論んだレスラーがいる。ハルク・ホーガンである。
ホーガンのフィルモグラフィ上でよく知られた作品となると、やはり『ロッキー3』であろう。『ロッキー3』でホーガンが演じているのは本職のプロレスラーだ。スタローン扮する主人公ロッキー・バルボアと異種格闘技戦を行うチョイ役で出演している。
ウィキってみたら「俳優ホーガン」をお目にかかれる映画は他にも9作品存在するようだが、あいにく私は『ロッキー3』以外観たことがない。主演作も何作かあるみたいだが、99年に公開された『ゴンゾ宇宙に帰る』とかいうマペットムービーに出演して以降は映画には出ていないみたいである。やはり演技がまずかったのか、あるいはどの作品でも最終的にはアックスボンバーで悪い奴らをぶっ飛ばすという強引すぎる設定がまずかったのか、理由は知らないが、いずれにしても俳優としては芽が出なかったと結論づけてよろしかろう。
そんな中、ほぼひとり勝ち状態のプロレスラーがいる。
リングネーム「ザ・ロック」ことドウェイン・ジョンソンだ。
いま現在、プロレスラーとしてはほぼ隠居状態みたいだが、かつては米マット界のスーパースターとして栄華をきわめた筋肉モリモリのマッチョマンである。そんなロック様が今や俳優としても売れに売れまくっているのだからすごい。
先日、ロック様主演の映画『スカイスクレイパー』を観た。
ストーリーは単純明快だ。
武装グループの襲撃を受け火災が発生した香港の超高層ハイテクビルを舞台に、人質にとられた家族を救出するためにたった一人で立ち向かうおっさん(ロック様)の戦いを描いている。
やたらと金かけてつくられた感アリアリな、まあ、よくあるエンタメアクション大作である。
10年前のある事件で大怪我を負ったロック様が義足となりハンデを背負って生きている。さらに娘が双子である。という設定が一風変わっていると言えなくもない。ただ、もっと変わっていると言えそうなのが、これらの設定がストーリーにほぼほぼ反映されてないことである。
障がい者としてとくに苦悩したり葛藤なりを描くわけでもなく、かといって義足を上手く利用して悪党どもを成敗するわけでもない。双子に関しても協力プレイでドラマを盛り上げるとかなにかあるわけでもなく、「双子ですがなにか?」といった風情で意味などまったくなかった。
ではどうやって悪党どもに立ち向かうのかというと言わずもがなだが、まあ、いろいろてんやわんやありつつ、結局、あらゆる困難を筋肉で解決してしまう。
「いいのかそれで?」
と思わないでもなかったが、まあ、ちょっと出来の悪いプロレスだと考えれば良い。むしろ、「荒いぐらいが丁度いい」のは実質的に猪木のコントロール下にあった時代の新日が証明している。だからこれでいいのだ。
知らんけど。