Vシネマ『六本木ソルジャー』‐歴史上、もっともパンチが効いた演技をしたプロレスラー‐

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ミルコ・クロコップにジーコと、観てない映画のレビューが続いたが、今回はちゃんと観ているので安心してほしい。まあ、曲がりなりにも映画のレビューと謳ってるんだから観るのが当たり前であり安心もクソもないという向きがあるかもしれないが、そこいらへんは「わんぱくな奴」ということで穏便に済ませていただきたいと思う。

 

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さて、佐山サトル主演のVシネマ『六本木ソルジャー』である。

力道山、長州力、武藤敬司、船木誠勝、さらには大仁田厚やダンプ松本など、過去に映画やドラマまたはVシネマなどの作品で「演技と呼ばれるシロモノ」を披露してきたプロレスラーはあまたいるが、歴史上、「このうえなくパンチが効いた演技をしたプロレスラー」といえば、佐山サトルをおいて他にはいないだろうと思う。

早速あらすじを説明しよう。

 

元、プロキックボクサーで、六本木芋洗坂秘密厳守探偵事務所の鷲津(佐山サトル)の元に、先頃ゼネコン汚職で逮捕された建設会社社長、雨宮の妻から調査の依頼が舞い込んだ。夫が残した汚職に関するメモを探して欲しいというものだった。調査は二人の女にターゲットを絞り、動き出す鷲津だったが、事件は思わぬ方向へ向かいだす……

 

まあ、面倒なのでビデオパッケージの裏面に記載させているあらすじをそのまま載せたわけだが、はっきりいってそんなことはじつはどうでもいい。本作に限っては、あらすじだの小さなことは語るべきでない。というか、「語りたくても語れない」のである。

とにかく、佐山の演技がひどい。棒読みは当たり前である。しかしながらそれ以上に問題なのは、モゴモゴフガフガとした喋り方のため、なに言ってんだかよくわからないということだ。

物語の内容的にあまり重要ではないチョイ役とかならまだいいが、この『六本木ソルジャー』で佐山は主人公を演じている。物語上、一番重要であるはずの主人公のセリフがよく聞き取れないのだから、話の筋を追えるわけがないのである。

とはいえ、話の筋が追えないからといって即刻ビデオを停止するのは勿体ないな、と思った。忍耐をすれば必ず見返りが訪れる。それが人生というものだからだ。

その「見返り」は突然やってきた。物語の終盤、なんと「ジェフ君」が登場するのだ。そう、かつて松田聖子との不倫で世間を騒がせたあのジェフ君なのである。

ジェフ君は裏社会の情報屋という役柄を演じており、ひさびさのジェフ君になんだか得した気分になったわけだが、しかし、はっきりいってこれもどうでもよかった。というのは、片言の日本語で喋るジェフ君のセリフも佐山と同様、ほとんどなに言ってんだか聞き取れないからだ。

さらに、ジェフ君の相棒として登場する金髪外人女もやはりなにいってんだかさっぱり解読不能な日本語を披露。結局、佐山との友情出演なのかなんだかよくわからないが、チョイ役で出てくる藤原組長のセリフだけがかろうじて自然に聞こえるという、あってはならない事態に突入する。ここまでくるともうどうにでもしてくれという心境になろうというものだ。

犯人役の大沢逸美がビルから投身自殺を遂げる場面はその極めつけといえよう。一連の顛末のやりきれなさから悲しみにくれる佐山という構図になるのであるが、その表情はどう見ても「うんこを我慢している」ようにしか見えないのだから降参するしかない。「キド・クラッチ」「ナガタ・ロック」など、必殺技に開発者の名前を冠するのはプロレスの世界ではよくあることだが、映画やドラマなどの泣きの場面でうんこを我慢しているようにしか見えない表情をする役者のことを「サヤマ」と呼ぶべきであろう。

見返りはもうひとつあった。物語の途中、挿入歌として流される『君のために強くなりたい』というジェフ君の日本語による歌だ。

これが劇中のセリフと違って、妙に聞き取りやすかった。

感心した。日本語上手いじゃないか。

って、いや本当にどうでもいいよ。

 

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六本木ソルジャー [VHS]

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