本作『チェイサー』で主演を務めておられるのはハル・ベリーである。
言うまでもなく大変お綺麗な人である。91年公開の『ジャングル・フィーバー』で銀幕デビューを飾ると、01年の『チョコレート』ではアフリカ系アメリカ人としてはじめてアカデミー主演女優賞獲得の快挙を成し遂げるなど、現在に至るまで堂々たるキャリアを築いている自他ともに認める名優だ。
そんなハル・ベリーだが、『キャットウーマン』とか本作みたいなバカ映画にもフツーに出ていたりする。
ちなみに件の『キャットウーマン』でゴールデンラズベリー賞最低女優賞を獲得した際には、直接受け取りに来る俳優や監督がほとんどいない授賞式にわざわざ駆けつけスピーチまで行ったという。
ご本人曰く
「アカデミー賞を受賞したからといって良い作品とは限らないし、逆にラジー賞を受賞したからといって必ずしも悪い作品とは限らない。私はあの役を精一杯演じたし、作品に出演したことも後悔していない。そのことを伝えたかった」
なのだそうだ。
どこまで懐が深い人なんだろうか。なんだかわからんが偉いと思う。
『チェイサー』でハル・ベリーが演じている人物はごくごく平凡なシングルマザーだ。
かつて愛しあった旦那とは別れ今現在はダイナーのウエイトレスで生計を立てながら溺愛しているひとり息子とともに慌ただしくも幸せな日々を過ごしている。
そんなある日、ふたりでいつものように公園で戯れていたところ、愛する我が子が一台のクルマに無理やり押し込まれた挙げ句あろうことか連れ去られてしまう。誘拐犯はコンビで、ひとりは長髪のくせに軽くハゲかけているおっさん、もうひとりはボストロールみたいな体型をしたおばはんである。
「は?! 誰あいつら? なんだかよくわからんが、おのれ許さん! 息子を帰せ!!」
つってマイカーで猛然と追いかけるおかあちゃん。
かくして両者による凄まじいカーチェイスがはじまる。
内容もテーマも全然違うが、根本的には『ターミネーター』や『96時間』と同種の作品と言っていいだろう。ようするに、「善人と悪人が追いかけっこする映画」である。
このおかあちゃんのすごいところはなんでもひとりで出来ちゃうこと。警察の手をいっさい借りず犯人ふたりをぶっ飛ばしたうえ、愛息を見つけ出し、さらにはある重大事件まで解決してしまう。未来からやってきた戦士や元CIA工作員でもないのに、だ。やることなすことフリーダムすぎるだろ。
「母は強し」といったところか。たとえ誘拐犯が熊や宇宙人でも見事に解決するに違いない。
感動した。
3点。