映画『ワイルド・タウン/英雄伝説』-倍速で観る必要がなさそうなくらい倍速すぎる展開っぷりに度肝を抜かれた-

映画を倍速で視聴する若者たちが増加しているという話題が持ち上がってネット民を中心にちょっとした騒ぎになったのは記憶に新しいが、今後映画製作の現場に於いて「テンポ」と「上映時間」が最重要視されるようになるのではないかと私は睨んでいる。

なにしろ倍速での視聴が好まれる傾向にあるのだ。テンポが悪い映画とか倍速でも観たかねえよと今時の若者に敬遠されるだろうし、ましてや上映時間2時間とか3時間をゆうに超える映画を倍速視聴が出来ない劇場へわざわざ足を運んで観に行くような若者なんて、まあ、いるにはいるでしょうが、今後は絶滅危惧種的な存在になっていくのではないかという気がしてならない。

とにかくテンポが良く、なおかつ、上映時間が短い映画が好まれる。この流れはおそらく今後加速していくに違いない。

そんな昨今の風潮を超能力で予知して製作されたのではと疑ってしまうような驚くべき映画を観た。

ロック様ことドウェイン・ジョンソン主演の『ワイルド・タウン/英雄伝説』という映画である。

 

早速あらすじを説明しよう。

特殊部隊を除隊し8年ぶりに故郷の田舎町に帰ってきたロック様だったが、かつて製造業で栄えていたころの面影はなく、親友だったはずの男がイカサマが当たり前のカジノを警察と癒着して大々的に経営しており、しかもあろうことかドラッグの売買まで平然と取り仕切ってて、というわけで北斗の拳のモヒカン軍団も裸足で逃げ出すような町の荒廃ぶりを目の当たりにし怒り心頭のロック様がお約束どおり悪者どもをバカスカぶっ飛ばしていく……というお話である。

アホでもマッハで結末まで予想できる親切設計になっているのもさることながら、もう一点注目してほしいのは上映時間だ。

 

これは短い。倍速での視聴となればそれこそあっという間だろう。ガッツポーズする若者たちが目に浮かんでくる。

これだけではない。なにしろこの映画、とんでもないテンポで話が進んでいくのだ。

怒り心頭のロック様がまずカジノの従業員たちを半殺しにして警察に捕まって裁判になって法廷劇がはじまったと思ったらあっさり無罪になって気づいたら町の保安官になっていた

この間、およそ10分である。編集部で打ち切りの判断が下ったがためにその後広げていくつもりだった様々な展開を無理やりまとめて詰め込んだジャンプの不人気漫画の最終回かよ! と言いたくなった。

単純明快なストーリー、かつ短時間で、おまけに驚異的なくらいテンポが良い。現代の若者にとってまさに理想的な映画と言えるだろう。

ただし重大な問題がある。

なにしろこの映画、おもしろくないのである。

youtu.be