チョウ・ユンファという人が出ている映画をひさしぶりに観たのだが、それにしてもやっぱり劇団ひとりに似ている。実際「チョウ・ユンファ」でググってみると関連ワードのトップに「劇団ひとり」が当然のように出てきたりするぐらいである。
で、さらにネットでいろいろ調べてみたところ、どうやらチョウ・ユンファには熱狂的なファンが多く存在しているらしいことがわかった。なにしろ、たくさんのファンの人らがチョウ・ユンファのことを親しみを込めてこう呼んでいるのだ。
「兄貴」
むろん、「弟思いの兄役を演じさせたら右に出る者はいない」とか、そういうことではないのは馬鹿でもおわかりだろう。
キーワードを挙げるとすれば「クール」と「仁義」、さらに「多くを語らず、困難に立ち向かう」であろうか。ようするに「漢気」ということであり、「男が惚れる男」ということだ。我が国の俳優でいえば竹内力や哀川翔とおんなじタイプだと考えればいいだろう。
たしかにそれは本作『リプレイスメント・キラー』を鑑賞してみてよくわかった。
なにしろ本作のチョウ・ユンファ演じる主人公は、殺し屋であるにもかかわらず対立しているはずの刑事のこどもの命を守るため困難に立ち向かうのだ。
素朴な感想で申し訳ないが、いい奴なのか悪い奴なのか、もう、わけがわからない。
しかし、これこそが「男心をくすぐる」というやつで、ファンからしたらたまらないのだろう。つまりは「正義とか悪とか関係ない。ただ、人の道から外れたことをする輩は許さん!」という、まあ、そういうことである。
あと、この人って目力がすごいのな。終始「うんこ踏んづけちゃった」みたいな、眉間に皺を寄せ深刻そうな表情を見せつける彼であり、人によっては暑苦しいと感じるかもしれないが、良くも悪くもその抜群の存在感は誰もが認めざるを得ないだろう。
そういえば渡辺謙もハリウッド映画に出演する際にはやはり異様に目に力が入った演技をしている。ヴィジュアル的な派手さではどうしても負ける西洋人俳優へのアジア人俳優ならではの対抗手段なのかもしれない。
とりあえず、主人公があまりにも無敵すぎる非現実的な設定がいけなかったのか、あるいは「顔が似すぎている」のがいけなかったのか、私にとっては「劇団ユンファ」以上でも以下でもない作品だった。
チョウ・ユンファを「兄貴」と呼べる日が来るのにはまだまだ時間がかかりそうだ。