ハロー! ベッキーだよ!!
というクソ寒い一発ギャグを思わず冒頭にかましてしまうぐらい煮詰まっている。
なにしろ頭が回らない。ネタが思いつかない。というかネタを考える気力が湧かない。端的に言ってめんどくさい。それでもブログを更新したいという病のごとき悪循環に悩まされている。もうグダグダだ。
気分展開しようってことではじめてマッサージ店に行ってみることにした。
自慢じゃないしじっさい自慢にもならないが、私はこれまで30数年間生きてきて、マッサージ的な施術を受けにそれらしき店へと出向いた経験が一度もなかった。
理由は単純明快だ。私は身体だけはなぜか無駄に丈夫な人間だからである。
もちろん私だってスーパーマンではない。身体のどこかしらが痛いだとか筋肉痛でつらいだとか、そんな日もなくはない。
じっさい、数年前にぎっくり腰になったことはある。以来、慢性的な腰痛持ちではあるものの、一度も専門的な店に出向きそれ相応の施術を受けたことはないし、そういう発想自体も一切なかった。
なぜか。
んなもん気合でどうにかなると思っているからだ。我ながらあきれてしまうぐらいの阿呆である。
そんな脳筋じみた私ではあるが、マッサージそれ自体に興味がなかったわけではない。なにしろちょろっと金さえ払えば「気持ちよく」してもらえるのだ。「気持ちよくなりたい」という願望は老若男女誰だってあるだろう。私とて例外ではない。
うん。思い立ったが吉日だ。行ってみることにしよう。ネタもないことだし。
早速、ネットの検索欄に自分が住んでいる地域名と「マッサージ」というワードを入れてクリック。膨大な数のホームページがヒットした。
しかし、これが思っているのとどうも違う。
たとえば、ある店のホームページにはなぜか駅名のみで詳しい住所が載っておらず、
「○○駅に着いたらこちらの番号に電話してください」
という文言が記載されてあったりする。
また違う店のホームページには「施術スタッフ紹介」という項目をクリックすると顔にぼかしを入れられた女性スタッフが人気ランキング順に掲載されていたりだとか、そういうのばかり出てくる。
あきらかに「大人向けのマッサージ店」じゃないかこれは。
私も男としてもちろん興味がないわけではないが、あいにく今探しているのはそっち系の店ではないのだ。
そこでハタと思い出したのが、最近、町中でやたらと見かける「全身もみほぐし」という看板を掲げている店である。
「全身もみほぐし」というワードを入れて再度検索をかけてみたところ、やはり膨大な数のホームページがヒット。いくつかのホームページをクリックしていくと外観に見覚えのある店が見つかった。
あーそうだ。この店だったら自宅からわりと近所にあったはずだ。
ホームページの「店舗一覧」の項目をクリックしてみると、やはり思っていた場所に店舗を構えていた。間違いない。
というわけで前置きが長くなってしまったが、先日、仕事帰りに寄ってみた。
「りらくる」という店である。
「あの~はじめてなんですけど」
受付のおっさんにそう告げたところ、幸いすぐに施術を受けることが出来るという。コースをどれにするか訊かれ、いろいろと種類があったが、とりあえず「60分・全身もみほぐし」を選択することにした。
その後、準備をするというので椅子に座って待機。待っている間に手渡された用紙に氏名・年齢・電話番号などの個人情報を書き込む。施術を受ける際の注意・禁止事項が記された用紙も手渡されたのでそちらにも目を通す。
「飲酒をされている方」
「病気を患っている方」
等、これらに該当する人間はだめとのこと。私はどれにも該当しなかったのでセーフだったが、それにしても気になったのは以下の項目だ。
「かなり大きないびきなど他のお客様に迷惑がかかる方」
以前、はじめて漫画喫茶に行ったときにも同様の注意事項が記載された用紙を店内で確認したが、「いびき」を禁止するのはさすがに無理があるのではないか。
「さあ、今日は思う存分いびきをかいてやるぞ」
断言してもいいが、そんなやつは絶対にいないのである。
そんなことを考えつつ待つこと数分、マッサージ師らしきおっさんがやってきた。
「本日担当させていただく○○です。よろしくお願いいたします」
50過ぎぐらいのおっさんだ。もちろん腕の良し悪しに関しては私には知るすべはないが、感じとしては物腰の柔らかい気さくそうな人である。
「お洋服はどういたしますか? このままでも大丈夫ですが、当店専用の服に着替えていただくこともできますよ」
「えーっと、どっちがいいですかね?」
「そうですねえ、着替えていただいたほうがリラックスできていいと思いますよ」
「そうですかー。じゃあ、着替えます」
更衣室に通され着替えることになった。服は一通りSからLLまでサイズが揃っており、上着は半袖のTシャツかあるいは長袖、ズボンも短パンか長ズボン(ジャージ)をお好みで選ぶという形である。着ている服や所有物を専用のカゴに入れ、上はTシャツ、下は長ズボンを着用した。
「それでは、ご案内いたします」
施術を受けるベッドまで通される。
「では、こちらのベッドでうつ伏せの状態になってくださいますか?」
見ると枕の位置がある部分は下が空洞になっていた。これだったらうつ伏せになっても息ができるし、さらにそのすぐ下にはさっき所有物を入れたカゴが置いてあるので、目を開ければいつでも確認することが可能というわけだ。
よく出来てる。感心した。
そんなことも知らなかったのかよと言われそうだが、はじめてなんだから仕方がないじゃないか。
「足のほうから徐々に上のほうを揉んでいきますね」
ふむ。なるほど。悪くない。というか、なかなかいい。
「力加減を言っていただければ、強くしたり弱くしたりいたしますので」
とのこと。私にはちょうどよかったのでそのまま施術していただく。
で、その後、足の裏を揉む段階になったのだが靴下を脱ぎ忘れたことに気付いた。
「あっ…すいません。靴下脱いだほうが良かったですか…?」
「いや、大丈夫ですよー」
「すいません。こういうマッサージ受けるのはじめてなもんで勝手がわからなくて……」
「いえいえ。でもこれ、マッサージじゃないんですよ」
「えっ、じゃあこれは……?」
わけがわからない。いったいどういうことなのか。
「マッサージと言ってしまうと医療行為になってしまうんです。つまり、保険が適用されてしまうことになるわけです。なので、わたくしどもは“もみほぐし”という形態でやらせていただいてます」
「へぇ~、そういうことなんですか。ということは、接骨院とかは“マッサージ”になるんですか?」
「はい。建前上ではそうなります」
「そうなんですかー。はじめて知りました。あっ、そういえばここ来る前にネットで“マッサージ”で検索したんですけど、なんかいかにも怪しげなサイトばかり出てきて…」
「ええ。我々の業界は“もみほぐし”になります。なので、医療系じゃないところでそう謳っているお店はまず怪しいと思ってもらって間違いないかと…(笑)」
なるほど。そういうことだったのか。勉強になった。
「それでは残りの半分は仰向けの状態でもみほぐしさせていただきますね」
うつ伏せの時と同じように丁寧にもみほぐしていただく。
「そういや、さっき医療じゃないって言いましたけど、ってことは免許とかはいらないんですか?」
「ええ。免許はいらないんです。なので、たとえばの話、2週間研修を受けていただければお客様もすぐにこちらで働けますよ(笑)」
「へぇー」
「こういうもみほぐし行為というのは東洋独特のものなんです。アジアだけの文化なんです」
「ほー。それはなんでなんですか?」
「骨格の違いですね。西洋人はモンゴロイドと比べて骨ががっしりしていて、たとえば肩が凝ったからほみほぐすという概念がないんです」
「へー」
「対してモンゴロイドは西洋人のように骨格が太くない。おまけに猫背です。だから凝りやすい」
「へー……」
「たとえばタイ古式というのもありますが、あれというのは……」
正直、寝る気まんまんで行ったのだが、寝る間もなくおしゃべりに終始してしまった。話し好きの気のいいマッサージ師、もとい「もみほぐし師」さんだった。
税込みで3210円。前述したとおり、こういうのを受けるのは今回がはじめてだったので業界全体の相場は知らないが、充分リーズナブルといえる値段なのではなかろうか。
うん。また気が向いたら行こう。
以上です。