いやあ。まいった。
というのも、こないだ、某ラーメン店にはじめて行ってきたのである。
件の某店はちょっとしたラーメン好き人間ならおそらく誰もが知っているだろう有名な店であり、その日、私は友人とふたりで夜のドライブをしている最中で、たまたま店の前を通りがかった。
「おっ。こんなところに○○(←某ラーメン店の名前)あるんだ。ちょうど腹も減ってきたところだし、よっしゃ、行ってみるか!」
と意見が一致し車をUターンさせ某店へ。
やはり人気店だけあって店内は大勢の客で賑わっていた。
友人は醤油ラーメン、私は味噌ラーメンをオーダー。
期待に胸を高鳴らせること数分、店員のにーちゃんがラーメンを手に持ってやってきて私の目の前に差し出そうとしたそのときだ。私はしっかりと確認してしまったのだ。
チャーシューの上におもいっきり髪の毛が乗っかってるではないか。
なにしろラーメンが私の目の前に置かれる前に見つけてしまったのである。あきらかに店員の髪の毛なのである。
普通なら店員も気づくはずだが、相当忙しそうにしているので、うっかり見逃してしまったのだろう。
「俺はそういうのぜんぜん気にしないけどな。アレだったら言ったらいいんじゃね?」
こともなげに言い放つ友人。
なんだか悔しかった。
なぜなら、私も基本的に「こまけえことは気にしない」タイプの人間だと思っていたからだ。
じっさい、これまでにも飲食店でなんべんか食べ物に髪の毛が混入しているのを見つけたことがあったが、
「もしかしたら自然に抜け落ちた俺の髪の毛かもしれんし、まあ、いっか」
と、とくに気にせずやり過ごしてきた。むしろ髪の毛が入っているぐらいで店員を呼びつけて作り直させたり、ましてや憤怒する客などいようものなら「ちょっとマネできねえな」とさえ思っていた。
べつに食べ物に髪の毛が入ってて怒る人を非難するつもりはない。まったくない。私は「クレームをつける」だとか「怒る」ということを極力避けたがる人間である、というだけのことだ。
そりゃあこれがゴキブリが入ってたとかだったら私も怒るよ。
カレー屋でカレー頼んでうんこが出てきても怒るよ。
「いや、うんこ頼んでねえよ!」
きっとシンプルにそう怒鳴り散らすだろう。
「…た、たかが髪の毛じゃないか!」
店員は呼ばず気合で食うことにした。したが、だめだった。
頭の中がモヤモヤして食おうとしてもどうにも箸が進まない。やはり着丼前におもいっきり見てしまったのがいけなかった。美味いとかマズいとか、味の感想すら浮かばない。
結局、半分ぐらい食べたところでギブアップ。
負けた…。
ラーメンに髪の毛が入ってたって気にしないような、なんなら、カレー味のうんこもニコニコ顔で頬張るような豪快な男になりたいんだよ俺は!
まだまだ修行が足りないな、と思った。