先日観た『バトルトラック』は1982年に劇場公開されたニュージーランド産の映画であるとのことである。
ストーリーをざっくり説明しよう。
石油戦争によって荒廃した世界で慎ましい生活をしている村人たちと、そんな村人たちを牛耳ろうとするヒャッハーな連中がいて、両者いろいろがちゃがちゃやりあう中、村人たちの助っ人として一匹狼のヒーローが突如やってきて……という、まあ、勘のいい人ならすでにおわかりだろうが、ようするにほぼほぼ『マッドマックス2』なのである。
もちろん、『マッドマックス2』をモロパクリしているわけではなく、恋愛パートだとか父娘の愛憎劇だとかも盛り込まれてはいるのだが、いかんせんそれらの要素がとくに深く掘り下げられているわけではなく、全体的な世界観はかなりチープであり、かつ、ぺらっぺらである。
だがそれがいい。どうも嫌いになれない。というか、個人的にかなりの好感すら抱いてしまったのは、自分ら不器用ですけど『マッドマックス2』っぽい映画をちょこっとオリジナリティを加えて一生懸命つくってみました、みたいな熱意が感じられたからである。
で、そんな本作の一番の見どころといえば主人公が操るバイクであろう。
これがじつにださいったらありゃしない。見た目は完全にモトクロス型のバイクなのだが、ハンドルの部分がえらいことになっている。なんかミニミニテーブル風と言ったらいいのか、とにかくそんなような形状のプラスチック製っぽい出来の悪いハリボテみたいなのがハンドル回りにくっついていて、もうものすごください。
「えーっと、これはつまり、このミニミニテーブルみたいな部分にスイッチかなんかが付いててそれを押すと中から銃弾が飛び出てきてヒャッハーな連中を一網打尽、みたいな展開になるってことでいいんすよね……?」
と思いながら観た。
なにも起こらなかった。
銃弾なんていっさい飛び出てこないではないか。
つまり、このミニミニテーブルはなんの意味もなく、ただ単にハンドル回りがださすぎるモトクロスバイクだったのである。
いちおう近未来っぽい世界という設定だからモロにモトクロスバイクなのもアレだしなー、ということでとりあえずつくって取りつけたのだろう。ただ、あいにく制作費が思いのほか調達できなかったのか、あるいは特殊メイクアーティストだか美術クリエイターだかのセンスが絶望的になかったのか、知らないが、とにかくせっかくの主人公のイケメンっぷりもミニミニテーブルで台無しだ。
だがこれもいい。
自分もこのバイク乗ってみてえ!
とは一ミリも思わなかったが、カネもセンスもないけどがんばって近未来っぽいバイクにしてみました、みたいなガッツが窺えたからである。
まあ、一生懸命つくってようがガッツがみなぎっていようがつまらんものはつまらん。じっさい、この『バトルトラック』も万人にはけっしておすすめできないが、なんというか原始的な手作り感が垣間見られるというか、とにかくそういう「近未来風B級アクション」を絵に描いたような無骨な作品がお好きな人なら間違いなくお気に入りの一品になると思う。
まあ、トラックが崖から落っこちていくシーンは『激突!』のモロパクリだったけどな。
ひとつだけ残念だったのは、無事ヒャッハーどもを退治した主人公が馬に乗って村を去って行くシーン。
「いやいや、そこは馬じゃなくてミニミニテーブル付きのバイクに乗って颯爽と去って行けよ!」
と言いたくなった。