2022年7月の消化物(映画)

今月劇場でもぐもぐした映画の感想文です。

 

『ブラック・フォン』

コロラド州のとある町で子どもの失踪事件が相次いで発生して、やだなー、怖いなー、ってなってる少年フィニー君の前にいかにもヤベー雰囲気満々な自称マジシャンのおっさんが現れて「マジック見るかい?」とか突然わけのわからぬことを言い出してきて、「うわあ、なにこいつキメエ」つってウエスタンラリアット喰らわせたうえ警察に突き出せば万事解決であったろうが、当然ながらそんな壊れたダンプカー的な少年などいるはずがなく、気づいたら地下室に拉致監禁されちゃってました、みたいなお話。いやコレ、ジャンル的にはホラーになるんだろうが、意外や意外、しんみりできて泣ける、みたいなやつだった。私は幽霊怖い系のヤツは眠たくなってしまう人なのだが、誤解を恐れずに言えばこういう「夢があるタイプの幽霊」はなかなか嫌いじゃない。とにかく一風変わったホラーに興味がある人には胸を張っておすすめしたい。

 

『 モガディシュ 脱出までの14日間』

普段は縄張り争いとか小競り合いみたいなことばかりしててクソほど仲悪いソマリア在住の韓国と北朝鮮の大使館員たちだったが、ある日、ソマリア国内で内戦が勃発して、もう外国の大使館員であろうが誰彼かまわずぶっ殺されちゃうみたいなキワキワな状況になっちゃって、ウォーこりゃ仲違いしてる場合じゃねー気分悪いけど協力してソマリア脱出しようぜ! 気分悪いけどな!……みたいなことになるお話。まあ、簡単に言ってしまえば昨日の敵は今日の友的な物語なのだが、なにしろ莫大な制作費を投入したであろうカオスな絵面がハンパない。どっちかが裏切るんじゃねーか的なサスペンスあり、そもそも脱出できるんか的なハラハラドキドキ感もありで、最後の最後まで目が離せなかった。とりわけラストのカーアクションが特筆モノのド迫力だった。

  

『X エックス』

若者グループがポルノ映画の撮影のため田舎の寂れた町にやって来て、したら宿貸してくれたジジイババア夫婦の様子がなんだかおかしいというか完全に頭イカれてて怖いよー、みたいなことになるお話。エロやグロやオカルトだとかクラシカルなB級ホラー要素満載の作風は嫌いじゃないし、終始漂っている不穏なムードも悪くなかったが、肝心のストーリーがどうにもかったるく途中うたた寝なんかもしてしまいつつ、最終的に一番印象の残ったのは「でけえちんぽ」だった。

 

『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』

売れない三流役者のおっさんがバットマンのモロパクリ映画『バッドマン』の主役に抜擢されて意気揚々と撮影に臨んだはいいが撮影用の衣装のままクルマで事故って記憶をなくしたうえ自分は本当のスーパーヒーローだと思い込んで全然ゴッサムシティではないフツーの街の平和を守るためジョーカー的な悪い奴(もちろん中身はただの俳優のおっさん)に立ち向かう……みたいなお話。仏版『シティーハンター』のチームが制作したコメディとのことで相当期待して観たがすげー楽しかった。本家『バットマン』をはじめスーパーヒーローもの映画のパロディや下ネタなどなど、とにかく最高にくだらなくて最高に馬鹿馬鹿しい。バットマン観たことある人はもちろん、丁寧に伏線敷いてるのでバットマン観たことねえよという人もフツーに楽しめるはず。にしても主演のフィリップ・ラショーは良い。よく見りゃイケメンなのにバカに徹していて好感しかない。すっかりファンになってしまった。

 

『グレイマン』

CIA所属のヒットマンが組織の闇に気づいて逆にCIAから追われる身となり……みたいなお話。まあ、ようするに手垢まみれのお話ではあるが、キレキレな戦闘アクションやらありえなさ過ぎて笑っちゃうような空中戦やらアホみたいに豪快な爆破シーンやら「まー細けえことは気にすんな!」的なノリと勢いがあってなんだかんだで最後まで楽しく観られた。

 

『炎のデス・ポリス』

殺し屋と詐欺師と殺人鬼と女警官というオールスターが一堂に介して刑務所内でぶっ殺しあうお話。すでにいろんな人に指摘されているだろうが、スケールがでかいんだか小さいんだかな展開やら、なんだかマンガっぽいキャラクター造形やら、そこかしこからジョン・カーペンター臭がプンプンするB級アクションであり、ジョン・カーペンターのファンである私としてもなかなかに楽しめた作品でした。あと全体的に音楽がかっちょ良くて、とくにラストのカーティス・メイフィールドには痺れた。にしても、いつのまにか巨大化してたジェラルド・バトラーがおなじく昨年公開の『アオラレ』で巨大化していたラッセル・クロウとほとんど見分けがつかなくなってて笑った。近い将来、双子役かなんかでふたりが共演する映画が観られるかもしれない。

 

『ボイリング・ポイント沸騰』

全編ワンショット撮影という触れ込みで話題のヤツ。レストラン内で起こるとある騒動が描かれていて、お話自体はわりと地味めだが、カメラワークやストーリー展開が巧妙で、なんかそこいらにいそうな接点のない人たちの内輪揉めを透明人間になって覗き見しているような新感覚感みたいなのがあって良かった。本国イギリスで賞を獲ったのも頷けるデキ。舞台を風俗店にしたりとかシリーズ化したらおもしろそう。

 

『女神の継承』

タイの祈祷師一族を韓国のクルーが密着取材しにやって来ました、というテイのフェイクドキュメンタリー。混沌としたストーリー展開や絵面はなかなか鬼気迫るものがあったが、大槻教授並みにオカルトに厳しい私には合いませんでした。密着ドキュメンタリーというテイの割にカメラワークとか音楽使ったりとか不自然で逆にリアリティが削がれてる感があったし、そもそも怖がらせにくるのは全然いいんだけどそれプラスなにかが欲しいというか、とにかくなんだか眠たくなってしまった。

 

以上。疲れた。おしまい。