「漫画の中だったら自由に人が殺せるんですよ~」
映画館から出て、家に向かっている途中、不意に上のセリフを思い出した。
数年前に放送された『水曜日のダウンタウン』で、「蛭子能収を超えるクズ そうそういない説」と題し、蛭子さんの数々の悪行(?)が紹介されていた。冒頭のセリフは、息子の友達が自分のプリンを勝手に食べたことに腹を立て、その子を漫画の中で殺害したことについて問われた蛭子さんの弁明(?)である。しかも、まるで「フツーでしょ」といった感じで楽しそうにそうおっしゃっていた。
で、ざっくり言ってしまうと、本作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』においてタランティーノ監督は蛭子さんと同じようなことをやっていた。
ということは、タランティーノと蛭子さんは同種の人間なのであろうか。
よくわからん。わからんが、とにかく
「いいなあ。夢がある。やっぱり映画ってなにやってもいいんだよなあ」
と、エンドロールを眺めながら私はしみじみ思ってしまった。
ネットの口コミでは「いくらなんでもやりすぎ!」といったような声もいくつか見られた。
いや、たしかにそりゃあ映画だからってなんでもかんでもやっていいもんでもないだろう。ただ、それでも私は、この『ワンス~』においてタランティーノ監督がやってのけたことを全面的に支持したい。実際問題、とてもスカっとしたからだ。
「もし、こうなってたら……」
「もし、あんなふうになっていなかったら……」
ようするに、そういう映画である。
俺だったらそうだなあ、やっぱ音楽が好きなんでマーク・チャップマンを○○○○○でカチカチにしてやりたいかなあ。現実は酷いからねえ。いや、映画の中でくらいは夢見てもいいじゃないですか。
それにしても、しょっちゅうメソメソしているディカプリオも最高に楽しかったが、プラピのかっこよさといったらなかった。じつに痛快なタフガイぶりで、まるで『ファイト・クラブ』のタイラー・ダーデンが降臨したかのようだった。これで55歳だってね。最強すぎるだろ。
60年代のアメリカの町並みを再現した映像も風情があって良かったし、BGMもオールドロックが好きな人間ならニヤリとさせられるはずだ(ひさびさにサントラ買いたくなった)。
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「つうか、これって現実世界にタイラー・ダーデンが降りてきた、っていうお話として考えてもおもしろいんじゃね…?」
などとも、ちと思った。