その昔、いろいろなところでバイトをした。
スーパー、コンビニ、書店、ブックオフ、TSUTAYA等々だ。
ある時期には朝から夕方まで書店で働き、その後はコンビニで夜まで働いたりしていたこともある。
勤労意欲が高かった、とか、実家が貧困に喘いでおり家計を支えるため、とか、高尚な理由があったからではない。
その頃の私は趣味らしい趣味もほとんどなく、そのうえ進路を決めかねていたモラトリアムな青年だった。
ようするに、単にバイトをすることぐらいしかやることがなかっただけである。
ちなみに接客をメインとする仕事ばかり選んだのは、最初の勤め先となったスーパーでなんとなく接客の要領を掴んだつもりになっていたからで、単に
「似たような職業のほうがラクだろう」
というだけのことだった。
ともかく、上に挙げた各業種で働いている人たちのご苦労は私も過去に経験済みなので、多少なりとも理解しているつもりである。
では、これら接客業においてもっとも苦労することとははたしてなにか。
レジ打ちか。あるいは品出しか。はたまた検品作業か。
違う。全然違う。
「店内BGM」である。
この話は下の記事でも書いたがしつこくまた書く。
思い出したくもないが忘れもしない某TSUTAYAでバイトしていたときのことだ。
当時、B'zの既発シングル10作が旧来の板チョコみたいな形をしたものから、今現在流通しているいわゆる「マキシシングル」の形で再発売されることになった。
で、なにが起こったのかというと、我が勤め先の店舗にてB'zのマキシシングルの販促キャンペーンが展開されることになり、そのおかげで店内のBGMがB'z一色になった。いや、なってしまった。
なにしろ朝の朝礼が終わり店が開いたら
「ウッルットッラソウ!」
昼休憩が終わり戻ってきたら
「コッマッチッ、エ~ンジェル!」
ようやくバイトが終わって家に帰ってきたと思ったら
「ウッルットッラソウ!」
脳内では常にB'zの曲がエンドレスで鳴り響いているのである。
たしか2・3週間ぐらいだったろうか。もちろんその間、毎日だ。
想像してみていただきたい。
B'zの10個の楽曲を、ルーティンで店内BGMとして、朝からバイトを終える夕方まで、強制的に聴かされるハメになってしまったのだ。
繰り返すが、決まった10個の楽曲を朝から夕方までエンドレスで、である。
B'zは嫌いではないし、むしろ好きな曲がわりとあるが、あのときだけはマジで地獄だと思った。
ずいぶん前に某ヤマダ電機に行ったら店員が客に土下座している光景を目撃したことがある。
大勢の客がいる前で土下座するなんてよっぽどのことを店員がやらかしたに違いないが、あれは店内でエンドレス再生されている例のテーマ曲の影響も少なからずあったのでないかと睨んでいる私である。
「♪チャララララランララ~ン~ヤマ~ダ電機!」
あんなもんを毎日強制的に聴かされてたら某ヤマダ電機の中の人たちも頭がおかしくなるよ。
にしても、こないだエロDVD店に行ったら店内BGMでマイケル・ジャクソンの「スリラー」がかかってて笑った。
というのもこの曲、ご存知の方もいるだろうが、かつて『タモリ倶楽部』の空耳アワーで取り上げられたことがある曲なのだ。
ただの空耳ではない。とても卑猥な内容の空耳なのである。
問題の空耳は曲の中盤、間奏に差し掛かった箇所で聴くことができる(※上動画6:39~6:42あたり)。以下がそれだ。
「♪クリトリス、氷、そしてブランデー」(※元歌詞「Creatures Crawl In Search Of Blood」)
果たして選局した者は件の事情をわかったうえで「スリラー」を流していたのだろうか。もしわかっててかけていたのなら、この曲をチョイスした店員には感心するしかない。
ともあれ、店内BGMは店員のモチベーションにかかわる重要な案件であろうと思う。
とくに毎日ルーティンでおなじ曲を流し続けるのは良くない。店員に無駄な精神的苦痛を与えることになるのは必至だ。それならまだBGMなしの無音の状態のほうがマシである。最悪の結果、音楽を嫌いになるなんてことにもなりかねないではないか。
たとえば月曜はJ-POP、火曜はR&B、水曜は洋楽のロック……なんていうふうに担当者は創意工夫をしてしかるべきだろう。
接客業をそれなりに経験したことがあり、かつ音楽を愛してやまない私からのお願いである。