人間、歳を感じるのには様々なケースがあると思います。
・前の日の疲れが取れにくくなった。
・朝起きると顔面が異常に脂っこい。
・ちょっとしたことですぐに腰が痛くなる。
・気づいたらおんなじことを何度も口にしている。
・心なしか以前よりも息が頻繁に臭くなっている気がする(そして、じっさいに臭い)。
・ブログを更新する意欲がなかなか湧かない。
中でもとりわけ
「俺、歳とったなあ…」
と感じてしまうのが家でテレビを見ている時です。
主にお笑い芸人がわんさか出演しているような民放のバラエティ番組ですが、なんというか、あの賑やかしいノリに身体が追いついていかないのです。
「うるせえよ!」
そして、以前は滅多なことでは見ることのなかったNHKにチャンネルを切り替えるのです。
「…ああ、やっぱり落ち着くな」
もう、ほぼ、おじいちゃんなのです。
そう遠くないうちに早朝5時頃に起床して、盆栽の手入れなんかをやりだすかもしれません。その際、自然と一人称も「わし」になり、喋る言葉の語尾には「じゃ」や「だのう」が付くようになるのでしょう。そうなれば完璧におじいちゃんに変身です。
もうひとつ、「俺、歳とったなあ…」と実感するケースとして、「売れているミュージシャンの名前がさっぱりわからない」というのが挙げられます。
元々ヒットチャート自体に興味はありませんでしたが、音楽好きとして一応、世間一般で流行っている売れっ子ミュージシャンの名前や楽曲などはある程度、知識として押さえてました。それがたとえば「話題の新人バンド」といえば、ドラゴン・アッシュ、バンプ・オブ・チキンあたりで思考が止まってしまっている有様です。
今流行っているバンドっつったらセカオワですか? ベビメタつうんでしょうか? 一応バンドの名前だけは知っているものの、メンバーの顔も名前もよく知りませんし、曲もたぶんテレビとかで流れてるのを何度か耳にしたことはあるのでしょうが、「じゃあ、どの曲がセカオワの曲で、どの曲がベビメタの曲か?」みたいな5択のクイズなんかを出されたら正確に答えられないです。仮にピンクサファイアの曲を聴かされて、「これがベビメタの曲だよ」なんて悪い人に嘘の情報を教えられても、「これがベビメタかー。随分レトロチックなサウンドを志向しているのだな」と思うぐらいで普通に騙される自信があります。
そんなわけですから、学生が「とりあえず聴いときゃクラスの話題に乗り遅れない」的なミュージシャンなんざ、皆目見当もつきません。
まあおそらく、今はエグザイルあたりが「とりあえず聴いときゃクラスの話題に乗り遅れない」的なミュージシャンとしてトップクラスの地位に君臨しているものと思われますが、エグザイルといえば、つい数年前まで通っていた理容室でこんなことがありました。
元々は「ちょっとこじゃれた理容室」だったそのお店は、昔ながらの理容室ほど流行から外れてしまっている感も、かといって美容室のようなこじゃれすぎている感もなく、料金的にもリーズナブルとあって贔屓にして通ってました。
そんなある日、リニューアルオープンしたとあり、早速足を運んでみたところ、店内の様子ががらりと変わってしまっていたのです。単刀直入に言えば、「ちょっとこじゃれた理容室」だったのが、美容室も顔負けするほどの「過剰にこじゃれすぎている理容室」になってしまっていたのです。
馴れない雰囲気に戸惑いつつ店内で馴染みの店員を発見したものの、その服装は以前よりもオシャレ臭を過剰に醸し出していて、やはり以前とはかなり様子が違っているようでした。
そんな中、耳慣れない「代表」という言葉を耳にしたのです。
というのは、どうやらそのお店では「店長」のことを「代表」と呼んでいるらしく、まあ、「代表」でも「マスター」でも、なんだったら「酋長」でも「村長」でも、好きなように読んだらいいと思いますが、で、なんでもその「代表と呼ばれている人物」は副業でファッション誌のモデルをやっており、さらにそういうお仕事をやっているためかどうだか忘れましたが、とにかくその「代表と呼ばれている人物」はエグザイルのメンバーの方々と知れた仲である、と、そのようなことを馴染みの店員がおっしゃってくるのです。
それを証明するかのように、店内には「さあ、読んで!」とばかりに
「37ページと112ページに○○代表の写真が載っています!」
などと書かれたメモがでかでかと表紙に貼り付けられたファッション雑誌、さらにはエグザイルのメンバーらしき人物と仲睦ましげに写っている「代表」らしき人物の額縁入りのお写真が店内の目立つところに堂々と飾られていました。
そして挙句の果てには馴染みの店員とのこんな会話でした。
「夏になったら暑いし、おもいきって坊主にでもしようかなって考えてるんですけど、どうですかね…?」(私)
「ああ~、『アツシ』みたいな感じにしたらオシャレでいいと思いますよ~」(店員)
「…えーっと、『アツシ』って、誰…?」(私)
「いや、エグザイルの…」(店員)
「ああ…(知らねえよ)」(私)
エグザイルの有難みはおろか、エグザイルのメンバーの名前すらもよく知らない私の足は自然とそのお店から遠のいた次第です。
今、果たして、あのお店はどんな状態になっているのでしょう。
浅黒い肌をしたホスト風の店員たちが、エグザイルのヒット曲を口ずさみながら、お客さんの髪をカットしているのでしょうか。
なんだか面白そうなので、それならそれでもう一度行ってみるのもアリかもなあ、と思う今日この頃です。
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