『グリズリー』は、狂暴な熊が人々を次々と襲い町中大騒ぎ、というよくある動物パニックもの映画であるが、出てくる熊がなにしろ凄い。
人を喰うのである。
しかも喰いきれなかった人間を山に埋めて隠す。腹が減ったとき「残り」を喰うためである。
劇中説明されるが、なんでも熊の習性らしい。
えらく賢いじゃないか。って、おまえは犬か。
おまけにこの熊、狩猟用の銃でいくら撃っても死なない。というか、死なないどころかかすり傷ひとつ負った様子さえない。どこからどう見ても見た目「普通の熊」なので正直死なないのは納得いかない部分があるが、所詮作り事なので、まあ、細かい点はこの際大目に見よう。
しかし、だからってバズーカ砲で撃退するのはどうなんだ。
熊、大爆発、なのである。
腹かかえて笑った。
まあオチをばらしてしまったという問題があるっちゃあるが、とくに気にする必要がないのは、オチ云々など問題外の、とんでもないバカ映画だからだ。
ともあれ、劇とはいえ熊に殺されるのは嫌だ。
『13日の金曜日』ではカップルがセックスの最中ジェイソンに殺されるのがいわばお約束であったが、この映画のしょっぱな、いきなり熊に襲われ殺される女も悲惨さでは負けてない。なにしろ、山中で用を足しに行った直後に殺されるのだから最悪だ。
大なのか小なのか、さすがにそこまでの描写はなされてなかったが、仮にこれが野グソであった場合、熊に惨殺された女と、その女の体内からひり出された糞、いずれもまだホッカホカである。どちらが先に冷たくなるか、勝負だ。
わけがわからない。
それにしてもこの映画のタイトルはどうなんだ。
『グリズリー』
まあ、地味だ。
「くまさん」
あえて邦題にしてみると、こうだろうか。しかしながら、これでは熊もうかうか悪さしていられないだろう。
「くまさんに襲われる」
まるで切迫感がないよ。だめだ。
「くまさん、襲来」
「エヴァふう」にしてみたが、いずれにしてもだめなものはだめだ。
「くま氏」
「くま様」
「くま公」
「ミスターくま」
どれもがだめであり、そう考えるとやはりこの映画のタイトルは、無理に日本語に訳さず『グリズリー』にして正解である、と思った。