新年も半月ほど過ぎた。成人式も終わり、いよいよ春の到来だ。そして、慣れ親しんだ母校との別れを控える若者どもにとっては、同時に、入学式、入社式といった「デビュー」を控える時期である。さぞかし期待と緊張が入り混じった心持ちで新年を過ごしている若者どもも多かろう、と思う。
では、ロック好きの人間にとってのデビューとはなにか。
それは、「はじめてライブハウスへ行くこと」である。
で、なんでもこのライブハウスへ行くことにどうにも二の足を踏んでいるという、言わば「ライブハウス童貞」が少なからず存在しているというのを風の便りで耳にした。
曰く
「眼光鋭い観客どもが凶器を振り乱したり、ドラッグの取引が半ば公然と行われているような、恐ろしい場所なのではないか?」
曰く
「発狂したかのごとくに髪を振り乱しながら踊ったり、挙げ句の果てには客どもの頭上にはい上がって人間サーフィンのような真似をしている輩を見たことがあるが、果たして自分はあのノリについていけるのか?」
などなど。
そこで今回は、今日の我国に於いて、ロック好きであるにもかかわらず未だライブハウスへ出向いたことがないというライブハウス童貞どものために、初めてのライブハウスの楽しみ方&困ったときの対処法についてレクチャーしたいと思う。是非この記事を参考にして、健全かつ立派な大人どもに育ってくださりますれば幸いである。
①チケットを買う
まずはライブへ行くためにはなにはなくともチケットを購入しなければならない、ということはさすがに2歳児でもおわかりだろう。というわけで、さっさと『ぴあ』なり『イープラス』なりのホームページに飛ぶなり最寄りのコンビニへ行くなりして、ただちに目的のライブのチケットを購入していただきたい。
②「ドリンク代」を頭に入れておくべし
「いよいよライブ当日だ。よっしゃ、早速ライブハウスの中に入ろう!」
という刹那……貴方は「罠にかかった」と、いやでも実感することになるだろう。
なんと、じつは多くのライブハウスでは入場の際、チケット代とは別に「ドリンク代」と称し、さらに上乗せでお代にして500円を強制的に支払わさせる仕組みになっているのである。
お手元にあるチケットをご確認いただきたい。
そう、「※ドリンク代別」と記してあるそれだ。
で、500円の代わりにコイン的な代物を手渡され、それをバーカウンターの店員に差し出すれば、カンパリオレンジだのモスコミュールだのコーラだのといった「ドリンク類」と物々交換できる、というわけである。
プラス500円である。
あきらかにぼったくりではないか。
「まあでも、500円手渡してうまい棒50本貰ってもかさ張ってライブ中邪魔になるし、ドリンクだからいっか。じっさい、喉も乾くし…」
と思って、ここは男らしくあきらめよう。
③持ち込み禁止の物
会場内へは、包丁、ピストル、竹やり、吹き矢、テポドン等の銃器類は、原則持ち込み禁止である。また、演奏を録音するための機器の持ち込みや携帯電話での撮影行為も基本的にNG。
それから、何故かとくに言及されていないみたいだが、球技で使用するようなボール類や大木などの持ち込みも禁止のはずなので(たぶん)、仲間と一緒にドッヂボールないしはキャンプファイヤーを楽しむ、なんていった行為も不可能であろうし、というか迷惑なのでやめてほしい。
④物販について
会場の内外には物販ブースというものが設けられており、そこでバンドの関連グッズを購入するのもライブの楽しみのひとつであったりする。
置いてあるのは主にバンドのCDやDVDをはじめ、バンドのロゴマークなどがプリントされたTシャツ、パーカー、キャップ帽、さらにはトートバッグ、タオル、ペンケース、キーホルダーなどなど、なんでもござれといった状態だ。
そういえば以前『アメトーク』で紹介されていたが、長渕剛のライブ会場では、長渕の愛犬の写真がプリントされたマグカップ、どんぶり、タンブラーまでもが売られているという。
ここまでくるとその商魂の凄まじさにただただ頭が下がるというか売っている人間の神経を疑ってしまうが、売っているということは「買う奴が確実にいる」ということなのだろうから、どっちもどっちと言うべきか。あるいは、バンドのロゴや愛犬等の写真がプリントされた歯磨きセット、財布、糸ようじ、オートバイ、冷蔵庫などを「グッズ」と称し販売しているバンドだって存在するかもしれぬ。
いずれにしても、ライブが終わり、それら購入してきたグッズを部屋でひとり眺めていると、なぜか激しい後悔に襲われることが往々にしてあるということを老婆心ながら忠告しておく。
⑤万が一、「恐ろしい客」と出くわしてしまったときの対処法
ここまできてようやくライブ演奏を観覧ということになるわけだが、ライブハウス童貞の悩みは尽きない。そう、
↑こんな客や
↑こんなような客が大暴れしてないか、ということである。
まあ、さすがに上記2名のような「極限までイっちゃってる連中」にはいまだかつて、出くわしたことはないが、モヒカン頭で顔面ピアスだらけの輩とか、シャツ脱いで墨まみれの上半身をこれみよがしに晒しながら猛然とモッシュ食らわしてくる輩とか、時たまいることはいる。
ほとんど悪魔のような身なりであるが、まあ、ああ見えてもおかあさん思いのやさしい子なのかもしれないし、じつは毎年24時間テレビの会場で黄色いTシャツ着て募金していたりするのかもしれないし、いずれにせよ見た目で判断するのはよくない。よくないが、万が一、近くにこんなような輩がいた場合はテキトーにスルーすることをお薦めする。
⑥堂々と観る
じつはライブハウス童貞の前に必ず立ちふさがる大きな問題がある。それはライブハウスへひとりで訪れた場合、
「うわあ。こいつひとりで来てやんの。友達いねえのかよw」
などと周囲の客どもから好奇の目で見られるのではないか、ということである。
で、結論から言うと、ひとりで来ていようが友達を2万人引き連れていようが、そんなことは誰も気にしちゃいないのである。なぜなら己を含め、大勢の観客どもの唯一かつ最大の標的は「ステージ上にいるミュージシャン」であるからだ。
なので、ひとりで来ているからといってビクビクする必要などないわけであって、周囲の目など気にせず、なんなら片手間にエロ本を熟読でもしながら、堂々と自信をひけらかすかのごとく楽しんでいただきたい。
⑦帰宅
ホッと一息フリーダム。あとはメシ食って風呂入ってクソしてセンズリこくなり好きにしてほしい。