今年は俺のお気に入りの海外ミュージシャンが続々来日公演を行う記念すべき年となった。
8月にはウィーザーが新木場スタジオコーストで来日公演を行った。同じ8月に開催されたサマソニのヘッドライナーとしてレディオヘッドもやってきた。10月にはプライマル・スクリームの公演が控えているし、さらに11月にはクーラ・シェイカーがひさかたぶりの単独来日公演を開催するらしい。
一方で俺のお気に入りの国内ミュージシャンに目を向けると、ザゼン・ボーイズ、エレカシ、スクービー・ドゥー、モーサム・トーンベンダーなんかも、相変わらず精力的にライブを開催しているようだ。
行ってねえ。
なにひとつ観に行ってないし、なんだかどうも観に行く気にもなれない。
いったいなぜなのか。
●上記のミュージシャンのライブは昔、さんざん観に行って、すでにひととおり満足してしまったから。
●上に挙げたいずれのミュージシャンも新作アルバムの出来が個人的にいまいちに感じられて、ライブで披露されるであろう新曲をナマで聴きたいと思わないから。
考えられる理由としてはこの2点であろうか。
さらにもうひとつ付け加えるなら、俺がおっさんになってしまったことも大きいだろう。
幸か不幸か俺は独身の身なので、仕事が終わってしまえば、その後はたんまりと自由時間がある。少なくとも都内近郊で開催されるライブならば大概は観に行こうと思えば容易に実行可能である。が、それなりにエネルギーがあった若いころのように遮二無二ライブを観に行こうとはなかなかなれなくなってしまった。
まあ、ようするにぶっちゃけ言うと、ライブを観に行くこと自体にマンネリを感じてしまっている。
ライブED……つまりは、そんなような状態に、現状、俺は陥っている。
というわけで、小島麻由美のライブを観に行ってきた。
2日前の9月20日、開催場所は渋谷クラブクアトロであった。
小島麻由美のライブを観に行くのははじめてである。
小島麻由美のライブ映像作品といえば、いまのところリリースされているのは下のDVD「BLUE RONDO LIVE!」のみ。
当然ながらくだんのDVDは俺は視聴済みだが、「もっと観てえよ」と、YouTubeでも探してみたものの、なぜかライブ動画に関してはほとんどアップロードされていない。
つまり、俺個人の小島麻由美のライブ知識はほぼ皆無に等しい。ライブを観ること自体、はじめてなんだし、当然マンネリ感なんてゼロである。
いったい、どんなステージが繰り広げられるのか。
これはもう、観に行くしかないじゃないか。
当日は関東に台風が接近している影響で、そこそこ激しい雨が降り注いでいる最悪のコンディション。
「ああ、雨うぜえ…。家でマック食ってテレビでも見ながらだらだらしてるほうがよかったかなあ…」
なんてことを考えつつ、開演10分前の19時20分、クアトロに無事到着。
入り口でチケットを差し出し、さっさと便所へ行き小便を済ませ、場内に入る。そのままバーカウンターへ行きドリンクチケットと交換でハイボールを即注文・ゲット。
場内を見渡してみると、客はがっつり入っていて、なんだか安心した。
ヤングな連中もそれなりにいる感じだが、それよりも、おっさん客がやたらと目につく。俺もじゅーにぶんにおっさんだが、俺よりももっと年上っぽい40~50のおっさんが多く、中には還暦が近そうなおっさんまでいた。夫婦で小さな子供を一緒に連れて来ている人もいた。
もともと『ミュージックマガジン』の愛読者で、紙面で小島麻由美の存在を知り、作品を買いファンになり、現在に至る……みたいな人らが多数詰めかけているような印象を受けた。
いずれにしても、暴れる系のロックなライブではないせいか、開演が間近に迫っているにもかかわらず簡単にステージ近くのほうまで移動することができた。
つい今しがたゲットしたハイボールに口をつける間もなく場内が暗転し、ビートルズの「ゲット・バック」が流れる中、バンドメンバーが続々と登場。最後に登場したのはもちろん本日の主役・小島麻由美である。
この日のライブはHMV主催の「ゲット・バック・セッション」なる企画にのっとったもので、今年でリリース20周年となるセカンドアルバム『二十歳の恋』に収録されている楽曲をそのまま曲順どおりに演奏していくという構成であった。
ギターにベースにドラムに鍵盤楽器奏者にフルート奏者にホーン奏者3名、さらにゲストとして中盤とアンコールではピアニカ奏者のピアニカ前田氏も加わったビッグバンド隊が豪華絢爛な演奏を鳴り響かせる。
もちろんその中心にデンと鎮座ましているのは、妖艶で、かつ、どこか純真無垢さを感じさせる、あの独特でなんとも魅力的な小島麻由美の歌声である。「パレード」や「マイモンキーはブルー」での、じつにパワフルな歌声にもしびれまくりだ。
もちろん、小島麻由美の歌に負けず劣らずヴォリューミーな演奏を繰り広げるバンドの演奏もとてもよかった。
とくにドラムスのASA-CHANGがもうじつにすさまじかった。
キレッキレでグルーヴィこのうえないASA-CHANGの演奏は、小島麻由美の音楽の魅力を最大限に表現するうえで欠かせない最重要パーツであると思う。個人的に単発ではなく、できれば今後のライブやレコーディング作品でもドラムはASA-CHANGをぜひ起用していただきたいと切に願う。
『二十歳の恋』再現演奏を終え10分間の休憩ののち、再び小島麻由美ならびにバンドメンバーが登場。
「蜜蜂」や「ロックステディガール」や「恋はサイケデリック」や「結婚相談所」や、さらにアンコールでは「ひまわり」もナマで聴くことができた。
ほんとうにほんとうに、素晴らしかった。
素晴らしすぎてとろけちまいそうだったよ。
家でマック食ってテレビ見ながらだらだらしてなくてほんとうによかった。
にしても、「ハードバップ」や「愛しのキッズ」や「恋の極楽特急」や「夏の光」や「はつ恋」や「私の運命線」や「真夜中のパーティ」や「あの娘はあぶないよ」などなど、ナマで聴きたい曲はまだ山ほどある。
うん。また観にこよう。
セットリスト
(第一部)
01.あの娘の彼
02.真夏の海
03.飾窓の少女
04.パレード
05.移動式遊園地
06.マイモンキーはブルー
07.二十歳の恋
08.私の誕生日
09.さよなら、カエル
10.月夜のブルース
(第二部)
11.黒猫
12.蜜蜂
13.夜明けのスキャット
14.ロックステディガール
15.恋はサイケデリック
16.GOLD&JIVE
17.ポルターガイスト
18.結婚相談所
19.サマータイム
(アンコール)
20.ハートに火をつけて
21.ひまわり
22.皆殺しのブルース