やけに自信満々な様子の加納典明氏(以下、テンメイ)が鋭い睨みを利かすジャケットの本作品。
とはいえ、本アルバムにはテンメイが作詞作曲した楽曲が収録されているわけではありません。
それでは典明がその類稀なる美声、ないしはX JAPANのToshiばりの高音シャウトをついに我々に披露してくれているのかというと、そういうわけでもありません。
ましてや、エレキやらドラムやらを典明がロッキンかつグルーヴィな演奏でもって聴かせてくれるアルバム、というわけでもないのです。
「加納典明が選ぶロック名曲コンピレーション」
ようするにまあ、そんな感じなのですが、厳密に言えばそれともちょっと違います。
収録されているのは、レッド・ツェッペリン「胸いっぱいの愛を」、ザ・フー「マイ・ジェネレーション」、ディープ・パープル「紫の炎」、クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」など、いずれもロック史に燦然と輝く名曲群。
こう書くと、
「なんだよ。やっぱり、初心者向けに有名人が監修したみたいな、よくあるコンピ盤じゃねえか」
だのといった文句が聞こえてきそうですが、それだったらどんなに良かったことか……。
なにしろ、「マイ・ジェネレーション」も「ボヘミアン・ラプソディ」も、「本物」ではなくスタジオ・ミュージシャン、いわば「ニセモノ」の手によって演奏された代物なのだから、これはたまりません。
しかもあろうことか、どの曲にもヴォーカルが一切入ってない!
そう、つまり、ここに収められているのは文字通り、「単なるカラオケ」というわけなのです。
という感じで、ここに来てようやく我々はテンメイに一杯食わされたと気づくというか、
「というか、これは詐欺なのでは…?」
と感ずるわけです。
こんな代物を聴かされて、俺はいったいどうすればいいのか――気づけば途方に暮れるばかりの毎日。
「まあ、歌えや」
あるいはテンメイ曰く、そういうことなのかもしれません。
というか、よく見たら「パープル、ツェッペリンからガンズまで究極の洋楽カラオケ、CDで炸裂!!」だのとCD付属の帯に書いてあるわけで、どう考えてもそうに決まっています。
でも、歌えってテンメイに言われてもねえ……。
そんなこんなの顛末ですが、ともあれはっきりいって、んなこたぁどうでもよく、本作の一番の問題はじつのところ、ジャケットに写るテンメイの髪型なんじゃねえか、と個人的には思うわけです。
いや、ありえないでしょ、これは! 鶏じゃないんだから!