映画『ダンガン教師』‐『スクールウォーズ』を超える熱血学園活劇作品の決定版‐

今回取り上げる映画は、大仁田厚第一回主演作品『ダンガン教師』です。

 

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読んで字のごとく、国会議員を経て現役プロレスラーとして今も活躍中の大仁田厚が「涙のカリスマ」として一部の若者やマスコミから脚光を浴びていた当時に記念すべき初主演を果たした学園ものムービーなのですが、これがもうドラマ版『スクールウォーズ』に匹敵する、熱血教師による愛と信頼をあますところなくドラマ化した一大物語となっています。

では、早速ストーリーを紹介致しましょう。

まず劇が始まって冒頭、どう若く見積もっても20代後半にしか見えない女子高生役の婦女子によるパンチラサービスカットが炸裂し、当方を含む男性視聴者諸君の性欲中枢をビンビンに刺激、こちらの期待感を否が応にも高めます。

続いてよれよれのジャケット、カーキ色のハット、グラサン、寅さん風ボストンバッグ、ちぢれ気味の汚らしい後ろ髪をゴムで結わった往年の志村けんを彷彿とさせるヘアスタイルの主役・大仁田が見参。

と、ここでいきなり謎のチンピラ軍団が大仁田を襲撃してきて大乱闘に。この謎のチンピラ軍団が後々になって大事件を起こすのですが、とりあえずここは本業よろしく大仁田必殺の凶器攻撃であっという間に成敗します。

で、そんなことはどうでもよく、大乱闘もどこ吹く風で至って涼しい顔の大仁田は、一部始終を見守っていた先ほどのパンチラ女子高生にある学校の場所を尋ねます。そして無事目的地の学校に到着すると、校庭内に建てられているプレハブ小屋へ突入。プレハブ内には、ギターをいじったり、髪を梳かしたり、寝っ転がったりのやさぐれ生徒達が揃いも揃っているのですが、そんなこともおかまいなしの大仁田は「犬神弾丸」と毛筆で豪快に書かれた掛け軸を広げ、

「今日からこのクラスの担任になった犬神弾丸じゃあ!」

と強烈このうえない自己紹介をします。

が、生徒達は皆揃って無視。それでもムキになってしつこく自己紹介をする大仁田に折れようやく口を開いた生徒からは「先生なんかいらないんだよ!」と、つれない返事をされる始末。そう、この荒廃寸前の私立上等高校で貴重な青春を無為に過ごす生徒達の前に現れたのが、この大仁田扮する熱血新任教師・犬神弾丸だったのです。

で、そんなことはどうでもよく、ここで場面が切り替わり、いきなり弾丸と水商売風婦女子によるトイレでのセックスシーンになるのですが、申し訳程度の灰ボカシが入っているものの明らかに擬似本番でガッカリしてしまいます。しかしながら、そんな大人の諸事情はどうでもいいことらしく、どうやら仕事終わりにキャバクラへ遊びに来たついでにトイレでキャバクラ嬢とヤっちゃった弾丸という筋書きで、教師としてあるまじき行為に当然ながら善良なる視聴者としては大いなる疑問が持ち上がってきます。

で、とろろ汁的なモノを気持ちよく放出し終えて店内に戻ってくる弾丸なのですが、少しは反省するのかと思いきや、強引に引き連れてきた同僚の冴えないへっぽこ教師に向かって

「ねえちゃん(キャバクラ嬢)のチチ、触ってもよかぞ」

と、意味不明の衝撃発言をします。

当然聖職者として拒否するへっぽこ教師なのですが、弾丸は

「ねえちゃんのオッパイも触ったことなかヤツにガキに語る資格はなかあ!」

と、金八先生も裸足で逃げ出す超絶理論をぶちカマし、その勢いでへっぽこ教師を突き飛ばします。そして何を思ったか、店内にいるキャバクラ嬢の衣服を剥ぎ取り

「オッパイじゃあ! ケツじゃあ!」

と触りまくり&暴れまくり状態になります。

このあまりの混沌とした展開ぶりにビックリ仰天したのは言うまでもないですが、しかしよくよく考えると、たしかに女子とのお付き合いが未熟な教師が生徒に愛の大切さを教えることなど到底出来るはずもなく、その正論極まるダンガン流熱血理論に激しく脱帽する次第です。

で、そんなことはやはりどうでもよく、続いて、両親が死んだため生活費がなく荒れ放題の女子生徒を先ほどのキャバクラへ無理やり連れていって働かせたり、軟弱なクラスメートをパシリに使っている不良生徒をふんづかまえて無理やりヤクザと闘わせたり、

「『ヤりたい』っつうのは究極の愛の告白なんじゃあ!」

と、男子生徒に教え込み意中の女子生徒の前で無理やりコクらせたりと、弾丸の愛の熱血講義が矢継ぎ早に繰り広げられ、反発していた生徒や教師達も弾丸に共鳴していくという微笑ましい流れとなるのですが、前のカットでムチャクチャな弾丸の行動に反発していた生徒や先生達が次のカットになるやいきなり

「弾丸先生サイコー!」

などと、登場人物の心の葛藤が一切描かれずすぐさま改心という強引すぎる展開に、善良なる視聴者として当然納得できなかったりします。

しかしながらやはりよく考えると、常識に囚われない行動で無気力生徒たちをスピーディに更生させていく万能教師・弾丸という図式となっているのに気付き、見ているこちらもいつのまにかダンガン流・愛の課外授業に感化されていく次第です。

そんな中、突如として場面は切り替わり、屋台のラーメン屋でクダを巻く弾丸のシーンへワープ。そして、何を思ったか弾丸、

「やっぱ教師はむいとらんのぉ…」

と屋台のオヤジに驚愕の愚痴をこぼします。

ここまで悩む素振りなどまったく見せず、散々やりたい放題やってきたうえになんら苦労もせず様々な問題を解決してきた弾丸だったので、揺るぎない信念や確信を持って行動しているのは間違いないだろうなと思っていた矢先にいきなりこんな発言を聞かされるとは……予想だにしなかった展開にだいぶ頭が混乱します。

「ひょっとして、この映画を撮っている監督は、極度の分裂症に侵されていたのでは…?」

と思ったりもしたのですが、やはり弾丸もかよわい一人の人間、人知れず悩んでいたのであろう弾丸の人間性が浮き彫りになるという監督の含蓄あふれる構成力に気付き、見ているこちらとしてはもはやグウの音も出ない状態に陥ります。

で、そんなようなことはやはりどうでもよく、めでたいことにこの辺りでようやく物語も終盤にさしかかるのですが、大事件が勃発してしまいます。

物語の冒頭に登場した、弾丸と大乱闘を繰り広げた謎のチンピラ軍団をみなさまも覚えてらっしゃると思いますが、弾丸不在の学校にそいつらがやってきて生徒の一人を拳銃で発砲、瀕死の重症を負わせてしまうのです。

そして、ここで今まで謎だった弾丸の素性がついに判明。

なんと弾丸は、えーっとアフリカ…? だったか、まあ、とにかくそこいらへんの戦場地帯を生き抜いてきた元傭兵で、いつもつまらなそうに生きている生徒達に生きる意味を教え込むため学校へと配属された人物だったのです! そして、先ほどのチンピラ軍団はなんと弾丸の元傭兵仲間達で、傭兵時代での死の淵ぎりぎりの非日常体験が一般社会に戻ってきても忘れられず、弾丸とさらには生徒達を道づれに殺し合いをしてその興奮を再び得ようとする極悪非道集団だったのです!

このアンビバレント極まりない展開に唖然とするしかないこちらの心境を一切無視し、とんだとばっちりを受けているのにもかかわらずなぜか警察を呼ぼうともせず深夜の学校に集まり弾丸の助けを待つ生徒達、弾丸だけならまだなんとなく理解できるもののなぜか校内にいる生徒達を追い詰める元傭兵軍団、早く助けに行けばいいものをなぜかわざわざいったん自宅へ帰りアーミースタイルに変装してから生徒達が待つ学校へと向かう弾丸。ついに物語は大感動のクライマックスへ……。

と、続きは各自ご覧になっていただくとして、この凄まじすぎる内容に衝撃を受けた私は、ビデオを観終わってからしばらく何もする気が起きなくなるほどでした。本作こそはドラマ版『スクールウォーズ』さえをも凌ぐ、熱血学園活劇の決定版と言っても過言ではありません。

大変長々にして稚拙きわまりない駄文となってしまいましたので、果たしてこの素晴らしさがしかりと伝わっているか心配ではありますが、そんな中、朗報が飛び込んでまいりました。なんと本作『ダンガン教師』、現在アマゾンで1円という格安の値段(※送料別)で販売されています。本当に良かったですね。

 

ダンガン教師 [VHS]

ダンガン教師 [VHS]

 

 

当然DVD化はされておらずVHSのみの販売となっておりますので、ひさしぶりにビデオデッキ取り出して昭和の気分を味わうのもまた一興かも。「1円出すのも惜しい」という人がほとんどかもしれませんが、人生でもっとも無駄な1時間29分を過ごせると思えば安いものだと思います。

 

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