フジロックやサマーソニックなど、音楽好きとしてこれまでにいくつかのフェスを観覧しに行ったことがあるが、ここ数年はずっとご無沙汰だった私なのである。
なぜか。
ぶっちゃけ、以前のように
「よっしゃ、今年はフェスを観に行くぞ!」
という気力がどうにも沸かなかったからだ。
あとは体力的な面で不安というのもある。
まあ、フェス当日はまだいい。
問題はフェス後の翌日から数日にかけてで、非日常的かつ刺激的な日々から一気に現実に戻された際に生じるメンタル&体力面の消耗度といったらハンパないものがある。「フェス観に行った人あるある」として、体験者なら誰しもが頷いていただけることだろう。
以前ならまだなんとか耐えられたが、いまやいい歳したおっさんになってしまった私がはたしてこのような状況に抗えるのかどうか。
無理だろう。
たぶん干からびる。
というか、端的に言って行くのがめんどくさい。
そんな折、ファンである小島麻由美の公式ホームページを眺めてたら、
「9月24日に『空飛ぶ音楽祭』という音楽フェスにてライブを行う」
的な文言を発見。
どうやら、さいたまに所在する「所沢航空記念公園」というところで行われる音楽フェスとのことで、今回が初の開催らしい。
ほかの参加ミュージシャンのメンツを確認してみたら、ほとんどが知らない人たちばかりで、知っている人もいるにはいるが音源は聴いたことはなく、またメジャー・マイナーでいったら確実にマイナーな地位に属するであろう方々ばかりである。
これはあきらかにゆるそうなフェスだ。埼玉はちと遠いが、休日だし家の中でぼーっとしているよりためしに行ってみるのもいいのではないか。
というわけで行ってきた。
小島麻由美のライブは昼の12時35分から行われるということなので、少し余裕をもって11時半近くに現地に到着。
単刀直入に言ってしまえば、バカでかい公園という感じである。
入園の際チケットの確認を求められなかったので不思議に思ったが、よく考えたら公園なので誰でも入園可能ということなのだろう。その証拠に、犬を連れて散歩をしている人や子供連れの家族やフツーに自転車に乗ってるおっさんやおばはんなどをやたらと見かける。
あとからわかったが、小島麻由美が出演する野外ステージと彩翔亭という屋内ステージへ入場する際だけ入り口にいる係員にチケットを見せればいいらしい。
いずれにしても、じつにゆるい雰囲気がとてもいい塩梅だ。
ひとまず園内にある航空発祥記念館なる建物内のトイレで用を足した後、軽くだらだらしながら目的の野外ステージを目指す。
フジロックやサマソニなどと同様に、たくさんの屋台が並んでいた。はじめて来たのでよくわからんが、普段から休日などでは催し物が開催されていて、屋台もおなじように並んでいるのだろうか。
12時ちょい過ぎ、野外ステージに到着。グッドラックヘイワという男性ふたりのグループがちょうど演奏を終わろうとしていたところだった(※ほとんど聴けなかったので感想はなし)。
野外ステージは日比谷の野音を少々こぢんまりとさせたような作りといったらいいだろうか。
あいにく写真を撮り忘れてしまったので、とりあえずそんな感じということで想像していただきたい。想像して妊娠していただきたい。わけがわからない。
開演時間が近づいていく中、サウンドチェックをするためギターの塚本功、ウッドベースの長山雄治、フルートの国吉清治、ドラムのASA-CHANGらお馴染みのバンドメンバーが登場。しばらくした後、小島麻由美もやってきて「セシルカットブルース」を演奏しながらみんなして音合わせ。
「(外に)一回出る? いいよね~、このまま始めちゃって」
とかなんとか小島麻由美が言ってそのまま開演と相成った。
オープニングは「泡になった恋」。
その後も、「ロックステディガール」「赤い帽子」「結婚相談所」といったライブでお馴染みの楽曲が披露されてゆく。
いやあ、素晴らしい。塚本氏、長山氏、国吉氏という鉄壁のラインナップに加え最近になってまた小島バンドにちょくちょく参加するようになったASA-CHANGの正確無比かつパワフルなドラムも相変わらず良いし、なにより小島麻由美の声のコンディションもたいへんよろしい。
以下、セットリスト。
1.セシルカットブルース(サウンドチェック )
2.泡になった恋
3.ロックステディガール
4.赤い帽子
5.結婚相談所
6.パレード
7.蜜蜂
8.ハートに火をつけて
9.ポルターガイスト
30分程度の短いパフォーマンス、かつ、ライブの最中、数人のガキどもが、もとい、プリティなお子様たちがステージの目の前を何度も横切ったため若干集中できない部分もなくはなかったが、まあ、満足した。
ライブ終了後、航空発祥記念館へ戻り館内にあるレストランで遅めの昼食。ポテトとコーラ、さらに「ところっけバーガー」なるものを食す。
「さて、腹も膨れたことだしどうしようか」
と思案してたら、ほんの数メートル先にある「SORA STAGE」で誰か演奏しているらしいので観に行ってみた。
どうやら斉藤慶という人らしい。モジャモジャ頭の青年で、バッグバンドを従えて演奏していた。爽やかなポップロックという感じで、メロディもなかなかにキャッチー。
この「SORA STAGE」に関してはチケットがない人でも観覧OKなようで、公園内を散歩しにやってきていたのだろう人たちが物珍しそうに眺めてたと思ったら少しして散歩の続きをしに去って行く。
いやあ、ゆるいなあ。
ライブ終了後、そのまま地べたに座ってまったりしつつタイムテーブルを眺めていたら、「魔の一族」なる否が応にも気になる名前のバンドが続いて登場することを知る。しばらくした後、「魔の一族」登場……と思ったら「鹿の一族」でした。
ヴォーカル&ギターは松崎ナオ。おお、懐かしい。って、いや、まともに曲を聴いたことはないが、一時期音楽雑誌とかでプッシュされていたのを思い出す。どうやら最近になってこの鹿の一族なるバンドをはじめたらしい。
なるほど。繊細さと荒っぽさが同居したような歌声がなんとも個性的かつ魅力的である。サウンド的にオルタナっぽい匂いが感じられるのも個人的にナイスな感じだ。
良かった。帰ったらYouTubeでチェックしてみよう。
鹿の一族、撤収。その後、すぐさまハンサム判治なる人が登場。
やけに準備が早いなと思ったら、これがウクレレの弾き語りであって、「上を向いて歩こう」を高らかに歌い上げておられる。「ハンサム」とは名ばかりのやたらと大柄な体躯をしておられる方で、観覧していたお子様をステージに上げて一緒に演奏したりして、ゆるい空気がますますゆるくなってゆく。
うん。こういうフェスもいい。
3曲ほど聴いたところで彩翔亭なるステージへ移動開始。
普段はお食事処用の庭園として使用しているのだろうか。
目の前にある池では鯉が泳いでいた。
入り口……というか玄関前にいる係員にチケットを見せ中に入る。
中は趣が感じられる和室で20畳程度の広さだろうか。ご年配のお客さんがけっこうおられる。
そして石川浩司・オン・ステージ。そう、「たまのランニングの人」である。
3曲ばかし聴いたところで退出。
すいません、私の趣味には合いませんでした。
でも、なんだかいい人そうだった。ご年配の人に好かれるのもそういうことなのだろう。
再び 「SORA STAGE」へ戻りIndus&Rocksなる男性トリオバンドの演奏を鑑賞。
チラシのバンド紹介欄を確認すると、
「変態お洒落さわやかサイケデリックジャーマンポップロックJAMバンド」
とあり、わけがわからなかったが、じっさい耳にした感想としては、リフレイン中心の演奏で、テクノ/ダンスミュージックを人力で音像化したような感じといったらいいのだろうか。ともかく、クールな感触と熱っぽさが同居したようなサウンドが冷たくなってきた風と相俟って身体に心地よく響いた。
これにて帰宅。
というわけで、はじめての「空飛ぶ音楽祭」は概ね満足できました。
チケット代は4000円と安価だったし、ステージ間の移動はそんなにきつくもなく、屋台の値段もバカ高いもんでもなかったし、なによりゆるい空気がとても良かった。
今後も開催されるとして改善してほしい点を挙げるなら、演者の演奏時間をもう少し長めに取っていただきたい、というところだろうか。何卒よろしくお願いいたします。