とある街の薬局に以下のような張り紙が貼られていて驚いた。
一体、どういうことなのだろう。
いや。
うんこだよ。うんこである。
もちろん、そんなことはわかっている。
まあ、おそらく店内で販売されている、便秘を解消させる効果のある良薬をわかりやすく宣伝するため件の薬局のご主人がデッサンし、このような顛末になったのだろうことは容易に想像できるところだし、うんこを擬人化させ、それを絵にして描くこと自体、じつにありふれた行為だ。なんら珍しいことではない。
ましてや、この擬人化されたうんこが、ご主人によって「うんこ君」と命名されているだろうことも、火を見るよりもあきらかである。
そうではなく、なぜ、いまの時代に、ここまで単純な「うんこ君」が描かれているのだろう、ということである。
ここで、うんこ君の歩みと歴史についてあらためて振り返ってみたい。
この絵は、前出した薬屋のご主人が描いたのだろう、うんこ君を、筆者(私)が忠実に再現(若干アレンジあり)したものである。
このうんこ君がいわば初代であり、かつての縄文時代、人類の手によってはじめて擬人画化されたうんこであると言い伝えられているのはいまさら説明するまでもないだろう。うんこ君「黎明期」である。
が、人々はこれで満足しなかった。もっとうんこ君にふさわしいスタイルがあるはずだ。そう人々は強く感じたのだ。そこに誕生したのが、このスタイルである。
いかがだろう。
手足が身につき、より人間らしくなったさまを見て、人々は息を飲んだ。そして、以下のごとく呟いたという。
「か……可愛い」
事実、現代に生きる我々にとって、このうんこ君こそが、もっとも慣れ親しんだポピュラーなスタイルであると言えよう。「ゆるキャラ」の元祖であると申しても言い過ぎではあるまい。
時は鎌倉。そこには表現を拡大し、自己主張を始めたうんこ君がいたのだ。うんこ君「創造期」である。
その後もうんこ君の表現は過熱してゆくばかりだった。まず流行ったのが、以下のような、
この、つっぱり風で文字どおり「うんこ座り」をする「やさぐれうんこ君」である。
が、これはあまりにも安直なスタイルであったためか、すぐに飽きられてしまったのだった。そして代わりに登場したのが、
いわゆる、この「スーパーうんこマン君」であり、しばらくの間はこれがうんこ君の究極形ととらえられていたのである。
が、なおもうんこ君の勢いはとどまることを知らず、「ロボうんこ君」「はぐれうんこ君」「みなしごうんこ君」「ミラクルうんこ王子」等、日々斬新なスタイルへとすさまじい勢いで進化してゆくのだった。うんこ君「変革/プログレ期」である。
ところが、そんなうんこ君も限界という波には逆らえなかった。
「続・うんこ君」
↓
「新・うんこ君」
↓
「うんこ君・征服」
↓
「最後のうんこ君」
↓
「the end of genesis T.M.R. evolution turbo type うんこ君」
↓
「クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング&うんこ君」
↓
「エマーソン・レイク・アンド・パーマー・アンドうんこ君」
……と、その後も新たなスタイルが創造・模索されはしたが、それらすべてはもはやうんこ君の原型をとどめておらず、そのスタイルが動脈硬化の一途を辿っていることは誰の目にもあきらかだったのだ。
ところが、そんな古い様式に唾を吐きかける者たちが出てきたのである。
そう。「初代うんこ君」に戻ったのである。
たしかに一見すると原点回帰しただけの安直このうえないスタイルである。
しかしながらそれは、本来うんこ君が秘めている魅力をもっともわかりやすく、かつ、パワフルに提示して見せるスタイルとして、「初代うんこ君」をリアルタイムで体験できなかった若者たちの間に急速に浸透してゆく。彼らにとってこの「初代うんこ君」は、きわめて新鮮なスタイルであるのと同時に、凝り固まった思想に対しての言わば反旗の狼煙だったのだ。
時は昭和。うんこ君「パンク期」である。
その後も「うんこ君」はアートとしての表現行為と商業主義という二律背反の狭間で揺れ動きつつも、80年代当時もっとも先端であったデジタル・テクノロジーの洗礼を受けた「テクノうんこ君」、うんこ君のブルータルな魅力に焦点を当てた「ハードコアうんこ君」(90年代)等、そのスタイルは着実に進化・深化してゆくかに思われたのでございます。黒柳徹子でございます。
しかしながら、なのである。
おそらくは、うんこ君原理主義思想の残党たちにとって、それこそが気に食わなかったのだろう。うんこ君にはもっとふさわしい姿があるのではないか――。うんこ君原理主義者たちのこうした働きかけによって、一般の人々のあいだにもいま一度軌道修正を図るべきとの声が高まっていった、ということなのだろう。
そうなのだ。またしても原点に戻ったのである。つまり、薬局のご主人が描いたのが、まさにこのスタイルだったのだ。
時は平成27年現在、うんこ君「ネオ・パンク期」ーー。
つまりは、そういうことである。
これから先、うんこ君は果たしてどこへ向かってゆくのだろうか。むろん、私のような凡人には想像もつかないことであり、まさに神のみぞ知る、である。
ともあれ、これからもうんこ君の歩みに目が離せないのは間違いないことだ。今後も私は、うんこ君の進化・深化の過程を追ってレポートしてゆくつもりであるので、ぜひ楽しみにしてくださりますれば幸いである。クソみたいな記事で本当にすみませんでした。