ライブ(とくに海外ミュージシャンの場合)は少しでも気になったら観に行くべき、という話

ロックを中心に音楽は洋楽・邦楽問わずまんべんなく聴いているつもりだ。

「洋楽聴いている俺、カッコいい」

などと悦に入る、なんてのは、洋楽リスナーなら誰しもが経験したことがあるだろうし、私自身、洋楽聴き始めの若い頃には、そんなふうに得意げな気持ちになったりしていた。あー恥ずかしい。

私は90年代のいわゆるブリット・ポップ・ムーヴメントをきっかけに洋楽を聴くようになったが、だからといって「ブリット・ポップこそ最高」というつもりはない。60年代の洋楽ロックをことさら信奉するつもりもないし、「日本のアンダーグラウンド・ロックこそ至高」だのとも思っていない。

自分の中で洋楽と邦楽に優劣なんてない。

たまたま好きになったのがアメリカやイギリスのミュージシャンだったり、日本のそれだったりしただけだ。

「だったら、アゼルバイジャン赤道ギニアのミュージシャンはどうなんだ」

という人がいるかもしれないが、アゼルバイジャン赤道ギニアのミュージシャンをよく知らず、またそれらの音楽を耳にする機会がないだけで、もちろん自分の好きなミュージシャンとアゼルバイジャン赤道ギニアのミュージシャンとのあいだに、優劣をつけるつもりはない。むしろ、アゼルバイジャン赤道ギニアのおすすめのミュージシャンがいたら教えて欲しいくらいだ。

が、ライブ。

これがしかし、ライブを観覧しに行く場合、海外のミュージシャンと国内のそれでは、私の中で絶対的に心構えが違ってくる。

私は、海外のミュージシャンのライブを観に行くときの方が断然、テンションが高い。気合のノリが違う。

国内のミュージシャンは、まあ、ふつうに活動しているのであれば、ライブは基本的にいつでも観に行ける。私の場合、好きなミュージシャンはどちらかといえばマイナーな地位に属する人が多いので、チケットも容易に取ることが出来る。ツアーが開催されれば、ほぼ100パーセント都内で一度はライブが行われるので、金と時間に余裕があるかぎり、行こうと思えば全然行ける。

翻って海外のミュージシャンはどうかというと、来日するのは「2・3年に一度」というのが一般的である。奴らの地元であるアメリカやイギリスでのライブを観に行くようなガッツはないので、必然的に長期間、次回の来日公演を待つことになる。

で、長い期間空くことになるので、当然ミュージシャンにも色々なことが起こったりする。

バンドの場合、問題は「突然解散する」ということである。

「今回の来日公演はパスで、また次に来たときに観に行けばいいや」

なんて悠長に構えていたら突然バンドが解散してしまい、

「あー……2年前のあんときの来日が最後だったのか。行っときゃよかった……」

なんてのは、数ある「洋楽あるある」の中のトピックのひとつである。

解散まではいかなくても、バンドの誰かが突然脱退、なんていう事態も往々にして起こりうることだ。

私は、英ロック・バンド、ブラーのライブを「いつか観られるだろう」と悠長に構えていたら、突然ギタリストのグレアム・コクソンが脱退してしまい、その間、グレアム抜きでのライブは観ることは出来たが、気づいたらオリジナル・メンバーが揃ったブラーを観ることができたのが「ファンになってから19年後」になってしまった。

19年である。

19年つったら、赤ん坊だったのが下の毛も生え揃ってあんなことやこんなこともすでに済ましている年頃であり、ともかくまー19年は長かった。

あと外人の場合、クスリの問題もある。

「次来たとき観よう」

なんて思っていたら、気づいたらドラッグを乱用して死んでた。

なんてことにもなりかねない。

というような様々な理由で、海外ミュージシャンのライブは、一期一会感が強いというか、とにかくその場にかける思いがより強いのだ。

ナイン・インチ・ネイルズ(以下、NIN)は、心の内にあるネガティブな心象風景を、重苦しくも破壊的なサウンドで表現し、一躍スターダムに上り詰めた米国のロック・バンドである。バンドの中心人物は(というか、ほとんどソロ・ユニットだが)、トレント・レズナーである。

NINのアルバムでは、94年にリリースされた『ダウンワード・スパイラル』が好きだ。

 

Downward Spiral (W/CD) (Hybr) (Ms) (Dlx)

 

苛烈なバンド演奏とデジタル楽器を駆使した凄まじくノイジーな音圧、病的と思えるほどに細部まで綿密に作りこまれた作品性に衝撃を受けた。

「いつかライブを観に行こう」

そう思っていたが、なかなかタイミングが合わなかった。

結局、NINのライブをはじめて観に行くことになったのは、『ダウンワード~』リリースから13年後の2007年の5月、場所は新木場スタジオコーストであった。

はたしてライブでは、ヘヴィで破壊的な演奏、重苦しい心象風景を投影したサウンドが展開され、

「さすがトレント! 『暗黒王子』と呼ばれてるだけあるなー」

となるかと思いきや、どうも様子が違った。

いや、たしかにほとんど想像していた通りのハードかつノイジーなNINの生サウンドであることは間違いなかったのだが、同時になんだか妙にカラッとしたポジティブな雰囲気が感じられる演奏であり、ともかくなんだか全体的にスッキリとしているのである。

第一、トレント・レズナーの見た目が全然違っていた。

いつのまにか坊主頭になっている。そのうえ、身体もなぜかムキムキのマッチョマンになっているではないか。

おかしい。髪はロン毛だったし、身体だってもっと痩せてたはずだ。なんでこんな健康的な感じになってるんだ。わけがわからない。

ライブの中盤、MCの場面では、突如、客席からバースデーソングの合唱が沸き起こり照れた様子を見せるトレント。どうやら前日がトレントの誕生日だったらしい。時折笑顔も見せつつ、バンドとともに熱いパフォーマンスを披露するトレントは、「暗黒王子」というよりは「気のいいアニキ」といった風情さえ感じさせ、もはや私にはトレントが「長渕」にしか見えなくなってしまった。

「気づいたら、『暗黒王子』が『長渕』になっていた」

 そういうこともあったりする。

……なので、「ライブ、とくに洋楽ミュージシャンの来日公演は、ちょっとでも気になったら絶対に足を運ぼう。のちのち後悔しないために」というお話でした。