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占い師にとって、もっとも重要なものとはなにか

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「占い師にとって、もっとも重要なものはなにか」

と問われたら、大抵の人は「占う能力」と当然のように答えるだろう。

たしかにその答えも間違ってはいないだろうが、あるひとつの「根本的な問題」が見落とされているのもまた事実だ。それは私自身の実体験を元に断言できる。

その日、私は都内某所で友人と待ち合わせをしていた。待ち合わせ場所で友人の到着を待っていると、携帯電話のベルが鳴った。掛けてきたのはその友人だった。どうも約束の時間よりかなり遅れてしまう、ということだった。

とりあえず待つことにしたものの、いきなり空いた時間が出来てしまい、どうしたらいいかわからない。困った。暇だ。そのとき私は、いまさっき通ってきた道で目撃した光景をふいに思い出していた。

というのもじつは、先ほど通り過ぎた場所に3人の占い師が露店を出していたからだ。といっても、基本的に私は占いというものを信じているわけではなく、むしろ、ただの人生相談じゃないかと馬鹿にしているところさえある。だからこそ、はじめて見てもらうのにちょうどいい機会だと思ったのだ。

早速、通って来た道を引き返してみると、先ほど見かけたときとおなじようにやはり占い師が3人、横一列に等間隔で並んだ状態で、それぞれが椅子に腰掛けていた。右端にいるのが「40歳くらいのおばはん」で、真ん中には「初老の男」、そして左端にいるのが「20代後半から30代前半と見られる女」である。

私は迷わず「20代後半から30代前半の女」を選んだ。

この女のところだけが客が入っておらず並ばなくてすむと思ったからだが、一番の理由は「私が男だから」だ。

で、占い師の若い女は簡易テントの中に椅子を組み立て腰掛けており、どうやらこの中で占いが行われるようだった。

私は若い女占い師のほうへ恐る恐る歩み寄り、声をかけた。

「あの~、すいません。占ってほしいんですけど…」
「あ、はい。30分で3千円になります」

はっきりとは覚えてないが、たしかそれくらいの値段だったと思う。

「じゃあ、中に入ってください」

金を支払い、簡易テントの中に招かれる。

そして女は言った。

「では、手相を見るので手のひらを広げてください」

そのとき、私の体に稲妻が走った。

「くっせええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

のだ。

なにが?

「息が」だ。女の口臭が、もうとにかく、どえらいことになっていたのだ。

「えっ?! ……うんこが主食?」

というほどの激臭であり、これ以上文章化するのはおそらく不可能であろう、と思えるほどの凄まじさなのである。

「臭いですよ! 息!」

というセリフが喉元まで出かかったが、そこはぐっとこらえた。さすがにそこまでストレートに言ってしまうのは失礼だからだ。

「や、もうわかったんで、結構です」

というセリフも出かかったが、これにしたってなにが「もうわかったんで」なのか自分でもよくわからないし、第一、3千円も払っているのだ。とにかくもう、後には引けなかった。

女からは

「30歳になったらグンと運気がアップしますね」

「10歳以上年の離れた若い奥さまと結婚しますね」

「80まで生きます」

というような「いいこと」を矢継ぎ早に言われたが、しかしはっきりいってそんなことはどうでもよかった。

なにしろ、臭いからだ。

細木某や江原某らがその道の大御所としてかつてマスコミに大きく取り上げられていたのは、「占う能力を評価されていた」というのが当然あっただろうが、同時に、「息が臭くなかったから」というのも理由としてあったに違いない。

だって息が臭ければ、いくらいいことを言われてもまた見てもらいたいとは思わないからだ。