おじいちゃんは「わし」や「○○じゃ」や「○○だのう」とは言わない(たぶん)

私はこれまでに街中で何度か力士を見かけたことがある。

なぜその人物が力士であるのかがわかったのかというと、「やけに太っていたから」というわけではない。

いや、たいていの力士が太っているのはもちろんだ。むしろ太ってなければ力士は務まらないと言っていいだろう。

とはいえ、太った人間なんていくらだっている。私がその人物を一目見て力士だとわかったのは、頭にちょんまげを結っていて、浴衣を着ていたからである。

 

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なんでも相撲界には「外出時には着物を着なければならない」という伝統があるとのことだが、必ずしも強制されているわけではないらしい。

ごくごくプライベートな時間、たとえば女性とデートをするときだ。そんなときにちょんまげ姿で浴衣なんて着ていたら一発で力士だとばれてしまうだろう。有名な力士ならなおさらである。

だから、頭には野球帽、アロハシャツにジーパン姿でデートをする力士だっているに違いないが、私はどうも想像したくないのだ。

やはり力士は髷を結ってて浴衣を着ていてほしい。それでこそ力士だからだ。

とはいえ、こういう「○○は○○じゃなければならない」みたいな考えは、ある種の危険な思想にも繋がってしまうだろう。

おなじ力士を例に話をしてみよう。

私たちは力士に対してこんな決めつけをしていないだろうか。

「力士は“ごっつあんです”と言う」

言わねえよ。

私は力士とじっさいに会話をしたことがないのでよく知らないが、たぶん言わないはずだ。

また、よく知られているように、おじいちゃんは自分のことを「わし」とは言わないし、会話の語尾に「○○じゃ」だの「○○だのう」とも付けない。

私自身、いまだかつてそんな言葉遣いをするおじいちゃんに出会ったことはないし、

「そんなじーさんいねえよ!」

と声を大にして断言できる。

広島や岡山など、上のごとき言葉遣いを方言として使用している地域においてはその限りではないのかもしれないが、それにしたって全国的に見ればごくごく少数だろう。

あるいは、私が子供だったころ、以下の誤った情報が流布していた。

「野球のキャッチャーとサッカーのゴールキーパーはデブでなければならない」

そういう時代がたしかにあったのだ。

友達みんなで集まって「野球やろうぜ」という話になるとキャッチャーに指名されるのは大概デブであり、あるいは「今日はサッカーをやろうぜ」となった場合、キーパーを任されるのは決まってデブだったのである。

とうのデブにとっては受難の時代だったろうが、これは漫画の影響に違いない。

おそらく野球のキャッチャーは『ドカベン』、そしてサッカーはおそらく『キャプテン翼』に登場する中西というデブのゴールキーパーのせいである。

もちろんリアルなドカベンとして活躍した香川伸行選手など、例外も存在するが、じっさいの野球やサッカーの試合をごらんになればおわかりのとおり、太ったキャッチャーやゴールキーパーはまずいない。

数年前、ダイバーシティ東京プラザがオープンして間もないころのことだった。たまたま近くの場所へ行く用事があったので、帰りになんとなく寄ってみることにした。

施設の中に入ってみるととくに興味を惹かれるようなテナントはなく、私はあてどなく通路をぶらぶらしていた。

そのとき、私は見たのだ。

「肩にセーターをかけ、袖の部分を胸のあたりで結んだ格好でカメラクルーに向かって偉そうに指示を出すテレビマン」だ。

 

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「漫画のキャラかよ!」

心の中で突っ込んだが、それでこそテレビ局の中の人だと、私はなんだか笑ってしまったのだった。