『スターリングラード』は第二次世界大戦中に実在したソ連の若きスナイパーを描いた作品とのことである。
で、その主人公のソ連人スナイパーを演じているのがジュード・ロウなのだが、なにしろ彼がとてもかっこよい。とにかく痺れるような活躍を見せてくれる。さらに敵対国ドイツ側のスナイパーを演じているエド・ハリスも渋くて良い。おまけにレイチェル・ワイズがぷりぷりの尻を見せてくれる。もうものすごく良い。
基本的に上記ふたりの凄腕スナイパーによる手に汗握るバチバチの対決をメインに据えた物語であって、主要キャラが片手で数えられる程度しか出てこないのも良い。
戦争の歴史に関してほとんど無知であり、かつまた、戦争映画となると大概たくさんの人物が登場してくるため、
「で、この人、なにやってる人だっけ…?」
と、常に混乱してしまいがちな私である。
なので、この『スターリングラード』のシンプルでわかりやすい構成はもうありがたいと言うしかない。そして、レイチェル・ワイズがぷりぷりの桃尻を拝ませてくれる。もうほんとうにありがたいと言うしかない。
しかし、じつのところ、これらよりも私の心に妙に印象に残ったのが「ロン・パールマン」なのだった。
「ロン・パールマンって誰?」
という人がおそらく大半なのではないか。
ウィキペディアで調べてみたら主演作もあるとのことだが、けっしてメジャーな俳優とは言えないはずだ。
仮にロン・パールマンから突然電話がかかってきて「どうも! ロン・パールマンです!」と言われても、大方の人間は「はぁ? どなたさんでしたっけ?」と困惑するであろう。
だが、洋画鑑賞をある程度嗜んでいる人ならば、彼の顔を見た瞬間、「あっ! このおじさん、見たことある!」となるだろう。なるはずだ。なぜなら、一度目にしたら絶対に忘れることはないであろう、すこぶる脂ギッシュで強烈この上ない顔面を持つおじさんだからだ。こんなおもしろい顔をした人はなかなかいない。
で、そのロンおじさんは、かつてエド・ハリスから狙撃の訓練を受けたことがあるという、あきらかに有能そうなソ連兵として登場する。そして、ジュード・ロウとコンビを組むことになる。見た目が強烈であることに加え、態度もものすごくエラソーだ。狙撃の名手としてお国で英雄扱いされているジュード・ロウに対しても容赦なくえばりまくる。
「少佐(←エド・ハリスのこと)なんて下っ端、相手にしてる場合じゃないんだ。明日は将軍を仕留めようぜ」
などと、すこぶる威勢のいい言葉まで吐く。
まだ登場して間もないというのにとてつもない存在感に感心するばかりだ。「さすがロン・パールマン!」と拍手を送りたくなろうというものである。
そして戦地にて
「小僧め! でしゃばるんじゃねえ!」
とばかりに先陣を買って出るロンおじさん。
一体、どんな活躍を見せてくれるんだ!?
とワクワクしながら私は観ていた。そして、その直後、エド・ハリスに拳銃で脳天を打ち抜かれてあっという間にロンおじさんは死んでった。
コントかよ!
笑った。
なにしろ脳天を打ち抜かれたときのロン先生の表情がいい。鳩が豆鉄砲食らったような表情をしながら死んでゆく。しかも、アップ&スローモーションの画でもってこれでもかとその表情を見せつけながら死んでゆくのだ。
おもしろすぎるだろ。
おそらく総出演時間は2分にも満たないのではないか。やにわに登場したと思ったらほとんど間も置かずとっとと退場していくというのにこの絶大なインパクトはなんだ。
もちろん疑問は感じた。そもそもこんな虫けら同然の扱いとも言える端役になぜわざわざロン・パールマンおじさんを抜擢したのか。
これはあくまでも個人的な推測であり間違った解釈かもしれないが、「ロン・パールマンの無駄遣い」とも言えるこの一連のシークエンスは、おそらく
「こんなおもしろい顔したおじさんもあっけなく殺されてしまうのですよ」
という戦争の悲惨さを訴えているのではないか。
いや、きっとそうに違いない。
「戦争反対!」
なんだかわからないが、とにかく声を大にして言いたくなった。