カレーだったらシャバシャバ派かドロドロ派のどっちですか。4月に観に行った映画の感想文です。
『俺たちのアナコンダ』
「大人になったら一緒に映画作ろうぜ!」と少年時代に誓い合ったものの、今や片方は結婚式のカメラマン、もう片方は売れない俳優をやってる幼馴染のシオシオなおっさんらがある日「『アナコンダ』の版権をゲットしたぜ!」ということになって「よっしゃ、リメイク版を自主制作しに行こう!」つって友人たちと共にノリノリで南米のアマゾンに向かうが……というお話。笑いあり、ホラーあり、グッと来てしまう友情あり、ついでにグロあり、という娯楽要素がこれでもかと詰め込まれていてすこぶる楽しめた。なにより、溢れんばかりの映画愛を感じられるのがとてもよろしい。そもそもこういう純コメディな作品って近年あんまり製作も劇場公開もされてない気がするので、なんだか懐かしくもあり、「こういうのをもっとくれ!」と大声で叫びたくなった
『PILOTー人生のリフライトー』
女性ハラスメント的な発言がきっかけで航空会社から解雇された男性パイロットが再起を図るため女性パイロットを積極採用している航空会社に女装して面接を受けに行ったら見事合格、やがて持ち前の操縦技術によって立身出世していくが……というお話。「なぜかバレない」というおとぎ話的なおかしみとシリアスなジェンダー問題に加え、話題優先・金目当てなやり手会社を揶揄するような題材を無理やり感なく纏めたプロットで巧いなあと膝を打つと同時に、ふんだんに盛り込まれた女装ネタに大いに笑わせてもらった。そしてオチがまた良い。大団円にならないのがなんだか今っぽいなと思った。
『炎上』
トー横キッズのリアルを余す所なく描いたお話の筈だが、まったくもって乗れず・面白からず。べつに乳やグロを見せろと言いたいわけではない。が、「見せ方」「描き方」にどうにも創意工夫が感じられない。取ってつけたようなハリボテ感があって真に迫るようなリアリティが感じられず、登場人物たちもマンガのキャラクターのようでなんだか上っ面だけの不幸を見せられているような気がしてしまった。比べるのはアレだと重々承知しているが、韓国映画だったらこういうの巧く撮るんだけどなあ、と思ってしまった。
『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』
母を交通事故で亡くし所属する芸術団に寝泊まりしている少女が魔女と呼ばれる怖い芸術監督のおばさんと一緒に暮らすことになって……という「大丈夫じゃねえよ!」な状況からいかにして、みたいなお話。つまらないわけではない。むしろ、無理やりにでも泣かせてやろう、みたいなアレがないのが良いと好感すら抱いた。ただ、あまりに綺麗綺麗したお話だったせいか、個人的には引っかかる部分がほぼなかったというのが正直なところではある。ただ、この映画を観て「なんだか救われたような気分になった」という人もきっといるのでは、とは思った。
『FEVER ビーバー!』
チャップリンをオマージュしているつもりなのか、知らないが、絶望的に合わない映画だった。そして絶望的に合わない映画は、主人公の「な? 俺っておもしれーだろ?」みたいな表情や笑い声や奇声や口笛の音や、さらに劇伴やバカデカい効果音や煙のもくもくした感じや、なんなら数字すらもムカつかせてくれる、ということを嫌になるくらい教えてくれた。
『ソング・サング・ブルー』
ニール・ダイアモンドのトリビュート・バンドの内幕を描いた実話ベースもの。「なんだアメリカンドリームを掴んだぜ的なやつかよ」と思いつつぼんやり眺めていたら、事態がやたらと予期せぬ方向に転んで行くので驚いた。もちろん脚色はあるのだろうが、それにしてもここまで波瀾万丈なら多少綺麗綺麗にしててもこれはこれでアリと思えるくらいドラマ性に富んでいて面白かった。しかし、こういう優れた音楽映画を観ると劇中歌にも惹かれるのが常だが、本作のニール・ダイアモンドの曲に関してはビタ一文惹かれなかった。単純に私の趣味じゃないのだろう。
『これって生きてる?』
嫁とうまくいってないおっさんがなんとなく立ち寄ったコメディクラブのステージに飛び入りして夫婦生活の愚痴を披露したらわりとウケてやがてスタンダップ・コメディアンとして生き甲斐を見出していくが……というお話。スタンダップ・コメディというあまり馴染みのない題材がまず新鮮だし、悪化した夫婦関係の描き方に関しても痒いところに手が届く的な感じで、結婚した経験がない自分が見ても巧いなあと感心した次第。ミドルエイジクライシスを描いた映画でもあり、かつまた、アメリカンドリーム的なお話でもあるが、派手派手しさは皆無。むしろ気怠さ・哀愁が終始漂っていて、人生の侘び寂びみたいなものを感じさせてくれる味わい深さがあった。
『沢田美由紀のガマランドにお邪魔します』
平成時代のカップルが廃墟と化した遊園地に遊びに行ったらとんでもない事態に!……というホラー・モキュメンタリー。構成そのものは化け物っぽいやつの出番なし・ジャンプスケアも極々控えめなシンプルなつくりだが、話が進むに連れてとある登場人物と共に深みに嵌っていたことに気づくという展開の妙がお見事。ザラついたVHSの映像が郷愁と恐怖を誘ってくれる。ちなみに今の部分はダジャレになってる。どうでもいいですか。そうですか。
『Riceboy ライスボーイ』
とある事情でアメリカに移住してきた韓国人母子の物語。どこの国で住もうが誰かが不幸になろうが諸行は無常である、ということをがっつり描いたお話だと個人的には受け止めた。長回しを多用した、時に俯瞰的に、時に人物に寄り添うように日常の機微を写し描くカメラワークが良い。アンビエントな劇伴がまた美しくも儚い。素直にしみじみした。
『月の犬』
嫁を病で亡くし悲嘆に暮れ自暴自棄になったのか、元ヤクザのおっさんがぼったくられるとわかっているバーになぜか連日通い詰めて、そのうち「やるじゃんアンタ」みたくなぜかバーの女からスカウトされてなぜか一緒に働き出してという「なぜそうなる?」な展開がオンパレードなお話。おまけに台詞回しもクサい。なのに案外観られたのはノワール調の硬派な雰囲気が良かったせいか。ただ、あのオチはありえない。笑わせてもらった。
以上。疲れた。おしまい。
#2026年4月映画ランキング
— とんちの人 (@tonchinonaka) 2026年5月1日
①俺たちのアナコンダ
②これって生きてる?
③PILOT ―人生のリフライト―
④ソング・サング・ブルー
⑤Riceboy ライスボーイ
⑥沢田美由紀のガマランドにお邪魔します
⑦月の犬
⑧大丈夫、大丈夫、大丈夫!
⑨炎上
⑩FEVER ビーバー!