2025年1月の消化物(映画)

1月に観に行った映画の感想文です。

 

『I Like Movies Movies アイ・ライク・ムービーズ』

「俺はカナダのクソ田舎で燻っているコイツら凡人とは違う! ニューヨークの大学で映画を学んで大物になるぜ!」みたいな大変威勢のいい青年がおります。で、とりあえず学費を稼ぐ為にレンタルビデオ屋でアルバイトをはじめます。ところが経営のこととか全然わからないくせに一丁前の意見を吐いて店長に迷惑かけます。母親との諍いも絶えません。挙げ句の果てには唯一の友人に酷すぎることを言っちゃったりします。ようするに、わんさか映画を観てこの世のすべてがわかったつもりのめんどくさいクソオタクが主人公の青春譚なのですが、この映画が変わっているのは周りにいる人らがみんな「包容力のあるちゃんとした人」というところでしょう。つまり、主人公の痛々しさが容赦なく描かれた作品になっているのです。「この野郎ぶっ飛ばしてえ!」と思ったあなた、あなたはまともな人生を歩んできた素晴らしい人です。「なんか昔の自分で見ているみたい…あー恥ずかしい…」と思ったあなた、よく改心しましたね。「あるある…ていうか俺じゃん!」と思ったそこのジジイ、ツイッターとかで知識ひけらかしても誰も尊敬しないことに一刻も早く気づいてください。という世に蔓延るオタクどもを鈍器で殴るようなお話であり、ああ私も気をつけようとあらためて思わされた次第です。

 

『ビーキーパー』

恩人のおばちゃんが酷いを仕打ちに遭って自死し憤慨したジェイソン・ステイサムさんが悪党相手に大暴れするお話です。まあ、ようするにいつものヤツなのですが、今回のは切れ味のレベルが一段上に感じました。たとえば、主人公にはじつはこういう過去があって、とか、おばちゃんとあんなことがあって、みたいな詳しい説明描写がほぼありません。で、出てくる悪党がリアルな世界でもいま国際的な問題になっている詐欺電話をかけてきて金を巻き上げる連中であり、しかもこれは観たあとに知ったのですがなんと本作の脚本家の親族が実際に被害に遭われたそうで、「細けえ部分はダルいので省く! とにかく悪さする奴らは許さん!」みたいなマジモンの怒りが込められているであろうやたらとソリッドな描写がじつにキマってます。もちろん、悪党どもはチンパンジーでも想像できるような悲惨な顛末になります。にしても、思わず笑ってしまうくらいズタボロのボロ雑巾にされちゃうので、スカッと爽快気分にならざるを得ないのでした。あー楽しかった。

 

『アンデッド/愛しき者の不在』

「死んだ家族がゾンビになって帰ってきたヨ!」というSFホラーです。いままでありそうでなかったようなこのあらすじ自体はいいな、と思うのです。しかしながら、いざ撮影開始となった途端なぜか急にダルくなりたまたま近くを通りがかった小学生に小遣いをあげて代わりに監督をやってもらったのか、知りませんが、なにしろ展開らしい展開がなく、クソ眠たかったです。セリフが極端に少ないのもなにか深い意味があるわけではなく単にいい感じの会話が思いつかないから、だってボク小学生だもん、知らないヨ! ということではないか、などと、ありえない邪推をしてしまうくらい、ほぼほぼなにも起こらず、観ているこっちがゾンビになってしまいそうでした。

 

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』

黒社会の兄貴どもとヤングジェネレーションたちのくんずほぐれつの大抗争が展開される九龍城を舞台にしたアクション大作です。私は少年時代にジャッキー映画を観て育ったと言っても過言ではない人間なので、なんといっても久しぶりにサモ・ハン師匠の活躍を劇場で観ることができて、まずはこの時点で感慨深い。師弟愛、友情、絆、涙、そしてカンフーという、古き良き時代の香港映画を想起させつつ、次の世代へのバトンタッチを高らかに宣言する「新しい香港映画」でもあり、香港映画にそれ相応の思い入れがある人間としてはどうしたって熱くならざるを得ませんでした。ただ、ファンアートとかをネットに公開している人たち並みに熱狂できないのは、師匠らに比べて若手連中がいまいち魅了に欠けているように思えたからでしょうか。とりあえず三部作とのことなので、続作でその辺もきっちり描かれるのを期待しています。

 

『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』

大統領に返り咲いたドナルド・トランプの、ボンボンのトロい2代目から若き不動産王に成り上がるまでを描いた伝記映画です。個人的に伝記映画っていまいち興味をそそられないのですが、まあ、ある意味いまいちばんホットな人だからなあトランプ、評判も良さげだし、ということで観に行くことに。で、単刀直入に言うと、なんか「めちゃくちゃ金儲けてる俺すごい」みたく威張ってるそこいらのおっさんと大して変わらんのではトランプ、という感じでドラマとしてふつーに楽しめましたが、とくに驚くようなお話ではなかったです。まあ、だからこそ第二、第三のトランプが出てきてもおかしくない、と危惧されているのでしょうけど。しかし、トランプを演じているセバスチャン・スタンのなりきりぶりはすごかった。あとハゲてるくせに自信満々なのもある意味感心しました。

 

『勇敢な市民』

権力者のパパを持つ極悪非道な生徒の実質的な支配下にある荒くれ学園に配属された非正規教師の奮闘を描いたアクションコメディです。まあ、ナメてた相手がアレでした系のお話であり、もっとざっくり言っちゃうとグレートティーチャー鬼塚なのですが、そこはやはり韓国映画、じつに気合いが入った極悪非道っぷりです。というか、ふつーに「反社」です。で、そんなバリバリ反社な生徒がたっぷりむかつかせてくれてから、プリティーでキュートな先生がこれまた気合い入ったボクシングでぶっ飛ばしてくれるのですから、お約束だとわかっていてもスカッとしました。

 

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』

ジャンプスケアはおろか幽霊の姿すら出てこないという触れ込みで公開された幽霊ホラー。これは困りました。序盤こそいろんなキャラが出てきて展開もあって不穏な雰囲気がいい感じに味わえたのですが、いつまで経ってもとくになにも起こらない。いや、起こってるんだろうけどひたすら静かで地味なので結局なんだかよくわからないというか、ぶっちゃけ何度も寝落ちしてしまいました。というわけですみません、評価不可です。

 

『嗤う蟲』

若い夫婦がスローライフを夢見て田舎に越してきたはいいが周りの連中が全員なんだかやべー奴らでした、という村ホラーです。過剰な親切、お節介という定番の流れから、異常な妊娠祝い、さらに旦那がとある事件を起こしたせいで弱みを握られ違法行為の片棒を掴まされることになります。子どもの面倒見てくれるし、○○○吸い放題だし、いい村じゃん! と思ってしまいました。なにが恐ろしいのかイマイチわかりませんでしたが、私がダメな人間であることは充分すぎるほどよくわかりました。

 

以上。疲れた。おしまい。