映画『ゴッド・ギャンブラー』-狙ったシーンは笑えず、狙ってないであろうシーンはクソ面白いヘンなコメディ-

アマプラにおすすめされたので『ゴッド・ギャンブラー』という映画を観てみた。

ゴッド・ギャンブラー

ゴッド・ギャンブラー

  • チョウ・ユンファ
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主人公を演じているのはチョウ・ユンファだ。言わずと知れた香港映画界を代表する国際的なスターであり、劇団ひとりにそっくりな人として本邦でもお馴染みの俳優であろう。

本作を「名作」と言う勇気は私にはない。しかし、「凡作」と言うのはまた違うような気がする。しいて言えば「迷作」だろうか。とにかくこれが「ヘン」としか言えない映画だった。

連勝連勝負けなしの天才ギャンブラーであるユンファは、通称「賭神(ゴッド・ギャンブラー)」としてその名を轟かせている。

ある時、日本のヤクザのおっさんからシンガポールの賭博王を倒してほしいと依頼され快く引き受けるユンファ。ところが、ギャンブルで借金まみれのポンコツコンビが近所に住んでいる横柄なインド人のおっさんを懲らしめてやろうとイタズラで仕掛けた罠に運悪く引っかかり崖から転げ落ち記憶喪失になった挙句、知能が10歳児になってしまう。単なるアホだと思いテキトーにあしらうポンコツコンビだったが、やがてユンファのギャンブルの才能に気づき一儲けしてやろうと利用するになる。そうこうするうちに両者のあいだに奇妙な友情が生まれ……というストーリーである。

うんこを我慢してここまで読んでくれた人ならお察しのとおり、本作『ゴッド・ギャンブラー』はハートウォーミング寄りのコメディだ。しかし、なんというか設定がじつにおおらかというかとにかく全体的に雑な作りで、ここは笑かそうとしているのか、それともクソ真面目モードなのか、という感じで、いまいち判別しづらいところがやたらと多いのだ。

たとえばこれだ。

「ギャンブルがヘン」

ポーカーで対決する。これはわかる。競馬をやる。これももちろんわかる。

だが、6つのサイコロを振って出た目の合計数が少ないほうを勝ちとする対決でサイコロを砕くってのはどうなんだ。

「さすが博打の神。アンタの勝ちだ」

ヤクザがマジ面で言うわけだが、本当におまえはそれでいいのか。「いや反則だろ!」と抗議すべきじゃないのか。いずれにしろ、笑うべきなのか「カッケー!」と感嘆すべきなのか、よくわからんと言うしかないシーンである。

ではこれはどうか。

「アクションがヘン」

本作には拳銃やナイフを使ったアクションシーンもある。なかでも終盤で展開されるユンファたちとマフィア軍団による大立ち回りは本作最大の見せ場と言っていいだろう。

なんとこの場面で煙が出る。

銃口からではない。撃たれた身体から煙が出るのだ。

私はガンアクションが展開される映画をあまた観てきたが、撃たれた人間の身体からモクモク煙が出るなんて観た記憶がない。しかも、ある場面では煙を発生させる機械のようなモノが一瞬見えたりもする。

しかし、演じている本人たちは至ってクソ真面目なご様子だ。これはギャグなのか、はたまたそんなつもりはさらさらないのか。やはりよくわからない。

まだある。これだ。

「血の量がヘン」

前述したユンファが崖から転げ落ちるシーンである。

記憶をなくし、あまつさえ知能が10歳児になる。これは只事ではない。それ相応の怪我を負わなければ説得力が生まれない重要なシーンだ。事後のユンファ氏がこちらである。

 

やりすぎじゃないかこれは。なにしろ血の量が尋常じゃない。というか、どう見ても死んでるだろ。

だが、もちろん死なない。記憶喪失と知能の問題はともかくとして、線香の粉を頭に塗りたくる&水を飲ませるという近所のババアの謎の救命措置でユンファは一命を取り留める。

この場面でもべつにいかにも笑わせてやろうと言わんばかりの音楽が流れるわけでもなく、おちゃらけムードは一切ない。なんてシュールな絵面なんだ。腹かかえて笑った。

まあ、ツッコミどころ満載のトンチキ映画と言ってしまえばそれまでだが、血塗れのユンファを運ぼうとしたら勢い余って頭を柵にぶつけてしまうとかベタなギャグも結構あり、とはいえそれらの狙ったギャグは全然おもしろくなく、逆に狙ってないであろうクソ真面目なシーンはおもしろいという、しっちゃかめっちゃか感あふれる映画である。「ヘンな映画が観たいなー」という人には激推しの逸品だ。

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