【第28回】はじめて○○へ行ってみた「ジャズのライブ」(観たライブ→上原ひろみ)

私が普段聴いている音楽は主にロックとポップスである。あとはテクノやヒップホップやファンクミュージックあたりを軽く嗜む程度といったところだろうか。

で、ジャズだ。

これがまあなんだかよくわからない。

ヴォーカルが入っている楽曲はかろうじてイケる。

たとえば私は小島麻由美の大ファンだ。UAのライブアルバム『la』も大好きである。エイミー・ワインハウスの『Back to Black』も紛れもない傑作だと思っている。

まあ、厳密に言うならこの人たちは「ジャズの人」ではなく「ポップスの人」なのかもしれない。とはいえ、小島麻由美の作品の多くはジャズのビッグバンドというスタイルであると本人曰く標榜している。UAの『la』はトランペッターに菊地成孔、ドラマーに外山明など、ジャズ畑の錚々たるメンバーが参加していて、「ジャジー」と言うしかない演奏が聴けるライブアルバムである。エイミー・ワインハウスも私の記憶がたしかならば、生前に「自分はジャズ・シンガーだ」と公言していたはずだ。

なので私はジャズが全然わからない人間というわけではない。ないはずだ。

ただ、ヴォーカルが入ってないジャズとなると、これがもうからっきしわからない。

いつだったか、「ジャズわかりてえ!」みたいなモードになって、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、ジミー・スミスなど、有名なジャズミュージシャンの名作とされているアルバムを片っ端から拝聴した時期があるが、まあ揃いも揃ってよくわからなかった。

「ほーん、なるほど。なかなかイイんじゃないっスかねー」

みたくなんとなく思う瞬間はあるにはあるが完全には掴めない。

とにかくこれが私のジャズに対するイメージである。

数ヶ月前のことだ。いつものようにスマホの画面をだらだら眺めてたらこんな情報が流れてきた。

「上原ひろみ Hiromi's Sonicwonder JAPAN TOUR 2024開催」

じつは上原ひろみのライブは1度だけ観たことがある。

昨年のことだ。やはりいつものようにスマホの画面をだらだら眺めていた。なんでもゴールデンウィーク中に六本木ヒルズでフリーライブが開催されるという。そのフリーライブのトリを務めるのが上原ひろみであるとのことだった。

上原ひろみが世界的に評価されているジャズピアニストであることはジャズに疎い私でもさすがに知っている。さらにこの少し前に私はジャズのトランペッターを目指す青年が主人公のアニメ映画『BLUE GIANT』を観に行っていた。じつにおもしろい作品だし、劇中で流れるジャズの楽曲も素晴らしい。劇伴担当は上原ひろみだ。いい機会だ。観に行こうじゃないか。なんてったってタダで観られるのだ。

で、観に行った。当日、ライブを観終わったあとに投稿した私のツイートがこちらである。

 

撃沈だった。

あれから1年半。前回はソロでの演奏だったが、今回はバンド体制のライブである。バンドのライブなら今度こそジャズを掴めるかもしれない。どうやらリベンジのときがやってきたようだ。

ジャズの魅力とは果たしてなんなのか。

というわけで、私はその謎を解明すべく、アマゾンの奥地ではなく、市川市文化会館へ向かった。

 

先に結論から言う。

今回も撃沈だった。

まず、相変わらずよくわからないタイミングで拍手が起こる。

「見事なアドリブだ! ブラボー!」

で、拍手。

ということなのだろうが、なにしろどこからどこまでがアドリブなのか、さっぱりわからないじゃないか。まあ、事前に予習をまったくしていかなかった私が悪いのだが、生バンドの演奏には慣れてるから掴めるだろうと余裕ぶっこいてたのが大間違いだった。

とにかくロックやポップスのライブとは違う。

「おっ。このフレーズ、カッケーなー」

「綺麗な旋律だなー」

みたいな瞬間はあるにはあるが、瞬間だけで終わってしまう。あとの大半の時間はただただポカーンとするばかりである。

というか、偶然目にしたファンの人に怒られてしまうかもと怖かったので当日のツイートにあえて書かなかったが、すいません、何度も眠たくなってしまいました。

まあ、わからん。いや、たしかに演奏は達者だなあとは思ったよ。ピアノの速弾きすげえ、とかアホ丸出しの感想だけど。しかし、それもやっぱり瞬間で終わってしまう。とにかく掴みどころがわからない。そう言うしかない。

2時間ほどのライブが終わった。2時間ポカーンとしたり眠たくなったりしつつ、気づいたら終わっていた。

上原ひろみやバンドのメンバーの演奏が悪かったわけではない。ジャズ音痴な私が悪い。そういうことで、なんだかよくわからないがとりあえず許してほしい。