2022年11月の消化物・その1(音楽,映画)

さて恒例の今月のじゃなくて若干過ぎてしまったが先月聴いた音楽の新譜アルバムと劇場で観てきた映画の感想文でも書いてみましょうか。先月もわりと多めにもぐもぐしたので2回に分けて書いてみますか。どうですか。興味ありませんか。数時間後に行われるワールドカップの日本とスペインの試合が気になっててそれどころではないですか。そうですか。

 

【音楽】レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Return Of The Dream Canteen』

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かねてから公言していたとおりリリースされた今年2作目となるアルバム。前作『Unlimited Love』に比べるとファンク色が濃いめの楽曲が多く収録されている感がある。個人的にはメロディアスなフレーズを奏でるフリーのベースとジョンのエモーショナルなギターソロが炸裂する④「Eddie」、リズム隊とラッパが大活躍な⑤「Fake As Fu@k」あたりが好み。夢幻的なサウンド・テクスチュアからなる、ある種のレトロスペクティヴを想起させるユーフォリックかつ混沌とした世界観はなんともアーバンなリリシズムを湛えており、何れにしても人類史に残る偉大な傑作だ、みたいな意味不明かつ大袈裟っぽく褒め称えるようなアルバムではないが、前作に引き続きお帰りジョン感が満々に味わえる良作だと思う。

 

【音楽】スマッシング・パンプキンズ『ATUM-Act I』

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通算12作目となる新作。ビリー・コーガンさん曰く「『Mellon Collie And The Infinite Sadness(※邦題→『メロンコリーそして終りのない悲しみ』)』と『Machina/The Machines of God』の続編」とのことで、ようするに『Mellon Collie〜』のような鬱っぽくて儚げな美しいメロディと『Machina〜』のようなやかましいぐらいエレキががんがん鳴り響くヘヴィなパワーポップ的要素をミックスしたようなアルバムなんですわ聴けやボケ、ということなのだろうが、あんまりどちらの要素も感じられんなあ…というのが正直なところではある。サウンドデザインもバンドの演奏も楽曲自体も圧倒的に強度が足りてないのでは、という気がしてならない。今年リリースされたアルバムが高水準のデキだったクーラ・シェイカーと同様の復活劇となるかと期待したが、個人的には「うーん、コレはちょっとねえ…」という感じ。

 

【映画】『チケット・トゥ・パラダイス』

末は弁護士の優秀すぎる娘さんが卒業旅行先のバリ島でノニト・ドネア似のイケメンと出会って4秒で合体じゃなくて出会ってだいたい4秒ぐらいで「アタシこの人と結婚する! 彼と一緒に海苔の養殖をしながらバリ島で幸せに暮らすわ!」みたくなって、「いやオメー弁護士になるんじゃねーのかよ! なにが海苔の養殖だざけんなこのアマ!」と、かつては夫婦だったが不仲が原因で別れた元夫婦の父ジョージ・クルーニーさんと母ジュリア・ロバーツさんが一時的に結託し娘のバリ島移住海苔養殖ドネア似イケメン結婚計画を阻止するためバリ島に乗り込むが……みたいなお話。「バリの絶景を舞台にした最高にハッピーでハートフルなトロピカルリゾートコメディ映画!」という公式の宣伝文句を目にした誰もが予想するような感じにだいたい転がっていくお話であり、やがて資本主義社会に強烈きわまりない不信感を抱くようになった娘が石鹸爆弾をせっせと作ったり挙げ句の果てにはファイト・クラブなる謎の組織を結成して……みたいな展開にはもちろん全然ならないしなるはずがない、まあ、良くも悪くも水戸黄門的なお約束感を味わえるラブコメだった。

 

【映画】『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』

「ん? ちょっと待って! なんか僕たち私たち、全員毎週おんなじこと繰り返してない?!」という類のループものコメディ。主人公は広告代理店のおねーちゃんで、やがてタイムループの原因は上司のハゲ部長が身に付けている怪しすぎる数珠ではないかと睨むが……というふうに話が転がっていくのだが、これは当たりだった。小気味良くて適度にクスりと笑えるコメディと思ってたらいつのまにか感動物語になっていたが、むかつくような説教臭さがギリギリ回避されてて感動アレルギー持ちのひねくれ者な私も素直に楽しめた。低予算かつこぢんまりとしたお話なので映画観た感はあまり味わえないが、上映時間も短いのでちょっとひねったコメディをサクッと観たいなという人には胸を張っておすすめしたい。

 

【映画】『ドント・ウォーリー・ダーリン』

舞台は古き良き時代のアメリカ。夫は家族を養うためまじめに仕事をして、妻は料理や洗濯や夜の営みを完璧にこなし愛しい夫を支える。裕福でイケてるクルマがあり広くて立派な家で暮らす幸せな毎日が続いていたある日、街の一角に存在する謎の立ち入り禁止地区にとあるご夫人が入ってしまったことで、「ん? つーかこの街ってなんかヘンじゃね?」みたいになってくお話。大元のカラクリがわかってからは「まあ、わりとありがちな構造のSFかなー」という気がしないでもなかったし、やや冗長な感もあったが、どこか歪で不穏感が終始渦巻ている不思議系ホラー感はなかなか良かったし、個人的にはジョーダン・ピールの傑作『ゲット・アウト』を思い出したりなんかもした。『ゲット・アウト』は黒人差別がテーマだったが、こっちは女性差別、男根主義がテーマの作品と考えてよろしいだろう。しかもかなり痛烈なやつだった。とはいえエンタメ性もしっかり備わっているので万人におすすめできる作品でもある。

 

というわけで続きは次回。

以上。疲れた。おしまい。