例によって最近気分が落ちている。素晴らしくなにもやる気が起こらない。
「こんなときは元気が出るような前向きなメッセージがてんこ盛りの感動的な映画でも観ようじゃないか!」
おそらく賢明な映画好きならば上のような思考になるだろうが、私にとっては完全に逆効果にしかならない行為である。
「たしかにいろいろあったりするけど、ま、とりあえずポジティブに行けばなんとかなるさ! な、だから元気出せよ!」
みたいな、見ず知らずの他人からとくに根拠もなくやたらと前向きな言葉を乱暴に投げかけられているような気がして、なんだか余計気分が落ちてしまうのだ。
ああ、とりあえず気分を上げたい。
こんなときは絶望を味わえる映画がいい。
私はちょっと頭がおかしいおにいさんなので、気分が落ちているときはそういうものをついつい求めてしまう。
というわけで『ゴーストランドの悲劇』である。
なぜこの映画を選んだのかというと、いつものようにアマゾンプライムビデオのページを開いたら「あなたが興味のありそうな映画」という項目に出てきたからである。
さすが天下のアマゾン先生だ。わかってらっしゃる。
なにしろ、このおどろおどろしいジャケットがいい。おまけにタイトルが『ゴーストランドの惨劇』ときた。
前向きなメッセージがてんこ盛りの映画であるわけがない。これが無名の3流ボクサーである主人公が一念発起し世界チャンピオン相手に死闘を繰り広げ最終的に負けはするものの「エイドリアーン!」とかなんとか叫んで感動を誘うような映画だったら詐欺である。
しかも、映画を観るまえにアマゾンのレビューを軽く眺めてみたら、「絶望に絶望を重ねていくスタイル」だの「胸糞」だの、ワクワクせざるをえない言葉が躍っているではないか。
で、観てみた。
家に突然侵入してきた2人の暴漢に姉妹が終始ボコボコにされる。
そういう映画だった。
ジャンルとしてはホラーになるのだろうが、単に怖がらせるだけのお話ではなく、わりと凝った作りの物語である。
とくに二重構造になっていたシーンには見事に騙されたし感心した。とはいえ個人的には「絶望に絶望を重ねていくスタイル」という感じはしなかったし、そこまで「胸糞」でもなかったなー、というのが正直なところではある。
つーか、そもそもだね、この暴漢ふたりがどうなのよって話。
ひとりは全身黒ずくめなうえ筋肉モリモリのばばあだかおっさんだかよくわからんやつ。もうひとりは頭が足りないハゲでデブのおっさんである。
怪しすぎる。
こんな奴らがいたらソッコーで職質受けるだろ。
「ちょっといいかな君たち」
「えっ、な、なんすか」
「いや、怪しすぎるだろ君たち。なんか変なもの持ってるんじゃないの?」
「なに言ってんすか。持ってるわけないじゃないすか」
「とりあえず一旦署に来てくれるかな」
「マジすかー。勘弁してくださいよ……」
みたいなやりとりが頭に浮かんでしまったわけで、一歩間違えたらコメディ映画になってしまったであろう。
って、なんだか無性にコメディ映画が観たくなったな。
ま、いつまでも鬱々しててもしょうがねえから『SPACE BATTLESHIP ヤマト』でも観て大笑いすんべーっと。
頭が足りない人間で良かった。