『新幹線大爆破』は1975年に上映された作品で、「ハリウッドのパニック映画にも対抗できるような日本独自のパニック映画を作ってやろう!」という意気込みを元に制作されたとのことである。じっさいそういった意気込みが反映されたのだろう、はじめから終わりまで汲めども尽きぬ熱っぽさのようなものが横溢していて見ごたえたっぷりの映画だった(そのぶん、展開的に無理やりすぎるつっこみどころも少なくないが)。
新幹線に爆弾を仕掛けて大金を得ようと目論む犯人グループと、彼らの犯行を阻止しようとする警察&政府&鉄道会社との緊迫のやりとりを描いていて、152分もあるかなりの長尺作だが、ハラハラドキドキのスリリング性があり、なおかつテンポも良いので長さを感じさせない。当時のハリウッド製パニック映画と同様、出演俳優たちも豪華絢爛なオールスターキャストであり、どの場面を観ていても有名な俳優が出ているのでお祭り的な楽しさもある。
主人公である犯人グループのリーダーを演じているのは高倉健で、正直、高倉健が出ている映画なりドラマなり、どれもまともに観たことがない人間だが、むちゃくちゃ渋くてかっこよくてしびれた。金髪をたなびかせて派手なアクションをするわけでもなく、むしろ町の零細工場の経営に失敗した冴えない男という役柄なのにかっこいい。「そこにいる」だけで「画」になる。
とくにアメリカンニューシネマを彷彿とさせるせつないラストシーンにおいては、
「健さん!」
と、いままで高倉健の作品をロクに観てこなかったくせについ呟きたくなった。なんかうまく言えないが、とにかくそういうかっこよさがある人物を好演していた。
ほかのキャスト陣も総じて魅力的で、常に目が血走っている千葉真一もおもしろいし、おぎやはぎの矢作兼にしか見えない山本圭の小物っぷりもいい。のちの『デパート!夏物語』での熱演を思わせる小林稔侍のハッスルぶりも楽しい。田中邦衛がまんま『北の国から』の五郎さんなのも笑えた。
そして、出番が少ないくせに存在感が半端ない丹波哲郎はさすがと言うしかない。なにしろやたらと偉そうなのがいい。
先日、立川志らくが「なんでそんなに偉そうにしてるの?」と批判してきたアンチに対し、「実際に偉いのです!」と反論して軽い炎上騒ぎを起こしたが、丹波哲郎の「偉そうさ」に比べたらミジンコレベルである。立川志らくも立川志らくを気に入らないアンチの人々も本作を観て本物の「偉そうさ」を学んでいただきたい。きっと霊界から有難いお言葉を頂戴できるだろう。
べつに立川志らくはどうでもよいので、とにかくハラハラドキドキできて豪勢な気分を味わえる映画を観たい!
という人にも胸を張っておすすめできる作品である。それこそ、立川志らくや丹波哲郎にも負けないぐらいの偉そうな態度でおすすめしたい。