いまではすっかりそういった習慣はなくなってしまったが、昔は音楽雑誌を定期的に購読していた。とくに熱心に読んでいたのは、『ロッキング・オン』、『クロスビート』、『ミュージック・マガジン』といった、洋楽をメインに取り扱っている音楽雑誌である。
邦楽雑誌はほとんど読まなかった。若い頃、洋楽にかぶれまくっていた私は、邦楽をおもいっきり馬鹿にしていたからだ。
邦楽なんて「ニセモノの音楽」で、ロックやブルースやテクノやヒップホップやジャズなど、あらゆる音楽の発祥の地であるアメリカやイギリス出身のミュージシャンが奏でる音楽、つまり洋楽こそが「本物」であると信じていた。
ところが、ある時期からナンバーガールやらスーパーカーやら宇多田ヒカルやら椎名林檎やらhideやらの邦楽のミュージシャンに関心を示すようになった。その後も邦楽のミュージシャンを自分なりに発掘していき、
「なんだよ。邦楽にもおもしろい音楽作っている人いっぱいいるじゃん!」
と気づいた。
上記の邦楽ミュージシャンたちのおかげで私の恥ずかしすぎる中二病時代は終わりを迎えたと言っていい。本当に感謝してもしきれない。
あのまま邦楽を馬鹿にしたまま大人になっていたらと考えるとじつにおそろしい気持ちになる。
で、邦楽を馬鹿にすることはなくなった私は、自然と邦楽系の雑誌も読むようになったのだが、いろいろな雑誌を読み込むうちにあるひとつのルーティンがあることに気づいた。
とくに新人のミュージシャンへのインタビュー記事でそれは多く見られた。
インタビュー相手であるライターが以下のような質問をするのだ。
「初めて買ったCD(レコード)は?」
で、質問された新人のミュージシャン、とくにそれがロック系の人であったりすると、答えとして出てくるのは大体がビートルズの『アビイ・ロード』だったりセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ!!』だったりニルヴァーナの『ネヴァーマインド』とかの「教科書的な作品」だったりする。
間違っても
「子門真人の『泳げたい焼きくん』です。あの渋い歌声に影響を受けて音楽に興味を持ったんですよ」
とか
「いやー冠二郎の『バイキング』ですね。僕らも冠さんのような演歌と海賊を融合させた音楽を目指していて……」
などと答えている人間はひとりもいなかった。
「本当にそうなの……?」
ゲスで疑り深い私は、そのような「真っ当な答え」を目にするたびにそう思っていたのだ。
断言しよう。
ありゃ嘘だ。
いや、ま、じっさい初めて買ったCD(レコード)が、ビートルズの『アビイ・ロード』だったりセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ!!』だったりニルヴァーナの『ネヴァーマインド』だったりした人も中にはいるのかもしれない。
ただ、とはいってもやっぱり日本人なんだから、普段は日本の歌に接する機会が多いはずだ。
テレビやらラジオやらで頻繁に流れてくる邦楽の歌謡曲なりJ‐POPなりを耳にするうちに音楽へ興味を持つようになる。そして、CDなりレコードを買う……これこそが「真っ当な日本人」というものではないか。
「そういうおまえが初めて買ったCDはなんなんだ?」
お答えしよう。
普段は洋邦のロックを中心にテクノやらソウルやらジャズなどを愛聴し音楽通ぶっている私が初めて買ったCDがこれだ。
仮に私がミュージシャンだったとして、「初めて買ったCD(レコード)は?」と訊かれて、「とんねるずの『みのもんたの逆襲』です」だなんて、間違っても答えられるはずがない。
つうか、これも自意識過剰か。
私はいまでも中二病真っ盛りなのかもしれない。