「二度と観たくない映画」というものがある。
もちろん、その大半は「つまらなかった映画」である。
個人的に最近観たのでいえば、ジャッキー・チェン主演の『タキシード』という映画がとてもつまらなかった。途中まではなんとかがんばったものの、1時間もしないうちに観るのをやめた。
「物事を“好き”“嫌い”の2つだけで判断することはつまらない。映画を鑑賞して面白さを見出せなかったのは己の力量の無さではないのか?」
と、おっしゃっていたのはみうらじゅん先生だ。
私も常にそのような心意気でもって映画を鑑賞しているつもりだが、まだまだ修行が足りない。
また、けっしてつまらなかったわけではないが、「めちゃくちゃ胸糞が悪かった」という理由で二度と観たくない映画がある。
たとえば、なんの気なしに鑑賞したホラー映画の映像描写がグロくて、生理的に受け付けず、「二度と観たくない!」という感想をお持ちになった経験がある人もおられるだろう。
私の場合、『ファニーゲーム』という映画がそれにあたる。
まあ、とにかく胸糞が悪い映画だ。
観たことがないという人のために簡単に例え話で説明すると、夫婦・息子の3人家族が別荘にやって来てくつろいでいたら見知らぬ若い2人組の男が「卵を分けてほしい」だとか突然訪問してきてまあなんやかんやいろいろあって家族全員拉致監禁されたうえに暴行を加えられ最終的になすすべもなく湖に沈められて殺されるぐらいの胸糞の悪さ全開の映画だった。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』も『ディア・ハンター』も『ミスト』も全然大丈夫だったが、『ファニーゲーム』だけはマジで無理だ。
とにかく後にも先にもあれほど胸糞が悪くなった映画を観た覚えはない。
昔、テレ東「午後のロードショー」にて、「レディス・アクション特集」と銘打たれた4作品が放送された。その第一日目に放送されたのが、『グラマー・エンジェル危機一発』という映画であった。
むろん「レディス・アクション」であり、さらに『グラマー・エンジェル』なんだから、ピンと来られた読者も多かろう。
こんなもの、どう考えてもエロに決まっているではないか。
映画が始まって5分もしないうちに、いきなり主役の金髪巨乳ねーちゃんのファックシーンが炸裂。その後も、麻薬捜査官であるにもかかわらず常に半裸状態の金髪ねーちゃんたちが大活躍。わざわざ乳丸出しにしてプールでダベるシーンや、とくに意味のない着替えのシーンなど、スピルバーグやクリストファー・ノーランの映画だったら絶対に使用されないようなシーンがふんだんに盛り込まれており、男子諸君にとってはこのうえなく感動的かつ天に向かってガッツポーズな作品と言えよう。
当然、お話的な内容は一切ない。
エロが本筋の作品であって、ストーリーはあくまで「おまけ」だからだ。
そんなものはロックミュージシャンに一般常識を求める阿呆と一緒で、『グラマー・エンジェル』というタイトルを耳にした時点でご大層なストーリーを期待するほうが間違っているのである。
と、そんなふうに観て得した気分に強引に持ち込もうとしたがなぜだか無性に虚しくなり死にたくなった。
たぶんこの映画も二度と観ない。