廃品回収のアナウンスをしている女のテンションが低すぎて鬱になりそう

町中を廃品回収業者のトラックが走っている。まあ、見慣れた光景だ。

 

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「こちらは家電製品の廃品引き取りを行っております。家電製品でいらなくなった物を無料でお引取り致します。テレビ、オーディオ、パソコン、バイク、古タイヤ、バッテリーなど、いらなくなった物がございましたら、お気軽にお声をおかけ下さい。こちらは家電製品の廃品引き取りを……(以下、永久ループ)」

と、こんなようなアナウンスを流しながらトラックがやって来るわけだが、どういうわけかアナウンスを発している女の声が異様にテンションが低い。べつに訊きたかないが、なにしろ大きな音量で流しているせいでその異様にテンションが低い女の声がどうしても耳に入ってくるので、気が滅入ってしかたがない。

テープに吹き込むとき、たまたま腹でも壊していたのか。

父親が「ビッグになりたい」とかいう理由で突然会社を辞め、アメリカのレストランへ皿洗いの修行をしに行ったとか、なんかしらんがそんなような情報が舞い込んできてブルーな気分だったのか。

おまけにトラックを運転しているのがひとクセもふたクセもありそうなコワモテのおっさんであり、しかも、このおっさんがまた、いかにもやる気がなさ気というか、なんだか近寄りがたい悪魔的なオーラを発しているわけで、「お気軽にお声をおかけ下さい」などと呼びかけてはいるものの、とてもじゃないがお気軽にお声をかけられるような雰囲気ではないのである。

回収率と言ったらいいのか、あれのせいでかなり損をしているのではないか。そんな気がしてならない。

とはいえ、テンションが高けりゃいいのかというとそんな簡単なもんでもない。

昔、都内某所の某TSUTAYAでバイトしていたときのこと。

その日は火曜日だった。

火曜日といえば店に新譜CDが入荷してくる日、いわゆる「フラゲ日」というやつだ。店員はCDを予約している客に商品が入荷した旨を伝える電話を入れなければならないことになっていた。

まだ入って間もない新人アルバイターである俺に上の人が言った。

「とりあえず今日は私がやるから、よく見ててね」

まずいんじゃないかと思った。

朝の10時という、なにかと忙しいだろう時間帯に、たかがCDの入荷ごときの用件で電話を入れるなんて、会社勤めをしているような客に迷惑がられるんじゃないかと思ったからだ。

「あっ、もしもし? ○○様ですか? どうもお世話になっております。ツタヤ△△店です。先日、ご予約していただいたミスター・チルドレンのCDですが、本日店頭に入荷いたしました。ええ、はい、ご来店お待ちしております。それでは失礼いたします」

と、しかし、俺のそんな心配に反して上の人は業務をサクサクと進め、気づいたらあっという間にことを終えていた。

「じゃあ、来週やってもらうからね」

そして次の火曜日がやって来た。

「じゃあ、やってみて」

上の人にそう言われ、詳細が記されているCDの予約票を確認した。

客はどこだかの会社に勤めている50近くのおっさんだった。予約していたCDは誰のだったか忘れた。とりあえずB’zのCDとしておく。

で、B’zのCDを予約したおっさんに電話を入れることになったわけだが、しかし思った。

たしかに予約票の「CDが入荷した際に連絡を入れますか?」とかいう項目の「はい」という部分がしっかりと丸で囲んである。

これは連絡をすべきだろう。うん。ぜひともするべきだ。

にしても、だ。

会社でそれなりの地位にいるだろう50ぐらいのおっさんの元へ、なにかと忙しいはずの朝の10時という時間帯に、B’zのCDが入荷しただの、そんなような用件の電話を入れるって、はたして本人、有難いことなのか。むしろ迷惑なんじゃないか。

でも、かけたさ。

だって、上の人が「かけろ」って言うんだからかけないわけにはいかないじゃないか。

もちろん、新人のバイト君らしく、ハキハキとハイテンションで、だ。

トゥルルルルル、トゥルルルルル。ガチャ。

「あっ、もしもし?」

「もしもし?」

「××様ですか?!」

「あっ? ええ、はいはい、××ですけど」

「どうもお世話になっております! ツタヤ△△店です!」

「えっ? ツタヤです?! なに? ツタヤ?!」

「です! ツタヤです!」

「えっ? なんなの? ツタヤがなんなの?」

「はい! 先日予約していただいたB’zのCDなんですけど…」

「B’z?! B’zのCDが? えっ?! B’zが、その、なんなの?!」

「ええ、B’zのCDなんですが、本日店頭に入荷いたしました!」

「入荷?! えっ、なに?! B’zのCDが入荷?!」

「です! B’zのCDが入荷しましたので、えーっと、その、ご来店、お待ちしております!」

「いやいや! お待ちしておりますって! いやいやいや! B’zのCDかよ! こっちはそれどころじゃないんだよ!! 忙しいの!!!」

案の定、怒られてしまった。

「どうしたの?」

「あの、忙しいって怒られちゃったんですけど…」

「…………」

かけろって言われたからかけたのに……理不尽だ! 

つーか、「いいえ」の部分にまるしとけよ、おっさん! 

と思った。

そういえば、同じく某TSUTAYAでバイトしていたある日、

「すいませーん!! トイレ貸してもらっていいっすかああああ!!!?」

と、客にものすごく元気いっぱいに声をかけられたことがあった。

顔を見たら「最初にスマップを辞めた人」でびっくりした。