俺がインターネットを利用するようになったのは2001年のころだったと思う。
当時は実家住まいで、同居していた弟がわりと早い時期にパソコンを購入しネットを利用していた。俺もネットには多少興味があったものの、べつに利用しなくたって生活に困るわけではなかったし、「流行りに乗っかってたまるか」というヘンにあまのじゃくなところがあるので、基本的にはネットには無関心という態度でいた。
そんなある日、弟がパソコンを買い替えるという話になった。べつに壊れていたわけではないしもったいないからということで、俺は弟のお下がりであるノートパソコンを譲ってもらいはじめてインターネットという電子世界に触れることになった。
当時の俺は20代前半。エロに多大なる関心を寄せていた時期だ。ネットの知識が皆無の中、意地と努力で数々の優良エロサイトを発見し、己の下半身に付いている棒状のモノをモッコリさせながら感動と衝撃に打ち震えていたのをなんとなく覚えている。
ネットを利用するようになってしばらくしてから、「2ちゃんねる」というサイトがあるのを知った。
衝撃だった。
芸能関係や社会問題などのトピックについて、あまたのネット住人たちが意見なり感想なりを自由気ままに書き込んでいた。数々の罵詈雑言交じりの書き込みを含め、嘘も虚飾もない「本音の声」が行き交う世界に魅了された。「鬱田氏脳」「逝ってよし!」「激しく同意」などといった「2ちゃんねる語」にも、「おもしろい言い回しだなあ」と、いちいち感心しっぱなしだった。
ちなみに2ちゃんねるに書き込みをしたことはほとんどない。頻繁に訪れていた昔からあまり目にすることはなくなった現在まで、ほぼ一貫してウォッチャーの立場である。
ただ、一度だけだが2ちゃんねるにスレッドを立てたことがある。週刊少年マガジンで『魁!!クロマティ高校』というギャグ漫画が連載されていたころのことだ。
俺は『クロ高』に出てくる北斗武志というキャラクターが妙に好きだった。
財閥の御曹司で、単なる高校生のはずなのになぜか密かに世界征服を企んでいるというわけのわからぬキャラだ。
あるとき、つい勢いで、北斗武志になりきって2ちゃんねるの人生相談板に「北斗武志だ。お前らの人生相談に乗ってやろう」みたいなタイトルのスレッドを立てた。
もちろん真剣に人生相談に乗るつもりは毛頭なくネタスレッドである。『クロ高』のファンであろう、ネタに応じた「人生相談」がいくつか書き込まれた。俺は北斗武志に成りきって2つか3つの「人生相談」にレスしたが、すぐに面倒になりやめた。たしか50レスも行かなかったと思う。なにしろ俺は面倒くさがりで飽きっぽい性格だ。それはいまも変わらない。
その後、ネットで「mixi」なるものが急速に流行りだした。
上述したように、俺には「流行りに乗っかってたまるか」というヘンにあまのじゃくなところがある。なので、mixiなんぞやるつもりはまったくなかったが、当時仲良くさせていただいていた人が招待してくれた。まあせっかくだからという感じで利用することにしたが、やはりそちらのほうも「元プロレスラーで現在はレンタルビデオ店の雇われ店長」とかなんとかいっためちゃくちゃなプロフィールと日記のようなネタ話ような記事を2つか3つ投稿したぐらいですぐに飽きて利用しなくなってしまった。
一方でそのころの俺は、音楽雑誌の投稿欄で知り合った人たちと音楽系のフリーペーパーを発行する活動をしていた。俺は音楽ライター気取りで、音楽評論まがいの大真面目な駄文をそのフリーペーパー用にしこしこと書いて載せていた。誰に読まれているかもわからなかったが、文章を書くのはもともと好きだったし、ちょっとした充足感を感じていた。
ただ、同時に違和感も感じていた。
「もっと自由気ままにふざけた文章を書きたい」
と次第に思うようになっていった。
仲間たちとのフリーペーパー活動はとくに誰の話題になることもなく、気づいたら終わりを迎えていた。
ちょうどそのころ、ネットでは「ブログ」なるものが流行ってるらしいということを耳にした。
それまではウェブ関係の知識がある程度なければ自分のサイトをネットに公開するなんてのは困難なことだった。それがブログの場合、専門的な知識やしちめんどくさい手間をかける必要もなく、5分もあれば自分のサイトが作れてしまうという。
フリーペーパーで書く機会もなくなってしまったし、「書きたい欲」が燻っていた。なんだか楽しそうだ。
このときばかりは流行りに飛び乗った。
やってみたらほんとうに簡単に作れて驚いた。
その後、いくつかの不人気ブログを作り、2014年の12月に「はてなブログ」に移転、いまに至る。
いまのところ好き勝手にふざけたことを書けてるので満足している。相変わらず不人気ブログのままだが、なにかの間違いで読んでしまった人のうちひとりでも「バカなこと書いてるなー」と笑ってくれたら幸いである。