- 作者: マーティ・フリードマン,日経エンタテインメント!
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/04/03
- メディア: 単行本
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米国のヘヴィメタル・バンド「メガデス」の元ギタリストであり、バンド時代からの日本贔屓が高じ、現在は東京都内に在住しているという異色のギタリストといえば、今やお茶の間にその名がすっかり浸透した感のあるマーティ・フリードマンである。
で、そのマーティが在日外国人ミュージシャンならではの視点でJ-POPを批評、という、『日経エンタテインメント!』誌の連載企画を一冊にまとめた本書(※前半の章は、氏の半生を綴った自伝になっている)を読んで思い出したのは、『ミュージック・ライフ』という今は廃刊してしまった洋楽専門誌だ。
というのも、その『ミュージック・ライフ』誌にて、日本の音楽事情のことなど知らぬ海外のミュージシャンに、氷室京介やシャ乱Qといった日本のミュージシャンの曲を聴かせて批評してもらうというじつに面白い連載企画があったからだ(ちなみに氷室もシャ乱Qもヘヴィメタル系だったかの外国人ミュージシャンにボロクソに言われてた)。
あと、ついでにあれはたしか『ワッツ・イン・エス』という名前の雑誌だったか、こちらは逆に日本のミュージシャンが海外ミュージシャンの新譜CDを批評するというコーナーがあって、当時発売されたばかりのオアシスの『BE HERE NOW』について、元X JAPANのhideが「以前の作品よりもオリジナリティがあって好き」だとかコメントしていたのを記憶しているが、いやあれもなかなか面白い企画でした。
で、同じようなことを日本の音楽事情に精通している異色の世界的外国人ギタリスト、マーティ氏がやっているのだからして、当然ながらこれがまあ、非常に興味深い切り口が満載で大変面白かった。
新垣結衣の曲を取り上げ
「この声は反則級のかわいさです。やばいくらいに好き」
だのと評し、また、松浦亜弥の頁では
「キュートとセクシーどっちが好き?っていう歌詞がちょーかわいい」
だの、
「『桃色片思い』とか『Yeah! めっちゃホリデイ』とかのつんく♂とあややの組み合わせでできた曲は、神様がくれた宝石のようでした」
だの、単なるオタクのおっさん同然のコメントをしている部分なども最高に面白いが、とくに
「メガデス最後のツアーのとき、ライヴが終わった後にシャワーを浴びながら、ラジカセでZARDの『負けないで』を大音量で聴いて励ましてもらった」
というくだりは涙でページがめくれなくなるほど感動的だ。って、いやアンタ絶対日本人だろ!
と、とてもじゃないが世界的にも著名なヘヴィメタル・バンドの元ギタリストとは思えないコメント連発なのである。
さらにマーティ曰く、
「B’zのサウンドは最高!(中略)一体どうやったら次から次へとあんなにレベルの高い音楽を作れるのか、本当に不思議です」
「ビョークのサウンドに、マドンナのヴィジュアルも入っている倖田來未は、超スーパースター」
とのことで、B’zはともかく、「ビョーク+マドンナ=倖田來未」という理論には到底気持ちよく同意できない俺がいるのだが、
「まあでも、マーティがそう言ってるんだから、たしかにそうなのかもわからんな」
と、なんだか納得せざるを得ない気にさせられてしまうから不思議だ。
もちろん、こういったオトボケコメント(?)ばかりではなく、さすが本場米国でトップに登りつめたギタリストならではのアカデミックでとてもわかりやすい批評も展開されていて(とくに宇多田ヒカルの頁は激しく同意)、J-POPを普段から愛聴している者はもとより、自分のようなJ-POPにあまり興味がない人間からしてもじつに読み応えのある内容の書物となっている。
というか、この連載、やる前から絶対面白いことはわかってたんだから、『日経エンタテインメント!』などではなく、音楽誌こそがやるべきだったのでは、という気がしないでもない。
『ロッキング・オン』も、アンドリューW.Kに人生相談(まだやってるのかわからんが)なんかさせている場合じゃないよ、まったく。