昨夜テレビをなんとなく眺めていたら、日テレG+で『プロレスクラシック』なる番組がやっていた。
番組では昔の『全日本プロレス中継』が再放送されていて、ジャンボ鶴田や天龍源一郎、つい先ごろ亡くなった阿修羅・原、懐かしの「金パン」姿の元大相撲横綱の輪島やロード・ウォリアーズなどの名レスラーたちがリングの上で元気に活躍していた。
当時、リアルタイムで見ていたはずだが、まったく覚えていなかった。
まあ、まだ小学生ぐらいの時だったし、本格的にプロレスにはまったのはもうちょっと先の話だ。覚えてないのも無理はない。
最近、プロレスがまたブームになっているという話をちょくちょく耳にする。とくに女性のファンが多いとのことだ。ちなみに、彼女らのようなファンの大半はプロレスを「真剣勝負」だとは思ってないという。
ようするに宝塚と同じようなものなのだろう。まあ、宝塚のことは正直よく知らないが、つまり、お気に入りのイケメンレスラーなり興味ある団体を見つけ、彼らがリング上で繰り広げる「ドラマ」を享受するという図式であり、プロレスが「成熟したエンターテインメント・ショー」として新たに脚光を浴びているということなのだろう。
私がプロレスにはまっていた時代とは大違いだ。
私を含めプロレスファンの大半は、プロレスを「真剣勝負」だと信じていた。
なにしろ、K-1も総合格闘技もまだなかった。
もちろん、ミスター高橋や高田延彦の「暴露本」が出版されるのもずっと先の話である。
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豪快きわまりないファイトスタイルで知られるロード・ウォリアーズが来日したときなどは「鶴田や天龍が殺されてしまう!」と、それこそ本気で心配したものだ。つまり、プロレスとはそれほど人並み外れた力を持った超人たちの壮絶な戦いであり、ファンの多くはプロレスラーこそ最強と信じて疑わない時代だった。
まあ、たしかに「おかしいな」と思うことがなかったわけではない。
むしろ、プロレスを見る目が肥えるほど、
「あの技、よけれるんじゃないか…?」
「えっ?!…いまの延髄斬り、当たってないんじゃ…」
と感じることがしばしばあった。
それでもプロレスを信じていた。
「プロレスなんてインチキだろ」
そんなふうに面と向かって言ってくる輩も少なくなかったが、彼らプロレス否定論者が投げかけてくる数々の疑問に対し当時の私が提示した「完璧すぎる回答」を紹介しよう。
Q.なんでロープに振られてそのまま突進するの? しかも、なんでわざわざそのままロープの反動で戻ってきて相手の攻撃を受けるの? 止まればよくね?
A.プロレスラーは超人的な力を持っているので、そんな相手にロープに振られたら急には止まれない(つまり突進するしかない)。ロープの反動を使って戻ってくるのは、その後の反撃を隙あらばスムーズに行えるからで、けっして相手の技を受けるために戻ってきているのではないのである。
Q.なんでポストに登った相手の攻撃を寝ながら待って受けるの? すぐに起き上がってよければよくね?
A.超人的な技を受け瀕死の大ダメージを食らっているので、そう簡単には起き上がれない。あと、待ちながらしばらく寝ていたほうが回復するし、隙あらばよけたり膝を立てて相手からの攻撃を防ぐことも出来る。つまり、寝ながら待っていたほうが得策だからあえてそうしているのである。
Q.鶴田のバックドロップとかハンセンのウエスタン・ラリアットとか、決まって試合の最後に使われるけど、試合が始まってすぐに必殺技出せば早く決着つくのになんでそうしないの? おかしくね?
A.鶴田のバックドロップにしろハンセンのラリアットにしろ、技を繰り出す際の動作のアクションがひじょうに大きい。ようするに、相手がヘロヘロに弱りきった状態になってないと決まるのは難しいからあえてそうしてるんである。
Q.ジャイアント馬場の動きってなんであんなに遅いのによけられないの? おかしくね?
A.「16文キック」と呼ばれているくらいなのだから、馬場の身体の面積は常人が想像するよりもバカでかいし、しかもリーチが長いので、いくら遅いからといってよけるのは容易ではない。なんにせよ本気出した時の馬場はまあ、猪木ほどではないにせよ、強い。と思う。きっと(願望)。
Q.なんで悪役レスラーが目の前で凶器を使って攻撃しているのにレフェリーに見つからないの? あと、見つかったあとも反則負けになんないでそのまま普通に試合してるのはなんで? ヘンじゃね?
A.悪役レスラーはずる賢く凶器も巧みに使っているため、じつはレフェリーには見えてるようで見えてないのである。あと見つかったあとについてだが、一応数秒以内だったら凶器を使うのはルール上、許されているのがプロレスという競技なんであって、そんなに簡単に反則負けにしていたら「真剣勝負」が成り立たないのである。
……我ながら呆れてしまうほどの超絶理論と言うしかない。
なんだか酒で酔ったときに暴力を振るわれてるのに「でも、普段の彼はやさしいの!」と言ってDV男を擁護しているイタい女子のようでもある。
恋は盲目というやつだ。違うか。
まあ、いずれにしろそれだけプロレスを愛していた、ちゅうことである。
もうこんなようなプロレスファンは存在しないだろう。