かつて観たVシネマ『六本木ソルジャー』は思い出したくもないがいまだに忘れられない作品だ。
主演は佐山サトル。
言わずと知れた初代タイガーマスク、その人である。
なにが凄かったって、主演・佐山の演技がとにかくもの凄かったという一言に尽きる。
劇中、見せる泣き顔が「うんこを我慢している表情」にしか見えないという壊滅的な演技力のなさもさることながら、とりわけひどかったのがセリフを喋る場面である。
まず、棒読みは当たりまえ。おまけになにしゃべってんだかわからないほど発声が不明瞭で、なんとも困ったもんだった。
主役がこんな状態なんだから当然、物語の筋が頭に入るわけがない。
共演でなぜか松田聖子の愛人として当時話題になった「ジェフ君」が出てきたり、さらには同じプロレスラーの藤原組長なんかも登場したが、「佐山に比べたらジェフ君や藤原組長の演技のほうがまだマシ」と思えたほどである。
以降、とてつもなくひどい演技をする俳優のことを「サヤマ」と呼ぶことにした俺だが、幸運なことにさすがに佐山と並びたてられるほどひどい演技をする俳優にはお目にかかることはなかった。
がしかし、どうやら「サヤマ」の封印を解くときがついにやってきたようだ。
洋画鑑賞はもっぱら字幕派の私であるが、たまに吹き替え版のほうも観るようになって、あることに気がついた。
吹き替えの声を芸能人が担当しているケースが結構多いのである。
『ハンコック』のEXILE・MAKIDAI。
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『ラストコンサート』の上野樹里。
『50回目のファーストキス』の乙葉。
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『あなたに振る夢』の久本雅美。
これがどいつもこいつもグダグダきわまりない棒読みっぷりであり、まさしく「サヤマ」と呼ぶしかない演技だったのだ。
とくに『あなたに~』の久本に至っては、ニコラス・ケイジの妻役である黒人女優の吹き替えをやっていたわけだが、その吹き替え声はどう耳にしても「100パーセント混じりっけなしの久本(おまけにグダグダな棒喋り)」であり、もうこれなどはニコラスと久本の「実質的な共演作」と見なすべきだろう。
とにかく、ニコラス・ケイジ主演のハリウッド映画に「久本が出ている」というありえない状態なのだから当然、物語の筋が頭に入るはずがない。
ニコラスと妻役(久本)のベッドシーンがなかったのがせめてもの救いであろう。
ちなみに先日、今夏に公開される『マッドマックス』の新作について、こんな記事を見つけた。
記事によれば、なんでも吹き替え版のキャストが発表され、主演にEXILEのAKIRA、敵役に竹内力、真壁刀義が起用されたことで、『マッドマックス』ファンのネット民を中心に非難轟々の声が上がっているという。
竹内力はともかく、EXILEのAKIRAとプロレスの真壁って、どう考えても酷い出来になってるだろう(とくに後者)ってのは猿でも想像できるところだ。
『マッドマックス』といえばハードなアクションシーンが売りの硬派な映画であるが、吹き替え版での鑑賞を予定されている方は「コメディ映画を観るつもり」で足を運ぶべきだろう。