「それじゃ、今日も電話相談のコーナーにいってみましょうかね。……もしもし?」
「もしもし。こんにちは」
「ど~も~こんにちは。で、今日はなんなの?」
「それがですね……じつはお隣さんの騒音でとても困ってるんです」
「フゥ~ン。アラ、そうなの? …で?」
「いや、あの、すいません。いきなりスープみたいなの飲みだされても困るんですけど」
「うん、コレ、わかめスープなんです。なんだけど、ほんとにおいしんだよね。わかめ食べると新陳代謝にもいいって、えーっと……アイツ誰だっけ? 渡でもないし美川でもないし……あっ! そうそう、お医者さんから薦められたからちょっと飲んでみたんですけどね。…なに? 気分悪くした? 気ぃ悪くしたらごめんなさいね。で、ていうと、お宅はなんのお仕事やってるの?」
「マンガ家で、家で仕事しています」
「ほぉ~。マンガ家? ってことは、ウチの中でお仕事しているわけだからお隣さんが騒音出すとなると大変だ。どんな感じにうるさいの?」
「よくわからないんですけど、暴れまわってるんですかねえ。とにかく一日中、朝から晩までドッタンバッタンうるさくて」
「お隣さんの家族構成は? やんちゃなお子さんたちがウチの中で大騒ぎしてるんじゃないの?」
「ご両親と、あと、よくわからないんですけど、たぶんお子さんが……う~ん何人だろう、ざっと数えても14・5人はいるみたいですね」
「14・5人! そりゃ凄いねえ! 大家族じゃないの!」
「ええ。しかも驚くべきことに、お子さんのみんながみんな、身長がゆうに190センチから2メートル、体重も100キロは軽く超えていそうな子供たちばかりで」
「なにそれ?! そいつらが一日中ウチの中で大騒ぎしているわけ? そりゃいくらなんでもあんまりだよ! まぁ~大変だあ、それは!」
「ハイ。…ていうか、あの、すいません。さっきから気になってたんですけど、急にスタジオ中踊りまわられても困るんですけど」
「うん、踊るとね、あの、メタボリックなんとかってあるじゃない? それで踊ると病気の予防になるって、こないだ小柳ルミ子から聞いたもんでね、うん、謝って済むもんならこっちも謝りますよ。気ぃ悪くしたらごめんさいね。で、アナタ、お隣さんちに文句の一つでも言いに行ったの?」
「ハイ。なにしろ子供とはいえ体格的に凄い人間ばかりですし、あんまりギャンギャン言って暴力とか振るわれても困るんで、『あの、すいません。ちょっと静かにしてくれませんか』って柔らかい感じで。でも、そしたら『そんなこと言われても、こっちは生活かかってるんだよ!』って逆に言い返されちゃって……」
「お隣に? そんなこと言われたの? まぁ~! なに言ってんだそいつらは! 図々しいにもほどがあるんじゃないの? よっしゃ、わかった! いいですか? うん、いまスタジオにゲストで来ている方にお話聞いてみますからね。…森末さん、どうですか?」
「あの~、思ったんですけど、ここは思いきってお隣さんと体操一緒にやってみるとかどうです…? いくら暴力的な子供でも体操すれば元気で明るい子に育ちますし、メタボリックなんとかも予防できるから一石二鳥だと思うんだけどなァ~ボカァ~」
「メタボリックが? 体操で? だったら、アタシもやりますよ。そんなこと言われたらやるに決まってるじゃないの。で、なに? お宅はどうなの? やる気あるの? ていうか、そもそも体操なんか一緒にやってくれそうな人なの? お隣さんご家族は」
「それが、ふだん外とかで会うと凄いいいご家族なんですよ。挨拶だってちゃんとしてくれるし、いつも和服を着て身だしなみもキチンとしてますし…。こないだなんて、ボクのクルマが道のドブ川に脱輪しちゃって困ってたんですね。けど、体の大きい坊やたちが、いとも簡単に持ち上げてくれて、親切に助けてもらったくらいですし」
「へぇ~、そんな一面もあるんだねえ。でもだからって、いつまでも悩んでいても解決しないよ、そんなんだったら。もうアレだよ、思いきって番組でその隣家族の名前挙げて文句言っちゃいなよ! いま、ここでさ。全国放送で名前晒されるんだもん、いい加減そんな非常識な家族とはいえ反省しますよ。言っちゃいなさいよ!」
「そうですか。わかりました」
「うん」
「では……毎日毎日うるせえんだよ! 貴乃花部屋! 隣に住んでいる身にもなれ!!」
「ん?」
「いや、だから、『うるせえんだよ貴乃花部屋』って言われたとおり言ってみたんですけど…」
「えっ! ちょっと待って! お宅んちのお隣さんって……相撲部屋…? 『やたら図体のいい子供たち』って、ひょっとして……力士のこと…? って、じゃあなに? 『ご両親』ってもしかして、親方夫婦のこと…?」
「…みたいですね」
「みたいですねってああた、…無理だよそれは」
「無理ですか」
「無理無理。うるさいっつったって、国技だもの。毎日お稽古しているんだもの。我慢しなさい」
「…ですね」
「解決した?」
「ありがとうございました」
「ハイハイ、どうもどうも~失礼しま~す」
「また来週!」