こんばんは、団長です。
って、挨拶もそこそこにとにかく今日は話を聞いていただきたくて仕方がないのです。
合コンに行ってきたのです。
生涯初の、だったのです。
これはもう、テンションが上がらないわけには行かないというものなのです。
思えば初合コンへの道のりは、それは大変長くけわしいものでした。
刑事として西部署に就職しおよそ数十年。
今日こそは同僚の刑事が誘ってくれるのではないかと、毎日ハラハラドキドキしっぱなしの、ある意味ひじょうに幸福な日々を送ってまいりました。が、誰も誘ってくれませんでした。
えっ、なんなの?……もしかしてこいつら(←署の同僚ども)って合コンとかしない人たちなの? つーか、世間に合コンってものがあること自体、全然知らない人たちなの? そこまで馬鹿な人たちなの?
いや、そんなわけがない!
そう。
というのは以前、職場の同僚たちが我が署の捜査課巡査長である鳩村刑事のことを「合コンの鬼」だのと噂しているのを、なんとはなしに耳にした覚えがあったからです。そして、団長である自分はその鳩村刑事の直属の上司なのです。つまり、鳩村が自分を合コンに誘わない理由はないわけで、どう考えてもおかしいに決まっているのです(※↓の一番右っ側でダンディに決めているのが鳩村です)。
えっ?! ってことは……ひょっとして自分、部下から全然慕われてないの?
というか、
「おう、○○(←同僚の刑事)。今度また俺主宰の合コンやるんだけど、お前どう? 来れる?」
「ああ、わりぃなハト。行きたいんだけど、その日どうしても外せない用があるんだわ」
「そっか。仕方ねえな。それじゃ□□(←ほかの刑事)でも誘うか」
「あ、たしかその日は□□も忙しいって言ってたぞ。それよかハト、団長誘ってあげたらいいんじゃないか?」
「いや、団長はいいよ。ウゼーし(笑)」
「だな(笑)」
てなふうに、むしろ煙たがられてる?
……などと考えるたびに疑心暗鬼が増すばかりで、このまま苦しみ続けるくらいならいっそ死んでしまおうかと考えた夜もありました。もう自分は我慢の限界でした。
そして先日。
「おい、ハト。なんで自分を合コンに誘わんのだ」
勇気を出してついに鳩村に問いただしたのです。
で、鳩村から帰ってきた答えが
「いや、団長は合コンとかそういうのはお嫌いだと思ったので……」
お嫌い、って。
お嫌いなわけ、ないじゃないか。
むしろ、お大好きに決まっているのである!
とは、一応、「団長」=「硬派」を売りにしている手前、当然言えるはずもなく、
「いや、うん、ま、たしかに嫌い……だな」
「でしょ? ま、そんなわけで、今後合コンを開催するときがあっても団長は一切誘うつもりはありませんから、ご安心ください」
「いやいやいや! だからそこでなぜ誘わんのだと言ってるのだ」
「えっ? いや、だって団長、お嫌いなんでしょ? 合コン」
「だから嫌いって言ってんじゃねえか! やいテメエ、ハト! 何度同じこと言わせるんだ、この野郎!」
「ですよね? なわけで、ま、じつはまた今度合コンやるんすけど、とりあえず団長は誘わないってことで」
「いやいやいや! だからそこで誘わないのがおかしいんだっつーの!」
「はあ? だって嫌いってことは行く気ないんでしょ?」
「そ、そりゃあ行くわけないじゃないか」
「じゃあそれでいいじゃないすか」
「いやいや! ああ、そうだとも。そうともさ。たしかにお前さんが言ってることは全面的に正しいさハトよ」
「ですよね」
「ああ。ただ、なんというかだな、ま、合コンなんてそんなくだらんもん、全然行くつもりはないけどな。ないけど、ま、やる以上は一応ね、うん、一応だよ? 自分、ハトの直属の上司じゃん? ちょいトシは離れてるけど、なんだったらマブダチみたいな関係じゃん? 合コンやるんだったらさ、とりあえず誘うってのがマブダチに対する礼儀じゃないかと、ま、自分、思うわけ。で、どうだろう、ハトよ?」
「はあ。じゃあ、今度の日曜なんですけど、合コンどうすか? 団長」
「日曜は囲碁の大会に出場しなければならんので忙しいのだ。合コンなんぞ行かん」
「わかりました。じゃあ、そういうことで」
「いやいやいや! ちょ、おま、なーんでそこであっさり引くかなあ」
「はあ……」
みたいなグダグダな展開になりながらも、どうにか粘りに粘って鳩村から生涯初合コンの切符を獲得するに至りました。
これもひとえに立て篭もりを続ける凶悪犯に対して粘り強く交渉を続けてきた日々の修練の賜物でしょう。
まあ、途中、鳩村がなんだかウザがっている態度をしていたのが多少気にはなりましたが、こっちもなりふりなんて構ってはいられません。なにはともあれ、長年の夢だった合コンへの扉が、いま、開かれたのです。
そして、ついに訪れた合コン当日。
やってきたのはなんとこれがまさかまさかの女子大生2人組みでした。
ただ、とんでもないブスでした。
どれくらいとんでもなかったかというと、ブス専の鳩村が一瞬卒倒しかけたほどのとんでもなさでした。
ひとりはスラリとしたモデル体型のブスで、そちらのほうはどうでもよかったのですが、もうひとりのブスがブスながらもかなりの巨乳なのであって、正直言ってこれはかなり気になったのは事実です。
とにかく巨乳であれば、あとはなんでもいい。
それが男という生き物なのです。
とりあえず、鳩村の行きつけであるという飲み屋に怪獣、もといブス2人組みを引き連れ合コンスタート。
なんだかんだで盛り上がる3人をよそに、やはりはじめは緊張のためなかなか会話の輪に入れなかった自分ですが、酒(むろん『松竹梅』)の力を借りつつ徐々に場の空気に慣れてくると本来の実力を発揮。
いかに自分が数多の凶悪犯を捕らえ市民の安全を守ってきたか、そして団長としての生き様、さらには鳩村の捜査時における残念エピソード(凶悪犯にこめかみに銃を突きつけられてうんこを漏らした等)を交えたマシンガントークを炸裂させたのですが、これがまあブス2人に大ウケ。気づけば「合コンの鬼」であるはずの鳩村なんぞ蚊帳の外でした。
そして、やってきました王様ゲーム。
むろんこれも生涯初となったわけですが、やはり神に選ばれし人間は違います。ゲームでは当たりくじゲット連発の自分であって、モデルふうブスには肩揉み、巨乳ブスには膝枕で耳かきをしてもらうという至福の体験を味わいました。ただ途中、巨乳ブスが王様くじを引いて、あろうことか鳩村の馬鹿と自分がディープキスをするハメになったという災難もありましたが。まあ、最終的な結果は五分五分といったところでしょうか。
で、楽しい宴もそろそろお開きとなったところで、合コンの最中こっそり話をつけていた鳩村が打ち合わせどおりにモデルふうブスを連れ出し、ついに巨乳ブスとふたりっきりに。ここぞとばかりに小暮課長に内緒で持ってきていた散弾銃を巨乳ブスに見せつけてやるとこれがまた大喜びで、ついには「団長さんってステキ~」と言わしめるまでに至りました。
これはイケる!
そう踏んだ自分は、
「今夜、ウチで松竹梅片手に、西部署、そしてキミと僕との未来について語り合わないか」
と、こう言いました。
「いやだ」
と、巨乳ブスは言いました。
しつこく、
「えっ!? なんで?」
と問いかけましたところ、返ってきた巨乳ブスの答えが
「顔が怖いから」
ちなみに前述のとおりモデルふうブスを連れ出した鳩村ですが、翌日話を伺ってみたところ、その後、自宅にて「おいしくいただいた」とのことでした。
その日の夜は松竹梅片手にひとり寂しくヤケ酒をかっくらったのは言うまでもありません。
以上、団長でした。ごきげんよう。