しょーもない発明家

いま現在、私たちが住んでいるこの世界は偉大な発明家たちのおかげで成り立っていると言っても過言ではない。

かの有名なライト兄弟は飛行機を発明した。18世紀フランスの軍事技術者だったニコラ=ジョゼフ・キューニョは世界で最初の自動車を開発した人物として知られている。1800年代初頭に世界初の写真画像を作ることに成功したのは、やはりフランス人の発明家ジョセフ・ニセフォール・ニエプスである。

だが、そんなことはどうでもいいんだ。

もちろん、ライト兄弟もキューニョもニエプスも偉大な発明家であることは間違いない。だが、私が興味を惹かれるのは、もっとずっと「スケールの小さい発明家たち」だ。

小学生の高学年に上がったころだったろうか。あるひとりのクラスメイト…仮にI君としよう。ある日、彼に突然こう声をかけられた。

「なあ。『ヤッターマン、コーヒー、ライター』って続けて言ってみ?」

言われたとおり口にしてみた。

わけが分からなかった。

直後、彼から「こういうことだよ」と、謎の羅列言葉の意味を教えてもらった。

私は素直に感心した。

まあ、いま考えたら、なんというか、しょーもないとしか言えない言葉遊びである。しょーもないがすごい。と同時に気になるのが、この一見意味不明でありながらじつにしょーもない意味を持つ羅列言葉を「発明」したのははたして誰なのかということだ。

「発明家」はI君ではなかった。I君も友達のM君から教えてもらったという。では、M君が「発明」したのか。いや、私の記憶がたしかならばM君もまた違う友達に教えてもらったと言ったはずだ。ならば、その友達の彼が「発明」した言葉なのか。残念ながら記憶にない。

だがちょっと待ってほしい。

いくら高学年とはいえ、小学生がこんな卑猥かつ高度な言葉遊びをほんとうに思いつくだろうか。たしかに性に目覚め始める時期なのでその可能性もなくはないが、おそらく歳の離れた兄か、あるいは悪いおとなに吹き込まれたのではないか。

いずれにしても、しょーもない人物だ。阿呆である。阿呆だが立派な「発明家」だ。

「犬のフンに爆竹をセットして発火・爆破すると、とんでもないことになる」

これも小学生のころ、誰かに教わった話だ。

さっそくやってみると、たしかにとんでもないことになった。花火の季節になると私と同類の悪ガキたちがこぞって道端に落ちている犬のフンに爆竹をセットして発火・爆発させた。だが、どこのどいつがこの殺人術を「発明」したのかは誰も知らなかった。

「指で口を横に引っ張った状態で『学級文庫』と言っても絶対『学級うんこ』になる」

「肘を折り畳んだ部分を人差し指と中指で挟むと『ワレメ』に見える」

「小鼻を指でおもいっきり押すと黄色の臭い液体が出てくる」

「犬のフンを土でくるんでボール状にすると『うんこ爆弾』になる」

「♪きんに~くま~ん~、おっぱ~い」

だから誰が「発明」したんだそれは。

ほんとうにしょーもない。

ともあれ、なんともスケールが小さいが、彼らもまた「偉大な発明家たち」である。  

 

ライト兄弟 (小学館版 学習まんが人物館)

ライト兄弟 (小学館版 学習まんが人物館)