私は音楽をこよなく愛している人間である。
音楽を愛しているのでミュージシャンのコンサートをよく観に行く。
コンサートを観に行くと会場によっては入場時に手荷物検査を受けねばならないことがある。
手荷物検査を受けるたびに私は思う。
「……意味ねえだろ!」
カバンを開いて中を見せる。
「はい、どぞー」
この間、約2秒。
果たしてこんな短時間でカバンの中身をちゃんとチェックできる人間などいるのでしょうか。
もちろん、ひとりずつくまなくチェックしていたら入場作業が遅々として進まない、という事情があるのだろう。とはいえ、もう少しなんとかならないものだろうか。
たとえば、コンサート会場にはドリンク缶やペットボトルを持ち込むことは原則的に禁止されている。
では、喉が渇いて死にそうだ、といった場合、どうすればよいのかというと、死ねばよい。死にたくない人は会場内に併設されている売店もしくはバーカウンターでカンパリオレンジなりコーラなりを注文・購入すればよい。注文した飲み物は下のような紙コップとかプラスチックのコップに注がれて手渡される。それを飲めばよい。
なぜ缶やペットボトルはだめなのか。おそらく興奮した客が缶やペットボトルを放り投げたりしたら危険である、ということなのだろう。
じっさい、過去にはこんな忌まわしい事件も起こっている。下の動画をご覧いただきたい。
ミッシェル・ガン・エレファントのコンサートである。
動画を確認していただければわかるとおり、あろうことかコンサートを観覧している客どもがステージ上にペットボトルを放り投げている様子がばっちりとらえられている。ミッシェル・ガン・エレファントのファンなら誰もが知っているだろう、いわゆる「ペットボトル事件」である。
ペットボトルの持ち込みは禁止されているはずなのになぜこんな事件が起こってしまったのか。
もはや説明するまでもないだろう。手荷物検査をしっかりやらなかったからである。
ペットボトルさえ見逃されてしまっているのだから、ほかにも様々な物が持ち込まれてしまっているのではないか。
片栗粉。
米びつ。
ダイソンのハンディクリーナー。
ボンバー森尾のサイン色紙。
西部警察のブルーレイボックス。
仮にこれらを持ち込んでいる客がいたとしたらどうか。万が一、放り投げられでもしたら、それこそペットボトルどころの騒ぎではないだろう。
というか、悪いことを考えている人間からしたら物を持ち込むことさえ必要としていないに違いなく、なんならTシャツやパンツやあるいは靴下だって水に浸しボール状に丸めて放り投げれば立派な凶器になりうるのだ。
そういうわけで、おわかりいただけただろうか。
そう。この話にオチはない。
今週のお題「カバンの中身」