映画『ザ・ハンティング』‐喧嘩を売るならまず相手をよく考えるべきである‐

さて、録画しておいた午後ロー放送の『ザ・ハンティング』なる映画をこないだ観たので感想を書きたいと思うが、まずは例え話をしたい。

仮の話だ。貴方が銀行強盗を企てたとしよう。で、決行日、銀行に入り拳銃を窓口の行員に突きつけ「死にたくなかったらこのバッグに金を詰めろ!」と要求する。

5分後。

無事バッグに詰められた大金を手に外へ出ようとする。ところが、銀行の周りにはすでに大勢の警察官が駆けつけていたわけだ。

犯人に告ぐ! おまえは包囲された! 両手を上げてすみやかに外に出てこい!」

これではせっかくの計画もおじゃんである。

どうする!? そうだ、人質を取ろう!

銀行の中をあらためて見渡してみる。すると、手頃そうなやつが見つかった。

「おい! 近寄るんじゃねえ! ちょっとでも近づいたら客のこのゴリラを撃つぞ! ゴリラを無事に返して欲しかったらすぐに逃走用のヘリを用意するんだな!」

そもそもゴリラが「人質」として通用するのか、という問題にはとりあえず目をつぶっていただきたい。

で、だ。いかがだろうか。

「よりにもよって人質にゴリラはないだろ。逆に殺されるわ」

と誰もが答えるのではないか。

「ありえない」

誰もがそう言うはずだ。私も同意見である。

だがしかし、これとほぼ同等のありえない行動をやらかした馬鹿者らがいる。本作『ザ・ハンティング』に登場する悪者どもである。

 

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ある日、カジノから一千万ドルの無記名債券が強奪された。悪事に手を染めたのは総勢6名のグループ。ところがリーダー格の男が債権を独り占めしようと画策、隙を見て行方をくらましてしまう。

どうやら裏切り者は山を登って国境を越える計画であるらしい。怒り心頭の5人は裏切り者を追跡し債権を奪い取ろうと考える。しかし、あいにく他所からやってきたので土地勘がなく山道の状況に詳しくない。

そこで悪党どもがやってきたのは保安官事務所だ。ド田舎の土地なので警察の体制はゆるい。ところが中にいた保安官に山の案内を要求したものの抵抗されたので射殺。そこに現れたのが本作の主人公を演じるスティーヴ・オースティンである。たまたま事務所を訪れていた一人娘を盾にされたスティーヴ。5人はスティーヴに山のガイド役として道案内することを強制する。

映画がはじまってからここまでおよそ30分。この時点で5人の悪党どもはすでに「詰んだ」ことがわかった。

なぜなら、ガイド役に選んでしまったのがよりにもよってスティーヴ・オースティンだったからである。ありえない。それこそ銀行強盗に入ってゴリラを人質にするようなものだ。

ヒントはいくらでもあった。というか、一目瞭然である。

なにしろものすごい図体をしている。首もものすごく太い。一般的な成人男性の2倍はあろうかと思われるほど太い。おまけにスキンヘッドときた。こんな常人とはとても思えない極太のカリ首を持つ筋肉モリモリのハゲのマッチョマンに道案内をさせるなんてどうかしている。どう考えてもかなうわけないじゃないか。

見所はやはり、川べりにおっこちていた債券を取りに行けば娘を開放するという約束を破られたスティーヴが逆襲に転じるラスト30分強のシークエンスであろう。鬼の形相でもはやクリーチャーと化したスティーヴが悪党どもを次々としばき倒していく様は、さながら新種のホラー映画を観ているようであった。

戦車に乗っているヤクザにわざわざ因縁をつける馬鹿はいない。喧嘩を売るならまず相手をよく考えるべきである。