【読書】直截な批評と珍邦題を一度にたのしめる一冊~『MUSIC MAGAZINE増刊 クロス・レヴュー 1981‐1989』

部屋の片づけをしていたら、CDとDVDと本をあまりにも大量に所持していることにいまさらながら気づいて、いいかげんいやになった。

これは整理をすべきだろう。

というわけで、まずは第一段階である本の選別作業にいま現在取り掛かっている。

「これはいる」

「これはいらない」

なんてな感じでちょくちょくやっているのだが、ほとんどの本が1回ないしは2・3回程度しか読んでおらず内容をよく覚えていない。当然ながらもともと興味がわいて買った本なので、一度手に取るとついつい時間を忘れて読み込んでしまい作業が遅々として進まないでいる。

昨夜も選別作業の続きを行うつもりだったが、本棚から取り出した本をついつい熟読してしまった。下の本である。

 

MUSIC MAGAZINE増刊  クロス・レヴュー 1981-1989

MUSIC MAGAZINE増刊 クロス・レヴュー 1981-1989

 

 

ミュージックマガジン』の名物連載企画「クロス・レヴュー」を一挙にまとめた本だ。

貴誌にてクロス・レヴューが開始されたのは1981年1月号からで、本書ではその記念すべき第一回目から1989年11月号までのクロス・レヴューをまとめて読むことができる。

圧倒されてしまったのは、やはり貴誌の初代編集長である中村とうよう氏のレヴューだ。

ほかのレビュアーの方々もかなり直截な物言いだが、中村氏はちょっとレベルが違うというか頭ひとつ抜けているように思える。

たとえば、ソニック・ユースの『デイドリーム・ネイション』を

「公害工場が汚水をタレ流しているような演奏」

と斬り捨て、パブリック・エナミーの『パブリック・エナミーⅡ』に至っては

「それにしてもこいつらもリズム感が悪いねえ」

と一刀両断したうえ10点満点中最低の0点を付けたりしている。

『デイドリーム・ネイション』も、『パブリック・エナミーⅡ』も、ロックの名盤ガイドを開けば必ずと言っていいほど掲載されている作品だが、氏は周りの評判や時流には流されず、とにかく自分の価値基準において良いと感じた作品ははっきりと褒め、逆に不出来だと感じた音楽は徹底的にこき下ろしている。

評論家としてあたり前のスタンスなのかもしれないが、それにしたってこの舌鋒の鋭さはなかなか真似できる芸当ではないだろう。

「同業者や世間一般のリスナーがいくら評価していようが嫌いなものは嫌いだ!」

という氏のド直球かつブレない姿勢は圧巻の一言に尽きる。

そのクセ、中村氏をはじめほかのレビュアーも流行語にはわりと寛容だったらしく、83年ごろのレヴューでは「ナウい」という記述がしばしば見られたりするのも時代を感じさせておもしろい。

時代を感じさせるといえば本書で取り上げられているアルバムの邦題に関してもそうだ。

たとえば、84年3月号に掲載されているイアン・デューリーのアルバムの邦題がすごい。こうだ。

『4000週間のご無沙汰でした!!』

 

4000週間のご無沙汰でした(紙ジャケット仕様)

4000週間のご無沙汰でした(紙ジャケット仕様)

 

 

原題は『4,000 Weeks' Holiday』とのことだ。

英語が苦手な私でも「大間違い」と言うほどではないってのはわかるが、それにしてもこの邦題はいかがなものか。

私はイアン・デューリーという人は名前しか聞いたことがないが、ウィキペディアにははっきりと「ロック・ミュージシャン」と書かれてある。ジャケも見た感じ、硬派な印象を受ける。で、あるにもかかわらず『4000週間のご無沙汰でした!!』って、そりゃないだろう。

いったいどこのどいつがこんなふざけた邦題を付けたのか。よくわからないが、レコード会社の人間だろうか。いずれにしても、私が仮にイアン・デューリーだとしたら命名した人間には罰として校庭100周ぐらいしてもらわないと気が済まない。

かと思えば、こんな邦題が付けられた作品も見つけた。83年9月号に掲載されている。以下である。

『俺がマルコムだ!』

 

Duck Rock

Duck Rock

 

 

マルコム・マクラーレンのファーストアルバムに付けられた邦題らしい。残念ながら邦題で検索してもアマゾンでは出てこないが、上のアルバムがそれである。

なにしろ『俺がマルコムだ!』だ。『Duck Rock』なんていうわけのわからぬ原題なんぞまるっきり無視、というきっぱりとした態度がいい。気に入った。

82年9月号にはファン・ボーイ・スリーなるグループのアルバムのレビューが掲載されている。

やはり残念ながら邦題で検索してもアマゾンでは出てこないが、下の作品である。邦題がこうだ。

 『ファン・ボーイ・スリーがやって来るファン・ファン・ファン!』

 

ファン・ボーイ・スリー

ファン・ボーイ・スリー

 

 

おそらく、例の有名な『ビートルズがやって来るヤア!ヤア!ヤア!』という邦題を上手くもじったつもりなのだろう。

82年3月号にも載っている。バウ・ワウ・ワウというグループが出したアルバムの邦題である。

 『ジャングルでファン・ファン・ファン』

 

ジャングルでファン・ファン・ファン+10

ジャングルでファン・ファン・ファン+10

 

 

またしても「ファン・ファン・ファン」だ。

ひとつ上のファン・ボーイ・スリーはまだバンド名とかかっているから理解できなくもないが、こっちの「ファン・ファン・ファン」は果たしてどういう意味があるのか。 

まだある。83年1月号だ。ブルー・ロンド・ア・ラ・タークなるグループのアルバムが取り上げられている。邦題が以下である。

 『踊れば天国、アイアイアイ』

 

踊れば天国 アイアイアイ(2SHM-CD/+6)

踊れば天国 アイアイアイ(2SHM-CD/+6)

 

 

もはやセンスがどうのとか考えるのも馬鹿らしくなったのは書くまでもないだろうが、ともあれ、このような『ビートルズがやって来るヤア!ヤア!ヤア!』系の邦題が付けられたアルバムはまだまだあるはずだ。もしかしたらまとめられたものがネットに上がっているかもしれない。 興味がお有りの方は検索してみるのもいいだろう。なんの得にもならないだろうが、ちょっとした暇つぶしにはなるはずだ。