犬の気持ちがわからない

わけあって人様が飼っている犬を散歩する機会に恵まれた。

 

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犬の本名はプライバシーの問題があるのであかせない。便宜上、仮名で「山田」としておこう。

白毛のメスの中型犬。

以上が山田のスペックである。

犬種は知らない。前に飼い主が話していたはずだが忘れてしまった。

さて、肝心の散歩についてだが、これがなかなかの難儀であった。山田にはほとほと手を焼かされた。

まず、外に出たとたん、我が世の春がやってきたとばかりに猛烈な勢いで前へ突き進もうとする山田。そこそこの体格をしているだけあってリードを引っ張る山田の力はかなり強い。

ふだんの私だったら抗議するところだが、人様の犬なので乱暴な対応をするのは気が引けた。

うん。しかたがない。山田のペースに任せよう。

山田の気の向くままに私も歩調を合わせて散歩することにした。というか、歩くというよりは駆け足に近いスピードである。

そのままの状態で5分ほどが経過した。もうすでにかなりの距離を歩いているはずなのに山田のペースは一向に落ちる気配がない。それでも山田の思いどおりにさせてやっていたが次第にムカついてきた。

抗議の意味を込めておもいっきりゆっくり歩いてやることにした。かまわずぐいぐいと前に突き進もうとする山田だったが、しばらくすると私の抗議が伝わったのか、ようやく山田は、ある程度、私の歩調に合わせて歩くようになった。やればできるじゃないか。

山田は電柱や木を見つけると片足を上げて小便をかけた。いわゆるマーキング行為というやつなのだろうが、片足を上げて小便をするメス犬なんて訊いたことがない。わけがわからない。

道中、運が悪いことに他人様と一緒に散歩している犬にでくわした。山田は我を忘れたように「ぐるるるるる…ウォン! ウォン!」と咆哮を上げながら他人様の犬に飛びかかろうとした。あやうく大ピンチというところであったが、とっさに山田を真似て「ぐるるるるる…」と唸り声を上げてみたらすぐに静かになった。聞き分けのいい山田で安心した。

驚いたのは山田は大便をする際も片足上げスタイルを貫いていたことである。片足を上げた状態の尻の穴から糞がポロポロと落っこちてくる。じつに器用である。サーカス犬かおまえは。

さらに用を足し終えると、山田はすかさず自分がひり出した糞をくんくんと嗅ぎだした。「食糞の癖があって困っている」という話を事前に飼い主の人間から訊いていたので、注意深くリードを引っ張りながらビニール袋に糞を詰めた。

「おっ。これ、食えるんじゃね?」

とでも考えていたのだろうか。

阿呆である。

と、一瞬思ったが、自分の糞を食えば腹が膨れる。腹が膨れてしばらくすれば、当然ながら糞をひり出すことになる。その糞をまた食って、そして糞をひり出す。またまたその糞を食って糞をひり出してさらに食って出して食って出して、と、これを繰り返していけば永久に食い物に困ることはない。

利口なのか阿呆なのか。頭が爆発しそうになった。